アニメ『デリコズ・ナーサリー』インタビュー第3弾:下野 紘さん(エンリケ役)×佐藤拓也さん(ディーノ役)|ディーノとエンリケが大人として父親として成長していく過程を見守ってください
吸血種の壮大なる歴史を綴っている人気舞台『TRUMPシリーズ』が遂にアニメに! アニメ『デリコズ・ナーサリー』が現在、好評放送中!
放送開始記念のキャストインタビュー企画第三弾は、エンリケ役を演じる下野 紘さんとディーノ役の佐藤拓也さんによる対談をお届けします。2話ではエンリケとディ―ノのキャラや家庭の事情が少し見えてきましたが、お二人からそれぞれご紹介いただいたほか、収録時のエピソードや今後の見どころなど楽しく話していただきました。
第2弾はこちら
この作品について知った時は「戸惑い」と「おもしろそう」という気持ちが交じり合う!?
――この作品の台本を読まれたり、演じられた印象や魅力を感じた点をお聞かせください。
佐藤拓也さん(以下、佐藤):吸血種、事件、子育て。一見共通点が見出せない不思議なお話。そんな各キャラクターの設定と演者さんのお名前を見て「これはとても楽しそうだぞ」という気持ちが大きくなりました。
下野 紘さん(以下、下野):最初に絵柄を見させていただいた時には、「ゴシックでスタイリッシュな作品なのかな」と思いましたが、台本を見て「ちょっと僕が思ったのと違いますね」という感じで。そして収録をしてみて、より思いました。「どうしようか」と。佐藤くんと同じように戸惑いはありました。今まででこういう形の作品はないし、いろいろ事件が起きて捜査していく中で、少しだけ子育てや子供とのふれ合いが入っていることはありましたが、まさか一緒くたにするなんて。アニメの第1話の終盤も結構衝撃的でしたね。もちろんおもしろいなと思いながら見させていただきました。
――舞台の『TRUMPシリーズ』の原作と脚本、そしてアニメでも脚本とシリーズ構成を手掛けられている末満健一さんとはお会いになられましたか?
下野:現場ではお会いしていませんが、以前、末満さんの脚本で朗読劇(『下野 紘 リーディング&ミニライブ2019”sympathy"』)をやらせていただく機会があって。その時、「シリアスな部分もコミカルな部分もある作品で、この話とこの話が実は繋がっている、そんな作品を作ってほしいんです」とお願いしました。
最初に読んでみたら「何のこっちゃ!?」と思ったけど、読み進めていくとちゃんとすべて伏線が回収されていて。末満さんのことをよく知っているわけではないですけど、いろいろなことを考えてらっしゃるし、素晴らしい発想力とお話の作り方ができる方だなという印象があったので、「今回もおもしろい作品になるんだろうな」と思っていました。
佐藤:初回の収録を見守っていただきました。資料として『TRUMPシリーズ』の様々な用語や年表みたいなものをいただきましたが、あまりにも長く壮大で。かつ初めましての出来事や人物が膨大にあって、これを補完して臨むのは現実的ではないなと。
ディーノとエンリケは長い『TRUMPシリーズ』の中で初出のキャラクターとうかがったので、これまでの『TRUMPシリーズ』の歴史をすべて吸収して臨むというよりは、舞台をご覧になっている方々に、長い歴史の中にこういう人たちが生きていたのだと初めて認識してもらう、ある意味での新しい風を感じてもらえらたら良いなと思って演じました。
下野:現在位置から何千年前の話とか、無理だよね(笑)。
佐藤:でも収録が終わって、共演者のみんなとしゃべって、年表を見直した時に「うちの子はどこだ?」とか「どこに現れるのか?」みたいに探してしまったのはきっと親心のような感情なんだろうなと。
下野:遠足の時の写真で自分の子供を探したり、自分が映っている写真を探してしまうような(笑)。
いいパパを演じるエンリケと空気を読まないディーノ!?
――ご自身が演じられている役柄の印象や魅力を感じる点をお聞かせください。
下野:エンリケは、4人の中で一番貴族っぽくなく、かなりフランクで、ディーノにもよく怒られたりして。娘2人に対しても、積極的に子育てに加わっているわけではないけど、関係性は特に悪いわけでもなく。ただ彼なりに悩んだり、考えたりしていることもあるし、単純にいいパパという感じだけではなさそうだなと2話を見て思いました。他の子たちと遊んだりすることもありますが、違った一面も持っているのかなと。
――2話で奥さんが登場しますが、通常の夫婦関係とは違うような気がしますね。
下野:子供に「今日はお父さんが本を読んであげよう」と言っている割には、その前段階では奥さんから小言を言われていて。「仮面夫婦」とまでは言わないけど、近しい何かがきっとあるんだろうなと思います。
佐藤:ディーノは、スタッフサイドから言われたキャラクターメイクは「空気を読まないでください」と。人の話を聞いているようで聞いていないけど、自分が思ったことは言う、ずうずうしさみたいなものは持っていてほしいと。
ゲルハルトがダリに対して「貴族としてこうあれ」と声高に言いますが、それとは別のベクトルで、ディーノは融通が効かずにカタブツで保守的な人で、貴族である自分のプライドがあるけど、人としての温かさや他人の感情みたいなものには無頓着で。ゆえに今までいろいろな奥さんに逃げられ続けてきたので、「誰も自分についてこられないのだから」という達観の仕方は頑固もそこまでいけば大したものだなと第三者的には思いました。
ただ自分の仕事をちゃんとやらなくていけないと思うあまり、息子と向き合えていないし、愛情も足りていない。でも自分では向き合えているつもりといういびつな感じがディーノたらしめているのかなと感じています。そのスキみたいなものにも愛おしさを感じるし、「しょうがないな」と愛でながら演じています。
下野:エンリケとディーノが『家政婦は見た』みたいに部屋の様子をのぞきながら「無理! 無理!」とシンクロしたシーンはおもしろかったよね。二人共、性格はまったく違うのに。ただ父親という立ち位置だとたぶん同じなんじゃないかなという気はします。
佐藤:でも「起きている時もかわいいと思いたまえ」とは、よくその口で言えたなと(笑)。彼なりにはきっと思っているんですよ、事実として。でもその想いが子供に届いていないのが難しいところですよね
――ディーノの子供のテオドールはすごく我慢しているのが明らかで、もうグレてしまう寸前みたいな。
下野:グレてますよ、完全に。アレはよくないですよね。
佐藤:アレはよくない。かわいそうですよね(笑)。
下野:このナーサリーの中で一番よくないケースですね。このまま成長していって父親との関係値が変わらなければ、もうダメですよ。人格崩壊するでしょう。
佐藤:うちの子は静かで手がかからないと思っているんですよね。
下野:ラファエロもかわいそうだった。「あんなこと、言うなよ」って。
佐藤:もはや八つ当たりですからね。
下野:お父さん、わかってよ。そこは。
佐藤:本人はわかっているつもりなんですよね。