『劇場版「オーバーロード」聖王国編』青山吉能さん＆瀬戸麻沙美さんインタビュー｜ネイアの根っこの人格は青山さんと似ている!?　ニュートラルなシズとのコンビが生み出す化学反応とは？

必然と偶然が絡み合う『オーバーロード』の魅力

ーー今回お二人は掛け合いも多かったと思うのですが、収録もご一緒に？

瀬戸：そうですね、掛け合いのシーンはほぼ一緒に録らせていただきました。

ネイアとシズが合流した時って、もうネイアはいっぱいいっぱいというか。アインズ様しか見えない状態になっていて、そこにニュートラルな状態のシズとして関わるような流れだったんです。

私自身、それまでの収録で青山さん演じるネイアを見ていたのもあって、気持ち的にはネイアに感情移入しがちになるんですけど、やっぱりいつでもニュートラルなのがシズなので。引っ張られないすぎないように、シズらしさを維持することは意識していました。

ーー確かに、基本的にシズってテンションが変わらないキャラクターですよね。

瀬戸：感情が動いていると分かるシーンはあるんですけど、それでも大きな変化はないですね。だからこそ、ネイアに1円シールを貼るという行為は、それだけ彼女のことを気に入っていることがよく分かります。

どうして1円シールなのかは、私にも分からないんですけど（笑）、シールを貼っている時点で、シズはネイアに対して心を開いているというか、かなり興味をもっているということだと思うので、表情が変わらない中でも、そういう感情を薄っすらと表現したいと思っていました。

青山：今瀬戸さんも仰った通り、その時のネイアは本当にエンジン全開なんです。なんなら空ぶかししているかも、と思うくらいの勢いでした（笑）。「アインズ様の役に立たなきゃ」というモードになっている時、シズという異質なキャラクターと出会って、その出会いもすごく印象的で。ネイアの周りって、レメディオスとかグスターボ、両親もそうなんですけど、結構血気盛んなタイプが多いので、シズみたいな人には会ったことがなかったんじゃないかなと。

だからこそ、彼女にしか見せない表情を見せたり、シズとのコンビならではの戦い方もあったり。シズがニュートラルでいてくれたから、空ぶかししていたエネルギーを真っ直ぐに向けられたんじゃないでしょうか。

ーー『オーバーロード』は、かなり登場人物が多い作品ですが、とくに印象的だったキャラクターはいますか？

青山：劇場版に出演するにあたって、第4期まで観させていただいたんですけど、本当に登場人物が多いですよね。

その中でも、アルベドやデミウルゴスは印象的で……とくにデミウルゴスは『聖王国編』でも登場して、「本当に悪い人なのかな？」と思っていたら、色々な仕掛けがあって、輝いていましたね。ネイアとの関わりは少ないキャラクターですけど、一度観終わった後にデミウルゴス視点で観直すと気付けることも多くて、ストーリーを面白くしてくれるキャラクターだと感じました。

瀬戸：私はレメディオスですね。客観的に見ると「もうちょっと融通効かせたらいいのに」、「その選択は今するべきじゃない」とか、思うところはあるんですけど、やっぱり彼女なりに譲れないものがあって、自分なりの正義を貫いている不器用な人という印象なんです。

彼女にも色々な葛藤があって、決して悪い人じゃないし実力もあるはずなんですけど、ナザリック側があまりに強すぎるというか……。『オーバーロード』の物語ならではの残酷さを改めて感じさせてくれる存在だったので、印象に残っています。

ーー『オーバーロード』という作品については、どんな点が魅力だと感じましたか？

青山：この『聖王国編』もそうなんですけど、「どうやったらこんな物語を思いつくんだろう？」とずっと感じていました。伏線が回収された時に、「どこまでが必然でどこまで偶然なのか」という塩梅が素晴らしいなと。

あらかじめ仕組まれていた部分と偶然そうなった部分。それぞれがうまく噛み合って狙い通りに進むという展開になっていて、裏側を分かっている読者側からすると、すごく気持ち良いストーリーになっているのが魅力だと思いました。

瀬戸：私はやっぱり、モノローグの鈴木さん（※異世界に転移する前のアインズの本名）とアインズ様のギャップです（笑）。ものすごく強いのに、鈴木さんとしての視点になった途端にこっち側の目線になるというか、鈴木さんの声が聞こえた瞬間に安心できるんですよね。そういうアインズ様の内側と外側のギャップはポイントなのかなと。

特に私の場合は、これまで『ぷれぷれぷれあです』で関わることが多かったので、アインズ様の優しさやギャグ寄りな一面の印象が強くて、真剣な顔が多い『聖王国編』はギャップでよりカッコよく感じました。そこを起点にして、作品全体の壮大さとシナリオのオチみたいなところでギャップを感じられるのも、『オーバーロード』の魅力だと思います。

ーー最後に、映画を楽しみにしている読者へのメッセージをお願いします。

青山： 劇場ならではの表現や音響がとんでもないことになっています。登場するキャラクターも多いんですけど、そのひとつひとつに魂が込められていて、ネイアもレメディオスもグスターボも本当に真剣です。それぞれの正義のぶつかり合いに加えて、今回もアインズ様が超カッコいいので（笑）。そこにも注目していただければと思います。

瀬戸：今回は劇場作品ですが、大きなスクリーンで観ていただくのに本当にぴったりな物語になっていたなと、迫力のある映像を拝見させていただいて改めて思いました。

今回も『オーバーロード』ならではの結末があるんですけど、「こういう風に国が変わっていくんだ」、「こんな風に人を崇拝するようになっちゃうんだ」という、人間の弱さについて考えさせられる一方で、クスッと笑えるシーンも織り交ぜられていて。そういうギャップも感じられる「聖王国編」になっているので、ぜひ劇場で楽しんでいただければと思います。

あと、シズがめちゃくちゃ喋っているので、シズの新しい一面も注目していただけると嬉しいです。

［取材・文／米澤崇史　撮影／MoA］

『劇場版「オーバーロード」聖王国編』作品情報

あらすじ

聖王女カルカを元首とするローブル聖王国は、その国土を長大な城壁に守られ平和な時代を謳歌してきた。しかし、突如現れた魔皇ヤルダバオトと亜人連合軍の侵攻によって、安寧はいともたやすく崩れ去ってしまう。

聖騎士団長レメディオス、神官団長ケラルトをはじめ、聖王国は戦力を結集し迎え撃つも、ヤルダバオトとの圧倒的な力の差に為すすべもなく、国家は崩壊の危機に直面していた。

レメディオスはヤルダバオトに対抗しうる力を求め、自らの聖騎士団と従者ネイアを伴い、とある国へと助けを請いに向かった。

その国の名はアインズ・ウール・ゴウン魔導国。聖王国の人々が忌み嫌う、アンデッドが統べる異形の国家であった――。