アインズは、自分にとって切り離せない大切な存在ーー『劇場版「オーバーロード」聖王国編』日野聡さんインタビュー
ダークファンタジーとしての魅力がふんだんに詰まった劇場版
ーーこれまでのシリーズを通して、とくに印象的なエピソードはありますか?
日野:これは本当に沢山あって、一つには選べないんですよね。クレマンティーヌとの戦いもそうですし、リザードマン編も凄かったですよね。シャルティア戦はもちろんですし、黒い仔山羊の召喚とか、ガゼフの死とか……。個人的には、ブレインの最期もすごく好きで、本当に印象に残っているシーンが多すぎるというか。
ーー個人的には、第4期序盤の武王を応援するジルクニフのシーンが好きです(笑)。アインズもいるシーンですが、一緒に収録されたのでしょうか?
日野:「武王、頑張れー!」の所ですね(笑)。あれも面白かった。収録の時は真剣に役に入り込んでいるので大丈夫だったんですけど、完成された映像として観た時の破壊力はなかなかすごかったですね(笑)。
収録の話でいうと、第1期ラストのバフ祭りのシーンも思い出深いですね。台本4ページ分くらいずっと詠唱していて、一応台本にはルビが振ってあるんですけど、小さくて読み辛いので、自分で横に大きく読み仮名を書きこんでいました。
ーー『オーバーロード』には、悲惨な末路を遂げてしまうキャラクターも多いですが、ちょっと可哀想だなと感じたキャラクターはいますか?
日野:可哀想というより「死んでほしくなかった」的な意味でいうと、1期のモモンと共に行動した冒険者パーティー【漆黒の剣】の面々や3期でのガゼフですね。あと、第4期に出てきたザナックも好きでした。
ザナックって最終的には、国民のために動ける良い王様になっていたじゃないですか。それが貴族らの謀反で殺されてしまって、アインズも「非常に不愉快だ」って怒っていましたけど、僕も同じような気持ちでした。
あとは先ほども挙げたブレインが印象深いです。彼は武人として決死の思いで戦いに挑んだというカッコよさもあるので、ガゼフも含めて、彼らの最期はやっぱり尊重したいという想いがあります。
ーーアインズは、あの世界の人間の死に対して心が動かないと語る場面もありつつ、ザナックが死んだ時のように明確に怒りを感じている時もありますよね。
日野:アインズは、自分が認めた仲間に無礼を働いたり傷つけたりされることをすごく嫌っている傾向があるんです。ザナックの死に対しても怒りが強く出たんじゃないかと思っています。
とくにナザリック勢のことは家族として大切に想っていて、その面々と親しくしてくれる人も守るべき存在という認識があるので、それを蔑ろにしようとする相手は容赦なく叩き潰すという一面も要所要所で垣間見ています。
ーー複数回に渡る劇場アニメ化、TVアニメが第4期まで続く作品は中々ないと思うのですが、ここまで『オーバーロード』が長く愛されることになった要因はどんな点だと感じられていますか?
日野:色々あると思うんですけど、表の会話劇と裏に隠された巧みな心理戦に加えて、登場するキャラクターたちが全力でその世界で生き抜こうという姿がリアル且つ魅力的に描かれているという部分は大きいのかなと。
加えて、王道のダークファンタジー的なカッコよさもあって、 “悪”として描かれる側に軸をおいた作品は他にもありますが、『オーバーロード』はその先駆けというか、人気の火付け役的な役割を果たした作品でもありますよね。
そういった様々な要素が組み合わさって、もっと次の話を見たい、先の物語を知りたいと、沢山の方に楽しんでいただけているのではないでしょうか。
ーーこれほど長くひとりのキャラクターを演じることも少ないと思うのですが、日野さんにとってのアインズはどんな存在でしょうか?
日野:自分にとっては切り離せない存在ですね。実は僕、『オーバーロード』と全然関係ないゲームで遊ぶ時も、アイコンや名前をアインズやナザリックに設定したりすることが多いんです(笑)。でも、そうなると負けられないじゃないですか。
ーー(笑)。確かに、何かに負けるアインズやナザリックは見たくないですね。
日野:そうなんです。それによって課金額もびっくりするくらい増えたり(笑)。リアルで『課金アイテムだよ!』をやってる感じですよね(笑)。でも、それほど思い入れが深いキャラクターなので、僕にとっては大切な存在ですね。
ーー最後に、劇場版を楽しみにしている『オーバーロード』ファンへのメッセージをお願いします。
日野:今回の『オーバーロード』劇場版は完全新作という形で、新キャラクターのネイアが、アインズやナザリック勢と出会い、どのように彼らに心酔していくかという流れを細かく描いた作品となっています。『オーバーロード』のダークファンタジーとしての魅力がふんだんに詰まった劇場版となっているので、ぜひ大きなスクリーンで何度も観て堪能していただけると嬉しいです。
[取材・文/米澤崇史 撮影/MoA]
『劇場版「オーバーロード」聖王国編』作品情報
あらすじ
聖騎士団長レメディオス、神官団長ケラルトをはじめ、聖王国は戦力を結集し迎え撃つも、ヤルダバオトとの圧倒的な力の差に為すすべもなく、国家は崩壊の危機に直面していた。
レメディオスはヤルダバオトに対抗しうる力を求め、自らの聖騎士団と従者ネイアを伴い、とある国へと助けを請いに向かった。
その国の名はアインズ・ウール・ゴウン魔導国。聖王国の人々が忌み嫌う、アンデッドが統べる異形の国家であった――。
キャスト
(C)丸山くがね・KADOKAWA刊/劇場版「オーバーロード」聖王国編製作委員会