
『猫と竜』子安武人さん×井上喜久子さんインタビュー|猫に育てられた竜と母猫――親としての想いや日常が滲む、観る人が「明日も頑張ろうかな」と思える温かさ
猫竜は「隣のお兄ちゃん」?
──改めて、演じられた「猫竜」と「ママにゃん」の印象もお伺いさせてください。
子安:僕もオーディションだったんですけど、作中でずっと猫たちから「おじちゃん」と呼ばれているので、読者や視聴者の皆さんは「渋いおじさん」をイメージされると思うんです。
でも、この「おじさん」は「ちっちゃい子から見た大人」というレベルなんじゃないかなと。ママにゃんに育てられた兄弟の中でも猫竜は下の方で、どこか弟気質なところがある。そこに渋すぎる声をあてちゃうと、他のキャラクターとのバランスが取りづらい気がしたんですね。
むしろ、近所のお兄ちゃんがちっちゃい子に「おじさん」と呼ばれて、「おいおい、お兄さんって呼べよ」と返すような感じがいいなと。なので、オーディションもあえて「おじさん」に寄せず、僕のありのままで挑みました。選んでいただいた時は本当に嬉しかったです。
第1話を観た時は、皆さんのイメージとのギャップに驚かれるかもしれませんが、観進めていくうちに、この「隣のお兄ちゃん」のような立ち位置に納得していただければ嬉しいです。優しく、時に厳しく、子供たちと一緒に学び、遊んでいるような空気感を見せられたらと思っています。
井上:ママにゃんは見た目がピンク色っぽくてモフモフした可愛らしい見た目なので、名前のイメージも含めて可愛い印象ですが、実は「肝っ玉母ちゃん」だったり、あと子供をしっかりと躾ける一面があるんです。だから、単に優しい、厳しいというより、いろんな要素を含んだお母さんというか。子供の成長のために、どうやったらこの子が一人前になれるかをすごく強く考えながら、優しくする時は優しく、厳しい時は厳しく、怒る時は怒るし、ふざける時はふざける。そういう、豊かな感情を持ったお母さん猫でありたいなと思いました。
──1話冒頭の猫竜が「魔法」を唱えるシーンも印象的でした。
子安:竜になっての呪文だったと思うんですけど、猫竜さんはあまり人間のことをよく思っていないので、その辺で厳しく、冷たさを感じるように。「人間を許せない」という感じがあったので、そこは意識しました。
──1話では描かれていないですが、ママにゃんも魔法を唱えるシーンが……?
井上:ママにゃんも魔法を唱えるシーンがあります! 私、魔法を唱えるのが大好きなんですよ! 自分でも自分の魔法を持っているぐらいなので。……ちょっと発表していいですか?(笑)
子安:リアクションに困りますよ(笑)。
井上:私、「プリリン・ハルルン・ポワポワリ〜ン」っていう自分の“寿文(じゅもん)”を持っているんです。これは人を笑顔にするためのもので、「寿(ことぶき)」と書く「寿文(じゅもん)」です。
子安:すごくいいですね。
井上:すいません(笑)。でもそれくらい魔法を唱えるのが大好きなんです。だから、ママにゃんとして言えた時はすごく嬉しかったですね。
実は収録で一文字間違えてしまってリテイクをいただくという痛恨のミスをしてしまったこともあったんですけど(笑)。猫たちがみんな魔法を使えて、それを人間に教えるという流れはなかなかないなと思いながら、楽しくやらせていただいています。
──「猫語」で喋るシーンもかなり印象的でした。
井上:そう、猫語! ちなみに、次回予告は猫語なんですよ。
子安:次回予告、普通は日本語でやりますけど、あれを全部「ニャニャニャ」でやっていて。シナリオには何にもなくて、好きなようにやっていいと言われたので、本人しか何を言ったか分かっていないです。
井上:私たちは原作を読んで「次こういうことが起こる」と分かっていますから、それを猫語に込めて言っているんですけど、視聴者の方はただ「ニャニャニャ」言っているだけにしか聞こえていないという(笑)。でも演じていても、もう楽しくてしょうがないです! 人生の半分を猫語でやりたいぐらい。
子安:猫語については、猫竜はもともと猫じゃないので、猫と話をする時は、僕らが英語で喋るのと同じように「猫語を使って喋る」という意味合いも込めています。
井上:そっか! そうだよね、竜だもんね。
子安:猫の声で喋る必要性はないんですよ。だから、きっこさんの「本物の猫」としての猫語とは厳密には違うんです。英語を話すみたいに、拙いというか、あえて猫っぽくなく。僕は猫の言葉を真似ているという体(てい)なんです。
だから僕の猫語に関しては、視聴者の皆さんのための「サービス」だと思ってやっています。そう思わないと、毎回恥ずかしくて恥ずかしくて!
井上:本気で照れてますね(笑)。
子安:数十年やってきて、あまり動物の声を担当したことがないので、まず「ニャ」とか言わないんですよ。「ニャ」と言っている子安武人、ちょっと嫌だなーって自分で思いながら(笑)。
井上:照れてるからこそ、ちょっと可愛いんですよ。私はノリノリで「イエーイ!」みたいな感じですけど。
子安:きっこさんは可愛いからいいですよ。おっさんが「ニャッ」と言った瞬間、どういう顔をすればいいんだろうって(笑)。視聴者の方へのサービスだと思い込んで、心のバランスを保とうとしています。
──ちなみに、猫語の収録は一発OKでしたか?
子安:一発OKもへったくれもない(笑)。何が正解か誰も分かっていないので。とにかく恥ずかしくて、言い終わった後の恥ずかしさったら……。ずっとみんな後ろにいるんですよ。
井上:みんな嬉しそうに聞いていましたよ。ちょっと恥ずかしそうな子安くんのニャニャニャ。
子安:本当に恥ずかしいです(笑)。
作品を通して、「明日も頑張ろうかな」という気になってもらえたら
──本作は非常にほんわかとした雰囲気の作品ですが、収録を通じて癒やしや気づきを感じた部分はありましたか?
子安:僕も普段はバトルもので、しかも大体敵役をやっているのを皆さんご存知かと思いますが(笑)。本当にこの時間はいいなと。こんな心が温かくなる時間が僕には必要だなと、癒やされるなと思いながらやっていました。毎回、フルカラーで絵が入った状態でアフレコに臨ませていただいていたので、スタッフさんたちの熱量や愛情も感じています。
やっぱりフルカラーで絵があると、お芝居も色づくといいますか。線画でやっているよりも、色のついたお芝居になるんじゃないかと思うんです。そういう環境でやれるのは非常にありがたく思っています。とてもほのぼのと癒される時間をいただきました。……これでまた、人が殺せます(笑)。
井上:すごい! 邪悪な子安武人(笑)。
子安:いや、役の話ですよ! 俯瞰からニヤニヤしているのは役の話ですから(笑)。
井上:私も同じ気持ちです。この作品の持つ癒やしが素晴らしいので、もう永遠にここにいたいという気持ちになります。
気づきという意味ではたくさんあるんですよね。単に「ふわふわ幸せ」というだけじゃなくて。「十猫十色(じゅうねこといろ)」という言葉が出てくるんです。人間も「十人十色」と言いますけど、それをそのまま「十猫十色」と言い表しているシーンがあって、人でも猫でも「良い人もいるし、悪い人もいる」。
そういうところを、ママにゃんは子供たちに教えたりしているんです。いろんな人や動物がいるけれど、みんな考え方も違う。自分自身もいろんなことを学んで、勉強して、しっかりと生きていく。そんな教えも感じさせてくれるところが素敵だなって思います。
──本作には魅力的な猫や人間がたくさん登場しますが、特に好きなキャラクターや、印象に残ったエピソードはありますか。
井上:全員可愛いんですが、あえて言うならグレーターデーモンですね。猫ではないんですが一緒に育てた子で、あのシーンで最初に「お母ちゃん」という言葉が出てくるんです。
あとはアンネロッサ(CV:安済知佳)。弱々しくて自信がない子がママにゃんを信頼してくれて、二人の世界が構築されていく。もう一蓮托生みたいな気持ちです。あと、4代目モシャモシャも面白いですよ! 江戸っ子みたいな喋りをするので楽しみにしていてください。
子安:モシャモシャは僕(猫竜)が育てた方だよね。速水奨さんが演じるクロバネなんかも面白いですよ。
──ちなみにお二人にとって「猫」はどういう存在ですか。
子安:以前少し飼っていたこともあるんですが、やっぱり癒やしですね。戯れている時間はとてもくつろげる、癒やされる時間です。
井上:私は娘が小さい時に捨て猫を拾ってきて。里親を探していたら田中敦子さんが「うちで2匹とも育てるよ」と言ってくださった思い出があります。
私は犬が好きなんですけど(笑)、なぜか猫グッズが大好きなんです。カバンにも猫がいるし、色々持っているんです。
子安:よく分からない(笑)。そこは犬グッズでしょう。飼われている犬が不憫ですよ!
井上:でもこのママにゃんを演じさせていただくことになって、「あ、このために猫グッズを集めていたんだ!」と運命を感じました。犬とも猫とも仲良しな人生、最高です!(笑)
──(笑)。では最後に、読者の皆さんとファンの方に向けて、メッセージをいただけますでしょうか。
子安:本当に、見て癒やされてほしいです。荒んだことが多い世の中ですから、これを見てぼーっとしてもいいし、心が温かくなって「明日も頑張ろうかな」という気になってもらえたら。ぜひご家族で、あるいは一人でも心穏やかにご覧になってください。
井上:原作も漫画も素晴らしくて、この世界が大好きな皆さんがたくさんいらっしゃると思います。今回アニメになるということで、動く竜や猫たちを見て楽しんでほしいです。優しい気持ち、温かな気持ちがたくさん溢れている作品ですので、老若男女、皆さんで楽しんでくださいね。
[インタビュー/失野]
作品情報
あらすじ
一匹の火吹き竜が、魔法を操る猫たちと暮らしています。
生まれる前に実親を失ったその竜は、
偶然出会った一匹の母猫によって育てられました。
猫たちは、空を飛び火を噴く“ちょっと変わった猫”として、
竜を家族に迎え入れたのです。
好奇心旺盛な森の猫たちの生き方は十猫十色。
竜は母猫への恩を返すかのように、森の猫たちに寄り添い、見守り続けます。
そんな竜を猫たちは“羽のおじちゃん”と呼び、慕っています。
一方、人間は畏怖を込めて“猫竜”と呼ぶのでした……。
これは、猫に育てられた竜と猫たち、そして人間たちが織りなす、
心あたたかく、そしてちょっと切なくなる不思議な絆の物語──。
キャスト
(C)アマラ・宝島社/「猫と竜」製作委員会





































