アニメ
『真夜中ぱんチ』 シリーズ構成・白坂英晃インタビュー【連載第7回】

『真夜中ぱんチ』シリーズ構成・白坂英晃さんインタビュー|キャラクターに振り幅を持たせられるのも、オリジナル作品だからこそ【スタッフ・声優インタビュー連載第7回】

キャラクターの声を聞いて「この状態で更にもうひとつ、エピソードを用意したい」と思った

ーー楽しいと同時に「苦しかった」とお話いただきましたが、具体的なエピソードなどはありますか?

白坂:真咲のキャラクター性が確立されるまでが苦しかったですね。“ヴァンパイア×動画”のコンセプトからスタートして、途中から本間監督にも入っていただいて本格化していったのですが、それまでは「ヴァンパイアが主人公のお話」なのかなと思っていました。当初、真咲は、ヴァンパイアに配信のやり方をレクチャーしてアシストする存在だったのですが、制作途中で人間の真咲こそが物語の根幹を担うんじゃないかと方向転換して。

そうして真咲というキャラクターが生まれたのですが、次にどのような経緯や葛藤を持っていれば、アニメの主人公として突っ走れるのかを考えました。様々な案を出して悩んでいたこの時間が、苦しかったかもしれないですね。

ーー白坂さんは普段からアニメ脚本の他に、舞台などの脚本も担当されていますが、産みの苦しみや楽しさに関して、アニメと他の媒体(舞台など)で違いはありますか?

白坂:僕が舞台脚本を書く場合は演出も同時に担うことが多いので、僕の頭にあるものをある程度優先できるんです。あとは、基本的に俳優さんたちと一緒に作っていくので、相談や打ち合わせをするのは、脚本に起こしてから、ということも多かったりします。

眼の前で動いていないものをチームで相談しながら作っていく作業量は舞台より多く感じていて、そこは難しいところだと思いますね。少なくとも、脚本会議に参加しているみなさんのイメージが一致していなければ次には進めないので。

ーー先ほど、制作陣の中でもキャラクターのイメージが少しずつ違うというお話がありました。これはキャラクターの声でも同じかと思いますが、実際に彼女たちが喋っているところを見聞きして、どのような印象がありましたか?

白坂:ありがたいことに、最初のテープ審査から聞かせていただきましたし、オーディションにも立ち会いました。最終的に決まったキャストさんの声はイメージ通りでしたね。実際にアフレコを見学した時には「やっぱり、この子はそういう声だよね!」と感じて、誕生の瞬間を見られたことが嬉しかったです。

ーー特に第1話は感慨深いものがありそうです。

白坂:本当に感慨深いですね。今回は僕に加えて、2人の脚本家が弊社(株式会社ピタ)から参加していて、3人で書いているのですが、第1話は3人でアフレコを見学したんです。みんな、頷きながら見ていました。感動しましたね。

ーー第1話のアフレコが始まった段階では、最終話まで脚本の執筆を終えられていたのですか?

白坂:全部完成していました。

ーー声のイメージがついたことによって、脚本も変わったこともありましたか?

白坂:声を聞いたことによって、キャラクターがよりクリアに見えてきたので、「また新しいシーンを書きたい」「この状態で更にもうひとつ、エピソードを用意したい」と、監督と話していました(笑)。

それこそ第2期があったら良いなぁと思います。オリジナル作品のキャラクターには行動制限がないので、なおのこと書きたくなるのかもしれません。特に『真夜中ぱんチ』では、キャラクターの行動を制限しないという個人的なルールがあったので。

ーーそんなルールがあったのですね。他にも、制作上のルールがあったのですか?

白坂:僕なりのヴァンパイア像があって「個体数が少ないマイノリティな存在で、生きるのも窮屈なのでは?」と思っていたのですが、監督はヴァンパイアは長い時間を生きているが故に、今を楽しんでいる生き物だと考えていました。だからキャラクターを作る上で、自由に生きるキャラクターにする、と心がけていましたね。

あと、キャラクターの基本的な人格とは別に、様々な一面があっても良いと思っていました。人間も20年生きれば成長して、違った性格になると思いますし、ましてやヴァンパイアは更に長い時間を生きているわけですから。なので、毎話、それぞれのキャラクターの意外な一面が見えてきても良いというか。ここは面白いところですね。

ーー絶対的な統一性を求められないところもオリジナル作品の面白いところですね。

白坂:あまりにぶっ飛んでいる設定が増えるのはダメですけどね(笑)。でも、キャラクターの様々な一面を見せられるのは『真夜中ぱんチ』のセールスポイントでもあるし、監督がおっしゃっている「キャラクターが生き生きとしてる」ということだと思います。

ーー本間監督や白坂さんをはじめとした制作陣のみなさんが、キャラクターを大切にされていることがひしひしと伝わってきます。

白坂:愛おしいですからね。

ーーちなみに、白坂さんが一番愛おしさを感じているキャラクターは誰ですか?

白坂:うーん……一番って難しい!(笑) 真咲は共感できる部分が多いですし、種族も人間なので持っている悩みが理解しやすいですね。それに、制作時に最も頭を使って悩んだのが、彼女の感情やキャラクター性を作る時だったので、真咲に思い入れはあります。

……でも、譜風ちゃんのセリフを書いている時は楽しかったですね。第4話の時点だと、みなさん「頑張っている譜風」を見ていると思いますが、これから色々と様子がおかしくなっていくので(笑)、ご期待いただきたいです。こうやって、キャラクターに振れ幅を持たせられるのも、オリジナルだからこそだと思います。

ーー真咲のセリフは、“クズ”というキャラクターが気持ち良いなと感じます。昨今では、珍しいですよね。

白坂:ヒロインっぽくなくて、痛快ですよね。修正する前の脚本での真咲は、もう少し弱かったかもしれません。でも、真咲の全体像を見た時に「もっと“クズ”でしょ」ってなったんですよね(笑)。

ーー確かに、ことぶきさんの初稿では、少しナヨっとしている印象があったかもしれません。

白坂:真咲は主人公ということもあって、「感情を見せなければいけないし、物語の流れを見せなければいけない」と思って作っていたので、初期段階では今よりも湿っぽさがあったかなと思います。その中で、本間監督は真咲像が早い段階で見えていたようで、真咲のクズさに関しては前半から意見をいただいていました。

ーー本間監督の中では、真咲のイメージが固まっていたのですね。

白坂:とはいえ、監督は色々な意見を取り入れてくださる方なので、監督の真咲像も変化はしていると思います。僕も回を追うごとに真咲を理解しながら、セリフを書いていました。

ーー真咲のクズさが段々と人間味に変化して、良いなと思っていました。

白坂:そうですね。先ほどお話をした「最終話が固まっていない状態で制作がスタートした」という作り方も、キャラクターが走ってくれたのでハマったと思っています。気持ちの良い瞬間でした。

第2話の真咲が放つ「またここから始めるんだ」は、彼女にとっての本当のスタート

ーー現在放送されている第4話までのエピソードで、白坂さんが印象に残っているセリフはありますか?

白坂:第2話で真咲が「またここから始めるんだ」と言うのですが、あのセリフに辿り着くまでに時間がかかったんです。個人的な思い入れもあるので、これは好きですね。

『真夜中ぱんチ』は、ヴァンパイアの力を多用しつつ登録者を伸ばしていくお話になるのではないかと思っていたのですが、監督は「ヴァンパイアの力を使ったら、すぐバズっちゃうでしょ」とおっしゃって。なので、第2話の急展開が作られましたし、「真咲が0から始めていく」という本当のスタートが描かれているんです。このセリフは、前半の中でお気に入りですね。

あと、真面目じゃないシーンだと、第3話のみんなでにんにくを食べた後の狂っていくセリフですね。あそこは作家陣が頭を悩ませながら作っていました。楽しかったのですが、正解がわからず……(苦笑)。このシーンこそ、声優さんに声を当てていただいて、正解がわかりましたね。

ーー意外なシーンに悩みがあったのですね。

白坂:そうなんです(笑)。ヴァンパイアの弱点であるにんにくを、当人たちが食べたらどうなるんだろう?というのは妄想で補填していたので……。おかしくなるのはわかるけど、どのようにおかしくなるのかは誰もわからなかったんです(笑)。

ーー確かに……! そして、第5話以降も激動の展開が続いていきます。

白坂:最初期の打ち合わせで本間監督と、「動画というテーマを扱う作品だから、各話の印象に違いがあっても良いのではないか」と話していました。真咲たちが扱う動画も、企画によってテイストが違くなるものだから、アニメ全体としても様々な色を持つ全12話にしたいと、おっしゃっていて。

第3話と第4話のギャップもかなり大きいと思いますが、第5話ではまたスゴいことが起きますよ!

ーーこれからますます、それぞれのキャラクターが濃くなっていきますし、新キャラクターも登場します。

白坂:クセが強い子たちが出てきます。『真夜中ぱんチ』には普通の子がいないんですよね(笑)。りぶが一番マトモか……?

ーーなんだかんだ、りぶが一番マトモかもしれません(笑)。

白坂:冷静に見ると、りぶもめちゃくちゃなことをやっているのですが(笑)。

ーー本間監督もおっしゃっていましたが、ファイルーズあいさんの声が付いたことで、嫌味のない、真っ直ぐなキャラクターになりましたよね。

白坂:一家に一人欲しいですね(笑)。

(C)2024 KADOKAWA/P.A.WORKS/MAYOPAN PROJECT
おすすめタグ
あわせて読みたい

おすすめ特集

今期アニメ曜日別一覧
2024年秋アニメ一覧 10月放送開始
2025年冬アニメ一覧 1月放送開始
2024年春アニメ一覧 4月放送開始
2024年夏アニメ一覧 7月放送開始
2024秋アニメ何観る
2024秋アニメ最速放送日
2024夏アニメも声優で観る!
アニメ化決定一覧
声優さんお誕生日記念みんなの考える代表作を紹介!
平成アニメランキング