
「悲しみを得ることでしか生きられない生き物が人のことを好きになった時に、愛を諦めるか、自分の命を諦めるか」──原作・そらるさんが想う『絵物語 空腹の怪物』と制作秘話【インタビュー前編】
歌い手として幅広い活躍を続けるそらるさんが作詞を担当し、話題を呼んだ楽曲「空腹の怪物」が絵物語化! 『絵物語 空腹の怪物』が2026年6月5日に発売となります。
『絵物語 空腹の怪物』のノベライズを手掛けるのは『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』『春夏秋冬代行者』シリーズなどの暁佳奈先生。さらに、楽曲「空腹の怪物」ミュージックビデオよりイラストを担当するハナさんも参加し、豪華コラボでよみがえる優しい世界に注目が集まっています。
アニメイトタイムズでは『絵物語 空腹の怪物』の発売を記念しインタビューを実施。前編となる本稿では、楽曲「空腹の怪物」と『絵物語 空腹の怪物』の制作秘話に迫ります。
悲しみを喰らうことで生き続ける怪物と孤独な少女の物語はどのように生まれたのか。切なくも優しい世界に、今一度足を踏み入れましょう。
「愛を諦めるか、自分の命を諦めるか」
──楽曲『空腹の怪物』が生まれたきっかけや当時の制作の状況、思い出などをお聞かせください。
そらるさん(以下、そらる):アルバム『ユメトキ』の曲が、ゆっけさん(大歳祐介さん)から送られてきて。他の曲と平行しての制作でしたが、色々なテーマの曲が詰まっていました。
曲をお願いする時にある程度の、なんとなくの雰囲気やざっくりとしたテーマを伝えてあったのですが、送られてきた楽曲に合わせてテーマを深めていく中で、ゆっけさんの曲は、物語的な歌詞が合いそうだなと。
──物語調の楽曲を作りたい、という想いがあったのですね。
そらる:ひとつのお話を作りたいという希望がありました。なのでそのプロットを書いてから歌詞を書きたいと思っていて。でも、なかなか思い浮かばず悩んでいたんです。
だけど、友人から「ちょっと悲しいことがあった」という話を聞いて。半分笑い話のような感じではあったのですが、それを物語として昇華することはできないか、というところが最初の着眼点でしたね。
──じっくり制作を進められた、と。
そらる:そうですね。この曲は、人の悲しみからしか生きる糧を得られない生き物が、物語の軸になっています。悲しみを得なければ生きられないからこそ、誰かを好きになってしまった時、生きるためにはその(好きな)人でも悲しませなきゃいけない。でも自分の感情としては“笑っていてほしい”……。そんな生き物がいた時に、どのように物語が進んでいくのか。悲しみと笑顔の両方を成り立たせることはできないので、それがテーマとしては面白いなと思っていました。そこから膨らませていったという感じですね。
──歌詞の制作における、言葉選びや表現のポイントを教えてください。
そらる:言葉選びとしては、少し昔の絵本みたいなものの雰囲気を出したいと思っていました。そのためやや古風な言葉遣いを意識しながら制作しています。
でも曲は結構明るめで、メロディーもキャッチーな楽曲になっています。Aメロと比べるとサビなどは解放感を感じられるような、わかりやすい言葉遣いを意識しています。
──“解放” がひとつのテーマのようにも感じていました。
そらる:そうですね。自分が書く歌詞はほとんどそうなのですが、今回の楽曲も流れ的にハッピーエンドにしたいなという気持ちがありました。
悲しみを得ることでしか生きられない生き物が人のことを好きになった時に、愛を諦めるか、自分の命を諦めるか。どちらかしか無いという状況で物語がどのように動いていくのかが面白いポイントかなと思っています。物語としての前提があると、自然と話が動いてくれる感じがあって。一度テーマが出来てからは、すんなりと制作が進んだ気がします。最初のテーマを決めるところがすごく難しかったですね。
──そらるさんは今回の楽曲・物語に登場する「怪物」という存在を、どのように解釈されていますか?
そらる:元々アルバム『ユメトキ』は「人の見る夢」「主人公の男の子と女の子が、同じ夢を見ることで色々な世界を旅していく」というテーマのアルバムになっています。「空腹の怪物」では、主人公の男の子が夢のなかで「怪物」になっているんです。彼は引っ込み思案というか、明るすぎない性格なのですが、本人は夢を見ているということに気付いていないので、怪物は怪物として生きている。
野生の動物がもし、ちゃんとした意思を持っていて、命を奪いたくないなと思っていても、生きるためには命を奪わざるを得ないと思うんです。それは悲しみを得なければいけない場合も同じだと思っていて。嫌だなと思いながらも、それをしなきゃいけない。なので、怪物は存在としては大きいのですが、怪物自身は少しおどおどしていて、優しいといえば優しい。そんな感じかなと思います。
──自分が生きるために人を悲しませなければいけない、という構図によって、村人からは恐れられてしまう。この展開も摂理ゆえの悲劇なのかなと。
そらる:そうですね……先ほど言ったような感じになってしまいますが、食べることって生きることだから、仕方なかったのかな。




























