音楽
『モブから』シルフィーの期待を音楽に乗せて。May'n「ストロボ・ファンタジー」インタビュー

変わらないスタイルと、新しい挑戦を融合させたMay'nの20年目。TVアニメ『モブから始まる探索英雄譚』EDテーマ「ストロボ・ファンタジー」インタビュー

2024年6月1日にアーティスト・デビュー20年目という節目を迎えたMay'nが、 9月4日(水)に、ニューシングル「ストロボ・ファンタジー」をリリースした。

表題曲は2024年7月から放送中のTVアニメ『モブから始まる探索英雄譚』(以下、モブから)のエンディングテーマ。また、カップリング曲にはAliAのボーカル・AYAMEが参加した「ウイニングショット!!feat. AYAME(from AliA)」(愛知県ケーブルテレビ高校野球テーマソング)、音源化が望まれていた「Pray」を。

さらにボーナストラックに『モブから』挿入歌「戦乙女の歌」を収録と、三者三様のナンバーを収録。メインストリートの新しい道のりを照らし出す一枚となった。

また、アニメイトとコラボレーションした特別企画も控えている。今後、アニメイトタイムズでのシチュエーション別楽曲の連載や、国内外のアニメイト店舗での一日店長企画、アニメイトカフェグラッテとのコラボ、さらにはクリエイターとのコラボTシャツ制作など、多彩なプロジェクトが展開される。続報に期待してほしい。

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進化し続ける“自分らしさ” 

――前回お話を伺った際に「ストロボ・ファンタジー」はシルフィーの気持ちを表現したということを教えてくださっていて。改めて原作『モブから』を読んだときの印象や、その中でシルフィーの気持ちをどのように解釈したかについて教えて下さい。

May'nさん(以下、May'n):エンディングテーマのお話をいただいたとき「シルフィーの思いを楽曲に反映してほしい」といった具体的な指示があったわけではなかったんです。

原作を読んでみると、主人公の海斗くんが“モブ”と言われるような、目立たない存在として過ごしてきたことや、自分自身でもそのように認識している様子が描かれていて。そんな海斗くんがさまざまなアイテムを手に入れながら、徐々にメイン級のキャラクターとして活躍していくというストーリーがとても印象的で、楽曲のテーマとしてそこを切り取るのもアリだなと思っていました。

それと同時に、これまで自分を信じてもっと前へ進もうというメッセージを込めた曲をたくさん歌わせていただいてきましたが、今回はもう少し違った視点から、今の自分と重ね合わせられる、そういった共感できるポイントを見つけたいと考えていて。

――シルフィーのどのようなところに共感されたんでしょうか?

May'n:シルフィーは召喚された人に仕える存在、いわばサーヴァントとして描かれていますが、海斗くんは単なるご主人様というより、もっと特別な存在というか。私ももっと自分の力を発揮できるかもしれない、できるんじゃないかと感じさせてくれる存在なんじゃないかなと、原作を読んで感じました。

それで、今回の楽曲では「自分がこんなにも頑張れて、楽しめているのは、あなたという存在がいるからなんだよ」というメッセージを伝えたいなって思ったんです。相手がいてこその自分という考えや、支えたいという想い、自分自身が今を楽しめているという気持ちを、歌にしてみたいなと思って、そこをテーマにしてみました。

――楽曲を手掛けられた草野華余子さんとはこれまでに2曲ご一緒されていますが、「ストロボ・ファンタジー」は特に「すごくMay'nらしい曲だな」と感じたとのこと。それでいて、新しさもあるように私は感じたのですが、May'nさん自身が感じた「らしさ」はどのようなところだったのでしょうか?

May'n:アニメのエンディングというと、バラード調だったり、比較的ゆっくりめの曲をお願いされることが多いんですが、今回は「どちらかというと、ポップな楽曲にしてほしい」というお話を製作の方からいただいていたんです。自分の中で、新しい楽曲になりそうだという予感がありました。ポップと一口に言っても、いろいろな種類があるので、自分の中で大切にしている軸や、May'nとしてのスタイルをキープしながら曲を作ってくださる方とご一緒できたら心強いなと思って。それで華余子さんにお声がけをさせてもらったんです。

華余子さんは、ロック的な要素も得意とされていますが、元々ダンス・ミュージックが好きで、その方面にも強いんです。私がまだ本名で活動していた時期のことも知ってくださっているので、その頃からR&Bが好きだったということも理解してくださっていて。そういった背景も含めて、私の音楽的なルーツやリズム感をしっかり把握した上で、楽曲を作ってくださるので、安心してお任せできました。

――May'nさんの良き理解者でもあるという。

May'n:そうですね。私は意識していなかったんですが、どうやらリズムを細かく取る癖があるみたいで、それを華余子さんに指摘されてハッとしました。例えば、一般的には16ビートで取るところを、私は32ビートで取ったり、オンでリズムを取るところを裏拍で取ったり。こういったリズム感覚を華余子さんがキャッチしてくださっていて。それを意識したリズムトラックやメロディを作ってくださったそうです。おかげで、今回の楽曲も「自分らしい曲だな」と改めて感じることができました。

また、これまでの歌詞は、自分“が”頑張りたい、私は負けない!という自分主体のものが多かったのですが、今回は「あなたのおかげで今頑張れている」という相手への感謝の気持ちを込めていて。実はどんな曲でも、ライブでは確実にその思いを持って歌っているんですよね。なので、これこそが部長としての自分の気持ちだなって思えました。作詞をしている時はどちらかと言うと、自分らしさは意識せず、新しい歌詞が書けているなって思っていたんですけど、改めて楽曲を聴いた時に「すごく自分らしい曲だな」と思いました。

――確かに、これまでのMay'nさんの楽曲は前向きで力強く、リスナーにその背中を見せるような応援歌が多かったように思います。でも今回は、隣で手をつなぐような曲というか。

May'n:そうですね、これまでは「私は前に行くからついてきて」というような曲、引っ張っていくような曲が多かったんです。でも、改めて自分の人生を振り返ると、部長もみんなの中にいる存在だと思うんですよね。例えば、先生とか、女王とかってもっと上の存在じゃないですか。

――そうですね。それに比べて、部長はあくまで輪の中にいるというか。

May'n:だからこそ、これこそが私らしいと思うと同時に、改めて自分を見つめ直す良い機会にもなったと思います。

――華余子さんとのコラボレーションが、新しいMay'nさんを引き出してくれたところもあると思うのですが、このアニバーサリーというタイミングも関係しているのでしょうか?

May'n:ああ〜……どうだろう。誰かを応援することが自分のパワーになるというのは、私は野球で気付いたところもあるんですよね。

――May'nさんのライフワークである野球の影響がここにも。

May'n:そうですね(笑)。私自身、みんなにパワーを届けたいと思いながらいつも歌をうたっていますが、ファンの皆さんのパワーに引っ張ってもらっているところがあって、みんなからのエールというのを肌で感じているんです。

そのみんなへの感謝の気持ちはずっと歌にしてきていますし、自分でも常に感じている想いだったんですけども……でも、野球を好きになって、選手を応援するようになってから、「頑張れ!」とエールを送ると、逆に自分も頑張ろうと思えるようになったんです。応援をする力が自分のパワーになっているんだなと感じています。それに気づいた時、May'nとして、みんなに「頑張ってほしい」という気持ちを歌を通して伝えることが、私自身の原動力になっているんだなって、ハッとして。

――エールとパワーの循環ですね。May'nさんがみんなにエールを送ることで、そのエールがまたMay'nさん自身の力となって戻ってくる。それを野球で気付いたというのも、May'nさんらしいと言いますか。

May'n:野球を好きになって3年くらいですが、この3年間で自分の中にあった気持ちを言語化できるようになって、さらにこれまで気づかなかった部分にも手が届くようになった感覚があります。こういった経験を通じて、今回の楽曲に込めた思いが、より確固たるものになったのかなと。

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