音楽
楠木ともり『SUMMER LIVE 2024 -ツキノミチカケ-』東京公演レポート

ライブ楠木ともり『TOMORI KUSUNOKI SUMMER LIVE 2024 -ツキノミチカケ-』東京公演ライブレポート|自然の中で音楽に酔いしれること、そして音楽を楽しむことを、最高の環境で味わえた素晴らしいライブ

 

みんなで共有できるエンタメに昇華するまで曲が成長していることにも感動

“ハー・アー”のコーラスが入ったライブオリジナルのイントロに、次の曲が何なのか戸惑う観客。そこから「Forced Shutdown」の聴き覚えのあるフレーズが流れ、少しざわめく。こういうサプライズ感もライブの良さだろう。この曲は楽器それぞれが立っている曲で、それぞれがバラバラに主張していたものがサビでまとまっていくカタルシスが気持ちいい。楠木も、座り込んだりしながら緩急を付けたボーカルで、どうにもならない感情をぶつけ続け、最後に少し浄化されて終わる。それにしても、変拍子の曲にノるのは異様に難しい……。

 

 
そこから、ノる難しさなら負けていないCö shu Nieの提供楽曲「BONE ASH」を続け、さらにカオティックな世界を描いていく。あっという間に終わる短い曲だが、この曲に詰め込まれた強い想いを、すべてさらけ出して歌に乗せる。それが爆発力あるバンドの演奏と合わさって、とてつもなくエモーショナルになっていた。

ピアノを主体とした幻想的なイントロが会場に響き渡る。それが虫の音と重なり、この会場だからこそ実現した特殊な世界観を生み出していく……。その静寂に近い空気を「雨が…」というひと言がぶち破り、「遣らずの雨」へ。間奏での観客からの大きなコール、雨を意識した照明演出、爆発力のある歌声による圧巻のパフォーマンス。天気が雨であることも想定していたと思うのだが、実際に雨だったらどんなふうに聴こえただろう、という想像を思わずしてしまった。

大切な人との別れを歌った「absence」は、ピアノと歌声だけで披露していく。〈心地よい風といい馨り〉というフレーズが、風が吹き抜ける会場にマッチしていた。とても寂しい曲調だが、感情をコントロールしながら歌い、歌詞にある想いを、みんなで共有できるエンタメに昇華するまで曲が成長していることにも感動した。

 

 
休むことなく駆け抜けての5曲目は最新作「シンゲツ」。少しだけうす暗くなった世界で、シンプルにロックを届けていく。月こそ見える天気ではなかったが、それでもこの壮大な曲を、会場を飛び越えて、空にまで届くほど力強い歌声で歌い切る。

「シンゲツ」でテーマにしていた月の満ち欠け。移り変わりを描いたこの曲から、セットリストも、過去を振り返って自分を見つめ返すものにしたいと考えていたそうで、彼女が最初に作詞・作曲をした「眺めの空」から始まり、そこから出会いを繰り返し、積み重ねてきたこれまでを辿るような流れにしたのだという。

リハを積み重ねる中で自分のことを自分が一番わからなくなるときがあったと話していく中で、「月っていろんな形があるけど、月自体は変わってない。見えてないところはボコボコで傷だらけだけど、それを見せないように輝いて見せている。しかも自分では輝けず周りに支えられて、きれいなところを見せているのが月」であるのだと思いを馳せる。そこから、何かに刺激を受けて、自分変わったかもと思っても、実際は変わっていなかったりする。それでもいいのではないかと話していく。「変わることは美しいと言うけど、それに囚われなくてもいい。でも周りにいる人や出来事によって、いろんな見え方をしている。周りから見たらきっと変わって見えていると思う」と、メッセージを贈る。

 

 
考え方によるかもしれないが、すーーっと肩の力が抜けるようなメッセージ。確かに人間の根本は、そんなに変わらない(※筆者の経験談)。でも周りによって変化はあるし、周りから見えてる自分は、自分が思っているものと違う魅力があるのかもしれない。誰もがいつも見上げる月に例えて、そのままでもいいんだよ。そしてそのボコボコの傷こそ美しいんだよと贈ったメッセージは、とても共感できるものだった。「今日は(私を)輝かせてくれてありがとう。私が輝くためにはみんなが必要! みんなのことを照らすから、あなたは私を照らしてくれる?」と伝えて、お互い背中を支え合って一緒に歌う「back to back」を、みんなで歌う。〈(大丈夫)〉と声を合わせ、拳を突き上げ、WOW WOWと叫ぶ。途中でバンドメンバー紹介も織り交ぜ、最後にみんなで大きくジャンプしたこの曲で、最高の夏をみんなで作り上げたライブ本編を締めくくった。

 

最高の環境で味わえた素晴らしいライブ

大きな拍手に応えてのアンコールでは、この日、最高のライブを作り上げてくれたファンへ、心を込めた「バニラ」を贈る。そして暗くなっても虫の音が止まない野外の雰囲気に、アンビエントな伴奏が絶妙に合っていた「alive」を歌っていく。メジャーデビュー後、初めてファンを目の前にしたライブの景色をイメージしながら作ったこの曲。野音を埋め尽くした観客を見ながら、どんな想いで歌っていたのだろうか。聴いていて、とても温かな気持ちになった。

 

 
そしてもはや恒例になったグッズ紹介コーナー。「そんなに長くやらないけどね!」という振りを入れて、テンション高く、通販番組さながらの話術で次々とグッズを紹介していく。しっかり20分くらい、観客とのコミュニケーションを楽しむと、最後に、バースデーライブ『TOMORI KUSUNOKI BIRTHDAY LIVE 2024』を12月22日(日)に開催することを発表する。

次に会える約束をしっかり交わしたあと、最後にみんなでガッツリ盛り上がれるピアノロック「熾火」で、大きな声を出し合って、笑顔でライブを終えた。自然の中で音楽に酔いしれること、そして音楽を楽しむことを、最高の環境で味わえた素晴らしいライブだった。

 
[文・塚越淳一]
[写真・Kosuke Ito]

 
<セットリスト>
M1. 眺めの空
M2. 僕の見る世界、君の見る世界
M3. 青天の霹靂
M4. MAYBLUES
M5. もうひとくち
M6. タルヒ
M7. Forced Shutdown
M8. BONE ASH
M9. 遣らずの雨
M10. absence
M11. シンゲツ
M12. back to back
EN1. バニラ
EN2. alive
EN3. 熾火

<ライブ情報>
TOMORI KUSUNOKI BIRTHDAY LIVE 2024
【日 程】2024年12月22日(日)
【時 間】open 17:00 / start 18:00
【会 場】横浜BUNTAI
【詳 細】https://www.kusunokitomori.com/live/archive/?id=52568

<今後の最新リリース情報>
5th EP『吐露』
新曲4曲収録
2024年11月発売決定

<楠木ともり×monogatary.comコラボコンテスト第二弾>
大賞選出作品「校舎の月」著:ズボンは四角(現在は「角原 四温」に改名)
楠木ともり Official YouTube Channelにて朗読動画公開中
https://youtu.be/q7CWRDPeodY

<楠木ともり info>
公式HP:https://www.kusunokitomori.com/
公式X:https://x.com/tomori_kusunoki
公式TikTok:https://www.tiktok.com/@tomori.kusunoki_official
公式YouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/@tomorikusunoki

 

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