
冬アニメ『全修。』スタッフ連載インタビュー第四回:音楽担当・橋本由香利さん&音響効果担当・白石唯果さん|「この曲違う、全修だわ」と自分にリテイクを出すこともあります
株式会社MAPPAのオリジナルTVアニメ『全修。』が、2025年1月5日よりテレ東系列ほかで放送中。本作の主人公は高校卒業後アニメーターとなり才能を開花させ、あっという間に監督デビューを果たした新進気鋭の天才監督・広瀬ナツ子。初恋をテーマにした劇場ラブコメ作品のコンテ作業中に意識を失った彼女が目を覚ましたとき、目の前に広がっていたのは、子供の頃に夢中になったアニメ映画『滅びゆく物語』の世界でした。
アニメイトタイムズでは、本作の魅力、そしてアニメ業界のお仕事に迫るインタビュー連載を展開! 第四回は音楽担当・橋本由香利さんと音響効果担当・白石唯果さんにお話を聞きました。学生の頃にいまの仕事へ興味を持ったというお二人。今回は本作の見どころほか、それぞれの“全修”経験についてお話いただきました。
メインテーマに女声コーラスを入れるのも監督のアイディアでした
──最初に本作のシナリオ・原案を見たとき、聞いたときの印象を教えてください。
音楽担当・橋本由香利さん(以下、橋本):山﨑(みつえ)監督とはこれまで何作かご一緒させていただいていており、毎回とても面白い作品を手がけられる方だと感じています。今回オリジナルの新作と聞いて、ワクワクしながらシナリオを拝読しました。アニメの監督が異世界に行くという設定をうかがった時もとても新鮮だなと思いましたが、どのような映像になるのか想像がつかず、バンクシーンのムービーを見て驚きました。
音響効果担当・白石唯果さん(以下、白石):オリジナルの異世界転生作品は珍しいなと思いました。今はとても異世界転生ものが多いですが、『全修。』みたいな作品は見たことなかったです。ネタバレなので詳しくはお話できませんが、最終回が、異世界ものとしては斬新で印象的でした。
──本作において、お二人はそれぞれ音楽制作、音響効果を担当されています。それぞれ、どういったお仕事になりますか?
橋本:劇中で使うBGMを作っています。作る際、まず監督が作った音楽のリストを元に打ち合わせをします。リストには「このシーンでこんな曲を使います」などの具体的なイメージが書いてあり、それを基に監督からどんなサウンドにしたいのかをうかがい、打ち合わせが終わると作曲作業に入ります。PCでガイドとなる曲を作り監督に聴いていただき、リクエストを反映させながら最終形に仕上げていきます。そして、最後にスタジオでピアノやギター、ストリングスなどの生楽器の収録をします。
今回は『滅びゆく物語』の世界観に合う楽器を取り入れたいと思い、ハーディーガーディー、シトール、リュートなどの古楽器を演奏される久野さんにご参加いただきました。深みのある演奏と音色は、この作品の世界観にぴったりだと思います。
白石:効果音は、セリフと音楽以外の全ての音付けの作業になります。例えば環境音や、魔法や剣の音、靴とか服の音などですね。今回はプレスコ(※)なので、セリフが入っている絵をもらってから必要な音を考えて付けていきました。絵に合わせて足音とかを録音したり、持っている音源を加工したりしてつけていきます。
(※)先にセリフなどの収録をして、あとから絵を付けていく収録方式。
──橋本さんは音楽制作をするうえで、監督からどんなリクエストがありましたか?
橋本:山﨑監督は音響監督も兼ねていて、3話くらいまではどのシーンでどの曲を流すかが具体的に決まっていることが多いんです。今回はバンクシーンに付ける曲をどうするかをたくさん話し合いました。メインテーマに女声コーラスを入れるのも監督のアイディアで、あまり子供っぽくしないで欲しいというリクエストもありました。『滅びゆく物語』の世界観を表すようなファンタジーサウンドとナツ子の現実の世界のサウンドはテクスチャーを変えたいというお話もあり、そこは意識しながら作っています。
──改めて、本作の音楽のコンセプトや方向性を教えてください。
橋本:『滅びゆく物語』は現実の世界ではひと昔前に公開された映画という設定なので、その時代感を意識したサウンドにしようと思いました。少し懐かしいような旋律を作り、生楽器中心のサウンドにしています。ナツ子のバンクシーンでは、現実の世界とつながりを感じさせるようなサウンドを目指し、キラキラとした音もたくさん入れました。