寺澤百花が自身の演じる“小鞠”の告白のシーンをじっくり解説――『負けヒロインが多すぎる!』連載 第3回:寺澤百花さん(小鞠知花 役)インタビュー
寺澤さんが考える、温水の魅力とは?
――小鞠のベースとして、人見知りというところがあると思いますが、どんなことを意識して演じていましたか?
寺澤:誰に対してもどもってしまうところがあったので、どもり具合というのを親密度に分けて演じていきたいというのはありました。どもり方も、台本だと「お、おはようございます」になっているので、そのまま読むと伝わらないかなと思って、リアルにどもってしまう感じをたくさん研究しました。
私は、小鞠ちゃんは温水くんに一番心をひらいていると思っていて、だから彼女自身も温水くんと話すときは口数が多くなったり、口が悪くなったりすると思うんです。なので温水くんとは、親密度高めで話しています。
第3話の段階では、八奈見ちゃんと檸檬ちゃんに対して、まだ人見知りしているようだったので、どもってしまう感じを全面的に出そうかなと意識していました。物語が進むにつれて、キャラ同士の親密度も変わっていくと思うので、しゃべり方や声のトーンを微妙に変えてみようかなというのは考えていました。
――文芸部の人には、馴染んでいる感じは出ていましたよね。もちろん玉木慎太郎(CV.小林裕介)に対しては、また別の気持ちがあるわけですが。
寺澤:玉木先輩に対してはやっぱり好きな気持ちがあるので、恋している感じの、ふわふわしたというか、緊張している感じ? 人見知りからくるどもりではなく、かわいい感じのどもり方を意識しています。月之木古都先輩(CV.種﨑敦美)に対しては、部に入ってからお世話になっているから、先輩として親しんでいる感じを意識しながら演じていました。
――第3話は水着回でもありましたが、気になったシーンはありましたか?
寺澤:小鞠ちゃんは上に羽織っちゃってましたけどみんなナイスバディでしたね(笑)。小鞠ちゃんのシーンではないですけど、「ひょっとして、気を遣ってくれてる?」の檸檬ちゃんのシーンはいいなぁって思いました。檸檬ちゃん自身も、温水くんが気にしてくれていることに気づいてて、2人で走って転んで笑う一連のシーンが、すごく青春しているな!って感じでした。あそこで笑う若山(詩音)さんの演技がすごく好きで! 本当に心の底から笑っている感じがしたので、演技も印象的でしたし、友達としていい感じになっているところも好きでした。
――あそこで手を差し出してるのに、「どうしたの?」って言う温水くんは、色々なものを逃している気がします。
寺澤:ホントにホントに! 羨ましいのかそうじゃないのかよくわからないっていう(笑)。檸檬にも、「そういうとこだよ」って言われてしまいましたからね(笑)。
――残念ですね。
寺澤:いい子なんですけどね……。
――寺澤さん自身の、温水くんに対しての印象はどうですか?
寺澤:人に興味がないように見えるけど、ちゃんと人に興味があるキャラクターだなと思っていて。それは小鞠ちゃんに対しても、檸檬ちゃんにも八奈見ちゃんにもそうなんですよね。温水くんが無意識におせっかいをしてしまう。でもそれが優しい、というのが彼の魅力なんだと思います。
温水くん自身が見えない壁を作っているんですけど、ちょっとそこから覗いている感じがあるキャラクターなんですよね。それは第3話以降でも感じられて、気づいたら負けヒロインたちの隣にいるから、3人のことを放っておけないんだろうなって思うし、その無意識の優しさが私は好きです。
――好感度が高いですね。
寺澤:不器用だけどいい奴だと思っているので、私の中では高いです。小鞠役としては、2人ともよくわからない趣味なんですけど、どこの水道水が美味しいかというくだらない論争を繰り広げているんですよ(笑)。でも、そういうところでシンパシーを感じていて、本が好きという共通点もあったりするから、小鞠ちゃんも話しやすいし波長が合っているんだなって思います。だから掛け合いをしていても楽しかったです。
告白のシーンをじっくり解説。第4話の見どころは……?
――では、先程話していただいた、告白のシーンについてですが、小鞠の恋はいかがでした?
寺澤:ひと言でいうと、切ない恋をしているなって思いました。小鞠ちゃんにとって文芸部は唯一の居場所だし、月之木先輩と玉木部長は、小鞠ちゃんにとってすごく大切で、唯一の友人のような人だったから、それを壊すのも覚悟した上で告白しようとしたんですよね。それをずっと天秤にかけていたんだなと思うと、胸が苦しくなりました。
2人も小鞠ちゃんに対して、過保護なお姉ちゃんとお兄ちゃんみたいな、もしくは親のような気持ちでいたと思うんです。小鞠ちゃん自身も、そんな2人がいたからこその学校生活だったと思うので、第3話のラストは、溢れていた思いがこぼれちゃった、はじけちゃったシーンだったと思うんです。それを思うと、見ているこっちも寄り添いたくなるというか。結果はどうでもいいから、この気持ちをどうにかして伝えたいというのが彼女の中からにじみ出ていたので、本当に切ない恋という印象でした。
――先輩2人の関係性も知っているでしょうからね。
寺澤:そうですね。見るからにして、付き合う直前の2人みたいな感じなのは、この時点でわかっていたので。それを複雑な表情で見ている小鞠ちゃんっていうのはちょくちょく出てきていたので、結果はもしかしたらわかっていたのかもしれないですね。小鞠ちゃん自身が勇気を出すことは、きっと人よりも力がいることだから、こちらも感情移入しちゃいました。
――告白シーンは、考えてから臨んだということですが、アフレコではそれを出せたのですか?
寺澤:2回か3回やって、感情を高めていくような感じでした。ただ、言葉はどもりつつもちゃんと伝えようということになったんです。いつもはどもってもごもごしているけど、このシーンは、ちょっとどもりを少なめにして、言葉をわかりやすくしていきましょうと。泣きつつ、どもりつつ、小鞠なりに頑張って想いを伝えているというのを出したかったので、練習したよりも、言葉を全面に出したものがOKになりました。
――それにしても、玉木部長っていい人ですよね。
寺澤:罪な人だとは思うんですけどね(笑)。これは好きになるだろ!って感じでした。身を挺してやけどから守ってくれる感じとか、そりゃ告白しちゃうか!って。ここは掛け合いもさせていただいて、小林裕介さんが本当に素晴らしいお芝居だったので、こんな優しくされたら泣いちゃうよねって思いました。
あの涙も、本音を喋ってるときに涙が溢れちゃう人っているじゃないですか。小鞠ちゃんはそのタイプの子なんだろうなって思いました。感情に任せてじゃないと言えなかった言葉だという解釈でやっていたので、その気持ちも乗せながら演じました。
――恋の行方が、はたしてどうなるんでしょう!というところで、最後に「第三章 戦う前から負けている」というタイトルが出るわけですが……。
寺澤:良いタイトルですねぇ(笑)。
――杏菜と檸檬と違って、告白はしましたし、とても良いラストだったんじゃないでしょうか。
寺澤:しっかり告白の場所を用意してくださって、ありがたいです(笑)。
――では、ここまでで、気になるキャラクターをお聞きしたいと思います。
寺澤:私、志喜屋夢子さんが結構気になるというか、存在自体が謎なんですよね。登場の仕方にインパクトがあって、ロッカーに潜んでいて、そこから出てくるんです。キャラクターのクセが強過ぎて気になるし、今後小鞠ちゃんともちょっとずつ関わってくるキャラクターでもあるので、そういう意味でも気になります。そしてそんな謎なキャラクターの志喜屋さんを演じている安済知佳さんもすごいなぁと思いました。
――ここからはちょっと雑談となりますが、先行上映会で、初めてイベントで地方へ行くと話されていましたが、豊橋はどうでいたか?
寺澤:新幹線の移動だったんですけど、スケジュールをもらったときに、これは何かの間違いなんじゃないの?って思ったんです。着いて、急いでメイクして、気づいたら私、お客さんの前にいたんですよ(笑)。しかも市長さんもいらしていて、私が体調不良で行けなかった「豊橋応援隊」のタスキ(公認セレモニーでいただいたもの)も持ってきてくださって、すごく嬉しかったです。豊橋の皆さんは反応も温かくて、すごく印象的でした。
その後すぐに移動で、気づいたら豊洲のステージに立っていたんですけど、豊洲はすごく広い会場で、たくさんのお客さんが真剣に話を聞いてくださって嬉しかったです。『マケイン』愛が強い方が、放送前にこんなにいるのは幸せだなと思ったし、めちゃめちゃ濃い1日でした。
――では最後に、第4話について、見どころを教えてください。
寺澤:まず小鞠の告白の結果がわかります。私からはそこまでしか言えません(笑)。ただ、そのあとの話も結構重要で、八奈見ちゃんと温水くんの間に何かがあります。八奈見ちゃんと草介の間にも何かがあるので、結構4話も濃いと思います! 八奈見ちゃん好きな人にとって印象的なエピソードだと思うので、楽しみにしていてください。
[文・塚越淳一]
作品概要
あらすじ
キャスト
(C)雨森たきび/小学館/マケイン応援委員会