好評放送中のTVアニメ『はじめの一歩 New Challenger』DVD第1巻発売記念企画!宍戸淳監督&一歩役・喜安浩平さん スペシャル対談(前編)
「週刊少年マガジン」(講談社刊)連載中の人気マンガが原作のTVアニメ『はじめの一歩』。2002年からスタートした前シリーズはファンの要望に応え、1年半に渡るロングランとなった。そして今年1月から約7年ぶりとなるTV新シリーズ『はじめの一歩 New Challenger』が好評放送中だ。
イジメられていた主人公の幕之内一歩がボクシングと出会い、数々の強敵を対戦していくなかで成長していくストーリーだが、今シリーズでは一歩が日本チャンピオンになった後のエピソードが描かれている。
永遠のライバル・宮田一郎のタイトルマッチ、一歩が尊敬するベテランボクサー・伊達英二の世界戦、一歩の防衛戦の相手など魅力的な試合や人間ドラマが展開される。
そんな『はじめの一歩 New Challenger』のDVD第1巻が4月22日に発売される。また、第一シリーズのDVD、『はじめの一歩 DVD-BOX VOL.2』が3月18日にリリースされたのを記念して、今シリーズから監督を担当する宍戸淳さんと、一歩役の喜安浩平さんとの対談を行なった。
お二方の『はじめの一歩』に対する熱い想いを語った対談の模様を、2回に分けてお届けする。
●熱く男くさく……前作を踏襲しながら“今”を取り入れる演出
――アニメの新シリーズが決まった時の感想をお聞かせください
喜安さん:連絡をもらった時、家にいたんですけど、マンガのように、部屋で一人、ガッツポーズしてました(笑)。うれしかったです、本当に。いろいろな作品に関わらせていただいていますが、僕が初めてアニメのお仕事をさせていただいた作品でしたし、とりわけ思い入れのある作品だったので、またシリーズが再開するということは格別なニュースでした。
――宍戸監督は今回『はじめの一歩 New Challenger』で新たに監督を務めることになって、どう思われましたか?
宍戸監督:前シリーズでは各話の演出を担当していましたが、まさか自分が監督をやるとは……。続編が決まっても西村(聡)監督が引き続き、監督をされるんだろうなと思っていたので。タイトルもすごく大きな作品ですし、絶対自分ではないだろうと思っていたんです。だから正直、驚きの気持ちとプレッシャーもありましたが、気合もすごく入りました。「絶対におもしろい作品を作ろう」って。
――前シリーズが終わったのが2002年3月で、その後にスペシャルや特番などもありましたが、かなりブランクが空いた中で改めて一歩を演じるにあたって心がけたことはありますか?
喜安さん:最初は前シリーズと違ってたらいけないと思って、前回まで演じていたものをどれだけコピーできるだろうかという意識がどこかにありました。でもいざ台本をいただいて、画面の中で動いているキャラを見ていたら自然と出てくる気持ちや声があるんです。前シリーズでは僕自身がつたなかったのでなにかを計算して演技することなんてできていなかったんですが、前シリーズと同じように演じるのであれば、何も意識しないでマイクの前に立つということだけ考えればいいのかなと収録が進んでいくなかで気付きました。
――監督が新シリーズに臨むにあたってのイメージや心がけていることはありますか?
宍戸監督:まず前作がアニメとして完成されているというか、『はじめの一歩』を映像化するとしたらこうなるだろうという理想形に近かったので、今回もガラッと変えたりせず、前作のいい部分を踏襲しつつ、前作よりも更にかっこよく見せるか、今だからできることをどう入れていくのかを試行錯誤している感じですね。
――宍戸監督から直接、ディレクションやアドバイスはあったんでしょうか?
喜安さん:実は監督とこうやってご一緒して、じっくりお話しするのは初めてで。
宍戸監督:そうなんです(笑)。
喜安さん:1話目の収録なのに普通に何話か録ってきた現場のように始まっていくんですよ。
宍戸監督:1話の収録に入る前のあいさつも考えていたんですけど、「さあ、あいさつかな」と思っていたらすぐに収録が始まってしまって(笑)。
喜安さん:そうなんですよね。仕切り直しみたいなのもなくて、びっくりしました(笑)。
宍戸監督:そのまま当たり前のように「前作からの続編です。引き続きお願いします」という感じで始まってしまいました。役者さんのなかには、僕が監督だってまだ知らない人がいるんじゃないかと思ってるんです(笑)。
喜安さん:そうかもしれないですね(笑)。
――ちなみに監督が考えていたあいさつはどんな内容だったんですか?
宍戸監督:簡単に言ったら「熱くて男くさいフィルムを作っていきましょう! 室内の温度が5度くらい上がるような芝居をよろしくお願いします」という感じの言葉を考えていました。でもそんなことを言わなくても、『はじめの一歩』に関わってきた皆さんなので、作品も僕なんかよりも熟知していて、「そうそう、そんな感じです!」とイメージ通りの演技をしてくださって、収録も順調に進んでいます。
●今回のシリーズでキャラがフェザー級な体つき
――キャストが集まった第1回目の収録は何の違和感もなく、すぐに世界観に入っていった感じだったんでしょうか?
喜安さん:監督は聴いてみてどう思いましたか?
宍戸監督:聴いている分には前シリーズの時のようにすっと入って、エンジン全開だったように思えました。
喜安さん:僕としては絶妙なキャスティングになっていると思っていまして、鴨川会長役の内海賢二さんは本当の会長のように現場のムードを作ってくださいますし、他の先輩方もいい意味で自由に好き勝手なことをする方々なので、演技の部分だけでなく、現場が鴨川ジムみたいな空気になっていて、「ああしよう」、「こうしよう」と思わなくてもそれぞれのポジションに入っていける恵まれたチームだなと思ってます。
――長く間隔が空いても、すぐに作品の世界に入れるというのはすごいですね
喜安さん:そうですね。前シリーズの空気がキャストのなかでも強いインパクトとして残っていたんでしょうね。だから忘れなかったのかもしれません。
――今回、宍戸監督の元、作品制作に関わってきた印象はいかがですか?
喜安さん:実際にオンエアされたものを見ると前シリーズとは演出的に違う部分があったり、監督のカラーを感じることがあって、監督のなかに作品への確固としたイメージがあるんだろうなと思いました。
――具体的にはどんなところに違いやカラーを感じたんでしょうか?
喜安さん:もしかしたら監督だけではないかもしれませんが若干、からだのボリュームの描き方とか変わったような。
宍戸監督:ご指摘の通り、前シリーズから多少変えてます。
喜安さん:ボクサーのフォルムがよりフェザー級な感じになっているなと。あとバックに流れる音楽も違いますし、試合の速度や動きのスピードなども違うなと思いました。絵が速過ぎて、息継ぎとか追いつくのに必死なところもあります。
宍戸監督:ボクシングをかっこよく見せる上で、スピード感が大切だと思っていて。一瞬の駆け引きとか、いかにうまく見せるか、考えた結果、速く見せるしかないって。スピード感とキレの良さは意識して、かっこ良さを突き詰めたらあんな感じになりました。
――実際、一歩が戦うフェザー級という階級はボクサーのスピード、パンチの重さなどボクシングの醍醐味が詰まっていますからね
宍戸監督:だから描きがいがあります。でも一歩の試合は前作ほど多くはないかもしれないけど(笑)。
喜安さん:(笑)。でも各キャラクターの背景にあるストーリーがどんどん出てくるのでおもしろいです。僕は原作も大好きでずっと読んでいるんですけど、今シリーズで描かれるあたりって、原作でも、
森川(ショージ)先生の脂がのってきてらして、どんどんキャラ達がかっこ良くなっていくんですよ。宮田(一郎)君とか特に。
――新シリーズは一歩の試合ではなく、宮田の東洋太平洋フェザー級タイトルマッチからスタートしていますね
喜安さん:そこは原作の流れを忠実に追っているのでしょうがないですよね。
宍戸監督:前シリーズの続編を作る以上は原作の流れは崩せないですから。一歩で始まり、一歩で終わるというのも難しいので、そこは割り切って、一歩を取り巻く人間関係やドラマを見せていければいいなと。一歩だけでなく、回りのキャラ達の魅力を盛り立てるようにしたいと思いました。
――一歩の試合以外でも一歩にとって大切な試合が描かれていますよね。一歩がかつて戦い敗れ、一歩が尊敬する伊達英二の試合は寂しさやせつなさを感じました
宍戸監督:このシリーズで描かれる戦いは、一歩に多大な影響を与えていく試合で、特に伊達の試合は一歩へバトンを渡す意味もあって、これからの一歩にはなくてはならないエピソードの一つになっています。一歩のために、他のキャラ達の試合が用意されているし、一歩がいなくては成り立たない試合だと思います。
喜安さん:ボクシングの持つシビアさが出てますよね。キャラの魅力によって救われている部分もあれば、だからこそ切実に感じるところもあって。一歩が試合をしていなくても、実際に試合をしている選手と一歩との関係性が細かく描かれていて、宮田君だったり、伊達さんだったり、先輩の鷹村さんだったり、対戦するハンマー・ナオだったり、それぞれ違った想いがあるんですよね。試合を観戦する側で芝居をしていても楽しいし、作品に入っていけます。
●喜安さんの演技はまさに一歩!安心して任せられます!
――14話まで演じてみた感想を聞かせていただけますか?
喜安さん:自分のことについては反省しきりで……。何話録ってもダメなところはダメだなあと。一歩がそうであるように、僕も抜けているところはいつまでたっても抜けたままだなと思いながら毎回収録に臨んでおります。キャラに関しては最初に「これでいいんだ」とつかめたので、現場での活きたやり取りを画面の向こう側に伝えられるように考えながらやっています。
――喜安さんの演技を見て、監督はどう思われましたか?
宍戸監督:まさに一歩、ですね。正直言って、収録中は寝ててもいいくらい……。
喜安さん:ダメですよ!(笑)
宍戸監督:それくらい安心してお任せできる感じです。前シリーズで1年半やってきているので、今更新しいことを言わなくても皆さんのなかで『はじめの一歩』像ができているし、芝居も完成しているので、冗談抜きで寝ててもいいかなと。
喜安さん:冗談抜きですか? 本気ってことじゃないですか!(笑)
宍戸監督:もちろん現場では起きてますよ。ところどころ記憶がないところもありますが(笑)。
喜安さん:えっ?
宍戸監督:それは冗談です(笑)。でも皆さんの演技は素晴らしいです。
喜安さん:そう言っていただけるとありがたいです。
宍戸監督:こんなこと言ったらあれですけど、楽な現場だなと(笑)。
喜安さん:でも絵を作るほうは大変ですよね。動きも速いし。
宍戸監督:そちらは大変ですね。皆さんが不眠不休で頑張ってくれています。
喜安さん:一歩の試合並みに命がけで作られているんですね。そんなスタッフの皆さんの汗と努力の結晶のアニメをたくさんの方に見てほしいです。
(続く)
『はじめの一歩 New Challenger VOL.1』
2009年4月22日発売
3,990円(税込)
発売:VAP
<映像特典>
「はじめの一歩」第1シリーズ ダイジェスト 全3話(約60分)
1:鷹村との出会いからプロボクサーへ
2:vs 千堂 新人王戦
3:vs 伊達 日本タイトルマッチ
『はじめの一歩 DVD-BOX VOL.2』
2009年3月18日発売
26,250円(税込)
発売:VAP
※『はじめの一歩 DVD-BOX VOL.1』も好評発売中