アニメ『デリコズ・ナーサリー』インタビュー第1弾:アニメ×舞台 Wダリ対談 森田成一さん×染谷俊之さん|二人が語る『TRUMPシリーズ』の魅力
対談後の森田さんへインタビュー
――染谷さんとの対談を終えた感想をお聞かせください。
森田:とても楽しい対談でした。短い時間だったので、語り尽くすことはできなかったんですけど。今日、初めてお会いしましたが、話も弾んで、僕が尋ねたことに対しても染谷さんからも明解な答えを得られたので良かったです。
染谷さんの人となりもすごく穏やかで、かわいらしい方だなと思いました。そんな方が舞台上ではダリ・デリコとして、毅然と演じているということに、素の染谷さんとのギャップを感じると共に大きな魅力も感じました。
――染谷さんからは、森田さんに憧れていたという発言もありました。
森田:そうですね。年齢を重ねてくると、僕が演じていた作品やキャラを見ていた方が、役者さんになるということも増えてきたので、そういう方々とアニメや舞台で一緒にお芝居をやることも今までありました。
でも今回のように同じ役を演じることになり、更にはアニメから舞台になって同じ役をやる機会は過去にもありましたが、今回は舞台が先で、その後にアニメという形も初めてで。しかも染谷さんは僕の作品を見てくれていて、大好きだと言ってくれた方なので、僕がアニメでダリ・デリコを演じることになって、嬉しいですし、ワクワクしています。
――先ほど、すぐに連絡先を交換したり、一緒にお食事する約束をしたりと、森田さんもだいぶお気に入りになられたようですね。
森田:見ていましたか。僕はイケメンが好きなので(笑)。イケメンとお酒を飲むなんて楽しいじゃないですか。
収録では、ダリのアプローチについて何度もやり取り。いろいろな種族が横軸でも縦軸でも重なり合うのが『デリコズ・ナーサリー』の見どころ
――今回はオーディションだったとお聞きしましたが、オーディションの時や収録の時に監督や音響監督からのディレクションはあったのでしょうか?
森田:いっぱいありましたね。最初にダリという役にアプローチする際、貴族ということを第一にアタックしていましたが、それよりも重要なことは子育ての中でのお父さんとしての立ち位置で。貴族であり、父であり、吸血鬼であり、という立ち位置がすごく難しかったです。そこに対しての指摘はたくさんありました。僕のほうからもいろいろなアプローチでプレゼンして、かなりの回数でやり取りがあり、キャラを作っていく上でかなりの時間を要しました。
例えば、1つのセリフがあって、僕が思ったアプローチで言ってみたら、「そういうのではなくて、こういう感じを出してください」と言われて。「なるほど」と思いながらも言葉的に難しいものもあるわけです。そこで「このセリフではなくて、この前のセリフをちょっと変えるからそこから聞いてください」と。「一つのセリフがダメというのではなく、ここを変えるならば、その前から変えないといけないので、こちらから再度アプローチさせてください」とお願いしたり。結構、細かく、何度もやり取りを重ねて作っていった記憶があります。
――任務の時は冷静で厳しいダリですが、子育ての時は必死でかわいい姿を見せてくれて。でもシリアスからギャグに急に変わるのではなく、あくまで彼の持つ感情が自然と流れていくので、演じるのは難しそうですね。
森田:どうしても子育てに関しては、ダリだけではなく、ゲルハルトやディーノ、エンリケもお父さんキャラは苦手としていますが、そこだけを突出させてしまうと、単に子育てに振り回されているお父さんになってしまうので、任務を遂行する姿と子育てをうまくつなぎ合わせないといけません。
そこで活きてくるのが貴族という立場で、それを根っこに据えた状態で、任務にあたるし、子育てにもあたっているという捉え方をしました。うまくつないでいかないと、任務の話をしていたら、子供が泣いた瞬間に「あ~、よちよち」となるのは気持ち悪くなってしまうし、人間のパパになってしまいますから。あくまで吸血種の貴族を演じるように心掛けました。だから子供と相対する子育てが一番難しかったです。
――『デリコズ・ナーサリー』というタイトルはカッコいいなと思いましたが、「ナーサリー」の意味を調べてみたら、先ほども森田さんがおっしゃられていたように「保育所」という意味で。
森田:そうなんです。直訳すると「デリコの保育所」という(笑)。そこもおもしろいですよね。『TRUMPシリーズ』の中でも「ナーサリー」として描かれているのは、舞台から通しても今回が初めてで。
人間種、吸血種、その二つの種の間に生まれたダンピール、そしてヴァンパイアハンターがいたりと、いろいろな種族が絡み合っていくわけですが、各種族には大人もいれば、子供もいて、それも種と考えれば大人の種と子供の種のやり取りもあるわけです。横並びの種が並んでいるだけではなく、その中にも縦軸でも種が並んでいるところもおもしろさの一つかなと思います。
アニメと舞台を見て、『TRUMPシリーズ』をたっぷり味わい尽くしましょう!
――アニメでは意図的に緩急をつけることがよくありますが、この作品の場合は設定自体に既に緩急があるんですよね。
森田:そうですね。更に『TRUMPシリーズ』には、吸血種たちの長い歴史が記されている年表がある世界で、舞台の原作や脚本、演出だけではなく、このアニメでも原作、シリーズ構成、脚本を手掛けられている末満健一さんが完全に構築されています。
既に舞台があるわけですが、アニメは舞台をただトレースするのではなく、舞台もアニメも『TRUMPシリーズ』で構築されている歴史の中の1つであって、それぞれが単独で成り立っています。だからアニメを見た後に、舞台や舞台の映像を見てみると、世界観がつながって、「あのシーンはここの伏線だったんだ」とわかることもあります。僕も『デリコズ・ナーサリー』を演じた後で、『グランギニョル』を見てみたら、「ああっ!? そういうことだったんだ!」という発見がいくつもありました。
これからアニメをご覧になっていただく皆さんにお伝えしたいことは、『デリコズ・ナーサリー』を見ただけではすべてを味わい尽くせるわけではなく、舞台も見ることで、『TRUMPシリーズ』の奥深い世界を更に楽しむことができて、僕と同じようにいろいろな気付きや謎が紐解かれていきます。
ここまでの情報だと吸血種の貴族たちのどたばた奮闘記みたいに思われるかもしれませんが、壮大な吸血種のクロニクルの1つなんだと理解した上で、見ていただけるとより楽しんでいただけるかもしれません。
あと子育ての大変さを知ってもらえるかもしれません(笑)。
ついに放送がスタートした『デリコズ・ナーサリー』と、9月から公演が始まる染谷さんが演じるダリが見られる『マリオネットホテル』、両方共よろしくお願いします。
作品概要
あらすじ
吸血種たちの最高統治機関である《血盟議会》からある任務を命じられるものの、ダリはにべもなく断ってしまう。
業を煮やした同期議員であるゲルハルト、ディーノ、エンリケが説得に向かうと、そこには自ら幼子をあやすダリの姿が。
一方巷では、吸血種を狙った謎の連続殺人事件が発生。その黒幕と思われる反社会組織《ペンデュラム》と、ダリの間には、なにやら過去の因縁があるようで……。
『血と誇りにかけて、任務と育児の両立──成し遂げてみせようではないか!』
吸血種の貴族たちによるノブレス・オブリージュ育児奮闘記。
壮麗なゴシックワールド×誇りにかけたドタバタ育児は、果たして両立することができるのか!?
キャスト
(C)末満健一/デリコズ・ナーサリー製作委員会