「東谷くんも高人さんと恋仲になっていく過程で覚えていった感情がたくさんあるので、人間味に変化があったと思います」――『抱かれたい男1位に脅されています。』シリーズ累計500万部突破記念：桜日梯子先生インタビュー

創作におけるインスピレーションについて

――先ほど取材のお話もありましたが、創作をする上でのインスピレーションは色々な場所に行って受けているのでしょうか？

桜日：私は相当な引きこもりで、1ヶ月間ぐらい家にいても大丈夫なんです（笑）。ですが、このお仕事をする前は舞台をたくさん観ていて、月に6～8作ぐらい観に行っていました。
　
このお仕事を始めてからスケジュールを自己管理できなくて、チケットを買っても席を空かせてしまった経験が何回かあるので、今はチケット取るのがちょっと怖いなと思い、舞台は観れていませんが、エンタメとして舞台の気持ち良さを知っているという部分が私の根底にあります。
　
だから、舞台のような直で体感できる感動を自分の漫画でも表現できたらいいなと思っています。例えば、歌舞伎でいうと「カンカン！」と拍子木の音が鳴って「今、彼のターンですよ」とちゃんと知らせる、みたいな。そういう気持ち良さのある漫画でありたいですね。
　
舞台で培ったものが根底にありつつ、あとは漫画や小説、ドラマや映画、写真集や画集もたくさん見ます。それぞれを楽しんでいる中で、「この表現方法、自分でもやってみたいな」と思ったり、漫画だと「このベタの塗り方かっこいいな」と思って試してみたりとか。
　
ドラマを観ていても「この場面で、そのキャラクターがこう言われたらこう返す」みたいなシーンに気持ち良さがあったら、なるほどと思いますし、写真集や画集も見ていても漫画でやってみたいと思う表現があるので、それをちょこちょこ作品に取り入れさせていただいています。

――さまざまな幅広いところから刺激を受けられているんですね。舞台ではどのようなジャンルのものを観に行かれていたのでしょうか？

桜日：私は「劇団☆新感線」を観て舞台のエンタメを知りました。「このシーンでこのセリフを言うと気持ち良いな」と感じることを「劇団☆新感線」は教えてくれるんです。その気持ち良さがずっと魂に組み込まれていて、（劇団☆新感線の）音楽やキャラクターも本当にかっこいいですよ。
　
（キャラクターは）正統なイケメンではなく、少し人間のダメなところもありますが、そこもまたかっこいい。大事にしたいことでもありますが、私の好きな言葉に「清濁併せ呑む」という言葉があって、汚いものも綺麗なものもあって美しくて、楽しいものなんじゃないのかなと思っています。なので、ストーリーも綺麗なものだけでまとめるのではなく、汚い部分にも楽しさを見出していきたいですね。
　
本当に舞台には色んなものを教えてもらいました。ほかにも私は「エンタメ」と「娯楽」という言葉がすごく好きで、生きる上で不可欠ではないけれど、時間が豊かになる気がするので、必要だなと私自身は感じています。私の漫画を読んでいただくときも、本当にスナック感覚で読者さんに楽しんでいただければいいな、と。そういう漫画を目指したいです。

――ありがとうございます！　それでは最後にファンの方へのメッセージをお願いします。

桜日：10年を越える連載になるとは本当に思っていませんでした。私としては結構あっという間でしたが、絶対に短い時間ではないので、この長い期間を『だかいち』と一緒に歩み、応援していただいているみなさんの存在は本当にありがたく思います。
　
10年でみなさんの生活環境も変わっていく中、変わらず『だかいち』という作品を隣に置いていただいていることは本当に当たり前じゃないことだなって。今でも読んでいただいていることに本当に感謝しています。
　
これからも、みなさんが日常の中で漫画が読みたいなと感じた場面で手に取ってもらえるような作品でありたいなと思っていますし、そうなるためにがんばらないといけないなと思っています。今後もみなさんのおそばに『だかいち』を添えていただけたら嬉しいです。今、おそばに置いていただいている方には本当に感謝でいっぱいです。今後も一緒にいてください。

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