秋アニメ『ネガポジアングラー』第1話 上村 泰(監督)×岩中睦樹(佐々木常宏 役)振り返りインタビュー|見終わった後に「ちょっと釣り面白そうかも」と思っていただけるような作品を目指して――
2024年10月3日(木)より放送開始した、「釣り」がテーマの一つであるオリジナルTVアニメーション『ネガポジアングラー』。第47回日本アカデミー賞で最優秀音楽賞と優秀アニメーション作品賞を受賞した映画『BLUE GIANT』を手掛けたNUTがアニメーション制作を担当し、『幼女戦記』などでもタッグ組んだ上村泰さんが監督を務めます。
そんな話題の本作を、アニメイトタイムズでは毎話振り返りインタビュー! 主人公・佐々木常宏役の岩中睦樹さんと、上村監督のお二人に、毎話の感想や好きなシーン、収録秘話などを伺っていきます。
各話放送後に毎週更新予定。ネタバレ満載となっていますので、各話を見てからご覧ください!
見終わった後に「ちょっと釣り面白そうかも」って思っていただけるような作品を目指して
――ついに放送が始まりましたが、1話を見ていかがでしたか?
岩中睦樹さん(以下、岩中):ついに……といった感じですよね。
上村泰さん(以下、上村):そうですね。やっと完成したんで(笑)。
岩中:なかなかこんな暗いスタートってないですよね。1話って一番暗いんじゃないかな(笑)。
上村:最初のモノローグ、暗いですよね。
岩中:超暗くやってくださいというオーダーがあったので、モノローグもめちゃくちゃ暗くやらせていただきました。もう本当に何も考えられないんでしょうね、ああいう状態の人間って。「何でもいいやもう」って。多分あれも本心じゃなくて自然とこうなっちゃったのかなって思ってましたね。
――1話でお気に入りのシーンはありますか?
岩中:僕はやっぱり冒頭じゃないですかね。自ら命を絶とうとしようとしてるところから借金取りに追われて……。めちゃめちゃ衝撃的なんで、もう始まり方が。そこが僕は好きですかね。監督はどうですか?
上村:監督やってるとどこも思い入れはあるんですけど……。個人的に好きなのはハナちゃんが素手でガッと鯖を掴むシーン。あそこはなんかカワイイなと思いますね。
岩中:ハナちゃんの性格が見えますよね(笑)。
上村:あとは1話だとハナちゃんが最初にバッとキャスト(竿を振ってルアーを飛ばすこと)するところ。それに常宏がハッとなる、あそこはカッコいいなって思っちゃいました。キャストの描写にもしっかりこだわってカッコよく描いていただいているので、ぜひじっくり見てほしいです。
――監督にお聞きしたいのですが、本作のテーマに釣りを選んだ理由は何かあるのでしょうか?
上村:実は釣りアニメというのが企画として最初に決まっていたんです。それ以外は逆に決まっていないという状態だったんです。それで改めて釣りについて考えてみました。釣りってよく人生に例えられたり格言とかに使われてたりするじゃないですか。釣りの良さだったり、釣りを極めていくとはどういうことなのか。人生って何だろうとか、幸せとは何かとかって釣りとよく掛け合わさったりするので、なんかそういったところをぼんやりと企画をいただいた時点で考えていたかなと思います。なので、釣りを選んだというわけではなく、釣りだからこうなっていったというか…、そういう流れかなと思います。
――主人公である常宏を演じた感想や演じる際に気をつけた点などありますか?
岩中:常宏を中心に物語が進んでいくのでバランスとかも考えました。でも常宏は結構昔の自分に似てるっていうのもあって。普通と言ったらそれまでですけど、作りすぎない演技というか。常宏を通して自分自身を見ているような感じもしましたし、自分として常宏を見ているような感じもしたので、そういうところは気をつけて演じさせていただきました。あと1話に関しては、とにかく最悪な状況なので明るい部分はなるべく出さないようにと気を付けつつ、監督や音響監督の岩浪美和さんとすり合わせながら収録させていただきました。
――アフレコの話が出ましたが詳しく伺ってもよろしいでしょうか?
上村:毎回、収録する話数に関係する釣具をアフレコ現場に持って行っていました。のべ竿(リールを付けない竿)とルアーロッドではやっぱり全然硬さとか違うしやり方も違うんで。キャストの皆さんも釣りを経験されてる方がほとんどいらっしゃらなかったですし。一方で(藤代役の)菅原正志さんは(釣りのことが詳しすぎて)もう逆に神ですけど(笑)。
そういったところで、せめて雰囲気だけでもわかっていただけるかなっていう感じで釣具を持って行った感じですね。あと何作品か監督をさせていただいていますけど、岩中さんのお話を伺っていて感じているのは、“その人自身のパーソナルな部分を引き出したい”みたいなものが監督としてあるのかもしれないなと思いました。岩中さんらしさ…なんかこう暗いひねくれてる中にどこか可愛さがあるみたいな(笑)。
岩中:恥ずかしい(笑)。めちゃくちゃバレていますからね(笑)。
上村:そういったところをしっかり引き出せるようなことを心掛けていたっていうか、そういう流れになっていったというか。同じようなことはいつも考えているかもしれないですね。
――今の話を伺うと、キャスティングは監督ご自身が選ばれたのでしょうか?
上村:普通にテープオーディションがあって、その後にスタジオオーディションをみたいな感じでやらせていただいたんですけど。だいぶ意見を言わせてもらいましたし、意見は通っている感じはしますね。もちろんプロデューサーさんたちと相談しながら決めましたけど、かなりこの役はこういう人がいいというか、それこそ岩中さんがいいみたいなことは割とずっと言っていたような気がしますね。
――常宏役に岩中さんを選んだ理由があれば教えてください。
上村:素で演じられるとまでは言わないんですけれど、その人のパーソナルな部分みたいなものを引き出したい。引き出してほしいというか。そういったことを僕はディレクションしているのではという感じはしますね。そういう意味で岩中さんがはまりそうだなと感じました。
――アフレコ中の印象に残っているエピソードはありますか?
岩中:やはり実際の釣具を体験……といっても実際に釣りはしていないんですけど(笑)。その場で釣り方や引きの感じを教えていただいたりとか、どれも初めて触るものだったので、とても印象に残っています。
上村:僕的には岩中さんはアドリブというか、台本に書いてあることを段取り通りに言わない時がたまにあって(笑)。そういうところで、より常宏らしさを感じる瞬間があって、それがすごく良かったですね。
岩中:セリフってちゃんと脚本家さんが考えていらっしゃるので、もちろんその通りに喋ることも大事だとは思っています。ただ、(脚本は)1個の道しるべとしてそれを感じることもあって。今作ではそこから僕の内から出たもののような感じで喋っていたので、たまに少し脚本のセリフと違うことを言っちゃったりしていたんですけど(笑)。
上村:僕は特にアニメオリジナル作品の役作りはそうやって作り上げていくものかなと思っているので、本当にすごくありがたかったなと思っています。そういう意味では岩中さんの演じた常宏に引っ張られた部分はすごいあるなと思いますね。
――これから約3ヶ月間の放送となりますが、続きを楽しみにしているファンにメッセージをお願いします。
岩中:1話ではまだ、「めっちゃ釣りをやりたい」となるような感じではないかもしれませんが、見ていくうちにすごく釣りに対してワクワクするようなお話になっています。色んな釣り道具も出てきますし、しっかり釣りが好きな方も楽しんでいただける作品になると思うので、ぜひ最後までご視聴よろしくお願いします。
上村:全く釣りを知らない視聴者の方もたくさんいらっしゃると思いますが、いつのまにか「釣りって面白そうだな」と感じていただけるような作品になっているといいなと思いながら作りました。そういう意味でもまず常宏とか他の個性的なキャラクターたちの面白いやりとりを純粋に楽しんでいただければいいのかなと思っています。
最終話まで見終わった後に「釣りやってみたいかも」って思っていただければ、「もうありがとうございます!」という感じですね。引き続き楽しんで見てください。
[文・二城利月]
作品概要
あらすじ
鬱々とした日々を過ごす常宏は、ある日借金取りに追われ海に転落したところを、釣り好きの少女ハナとその釣り仲間の貴明たちに助けられる。
ハナに勧められるまま人生初の釣りを経験し、その釣り仲間とも親交を深める常宏。
ハナや貴明の働くコンビニでバイトも始め、難解な釣り用語や生アミの匂いに苦戦しながらも、徐々に釣りにハマっていく。
手元に伝わるアタリは、生の実感――。
転落し続け世界を見上げるだけの人生は、そう簡単に変わらない。
そんな常宏が釣りを通して見つけたものとは……?
キャスト
(C)NEGAPOSI-ANGLER PROJECT