神山健治監督による新たな『サイボーグ009』――『009 RE:CYBORG』島村ジョー役の宮野真守さんが作品の魅力を語る!
石ノ森章太郎氏の未完の名作『サイボーグ009』が神山健治監督の指揮のもとフル3DCGIで生まれ変わる。2012年10月27日(土)劇場公開に先立ち、アニメーション映画『009 RE:CYBORG』で主役の島村ジョー(009)を熱演した宮野真守さんへのインタビューが行われた。
――最初にオファーが来た時の率直な感想を教えて下さい。
宮野真守さん(島村ジョー(009)役/以下、宮野):歴史のある作品ですし、今回の映画でも新たに物語を構築して『サイボーグ009』を作っていくという、かなりチャレンジな作品であると思ったので、オーディションを受けられること自体とてもびっくりしましたし、嬉しかったですね。
――完成した映画を、実際にご覧になっていかがでしたか?
宮野:感動しました。アフレコの時から神山監督の作る絵の美しさと迫力に圧倒させられていました。神山監督の世界観にとても引き込まれて演じさせていただいたものに、音がついて3DCGIで完成した作品は、やはり素晴らしくてあっという間に時間が過ぎてしまいました。
CG技術を駆使しているアニメーションですが、セルルックという特殊な技法を用いているので、声をあてる時今までにない不思議な感覚がありました。滑らかな人間的な動きでありながら、表情はアニメーションで。初めて体験するアフレコの感覚でした。
――ドラマも映像も見どころがたくさんある作品ですが、宮野さんが個人的に注目して観てもらいたいと思うシーンや、セリフはありますか?
宮野:「加速装置」というセリフを言わせていただいたのが感動的でした。名セリフなので、言った自分自身が震えたというか。ジョーの歴史に自分も名を刻めたのかと思うと感慨深かったですね。
――「加速装置」というセリフは、すっとハマりましたか?
宮野:最初に言わせていただいたのが、本編より先のCMのプロモーション映像の時でした。スタッフさんと何度も話し合って、落ち着いて言うのか、張り上げて言うのか、もっとヒーロー的に言うのかをテイクを重ねながら調節して収録しました。まだ、ジョーの物語を演じる前での収録だったので、とても緊張したのを覚えています。
本編では、最初はサイボーグ戦士であった頃の記憶を失っている状態なので、そこから覚醒して大切な人を守るために加速装置を使います。大切な人を助けたいという衝動から出てくる「加速装置!」に、是非注目してみて下さい。
――『サイボーグ009』という何度も映像化されて、その度に新しい「島村ジョー」が生まれて来ましたが、今回演じる上で気をつけた点はありますか?
宮野:今回の物語"RE:CYBORG"で何を伝えたいのか。島村ジョーは何を目的として、進んでいくのか。歴史のある作品の中で、神山監督自身が新しいことにチャレンジしているので、僕も今までにないジョーになれるよう頑張ろうと思いました。
――監督の脚本は密度が高いことで有名ですが、最初に読まれたときはいかがでしたか?
宮野:最初に読んだ時に……うまく言えないのですが、テーマに掲げているものが「難しい」ことが、「嬉しかった」といいますか。
最近は、答えが簡単に用意されがちだと思うんです。
しかし、この物語は何を伝えたいのか、どこへ向かっていくべきかというのを、とても考えさせてくれる脚本でした。、「正義」は、「悪意」はどこにあるのか……。
簡単に見つからない答えだからこそ最後に迎える答えがとても多様化していくというか。それぞれの人の心にそれぞれの大切な何かが残るのではないかなと。そういうラストになっていますし、僕自身、答えを考えながら演じることが出来て幸せでしたね。
――ジョーを演じるにあたって監督からはどんな指示がありましたか?
宮野:物語の展開上、「記憶を失っているジョーと取り戻した後のジョーの違いを表現してほしい」と演出がありました。
最初は、自分の存在すら考えて悩んでしまう繊細な部分があるのですが、記憶が蘇った後には真っ直ぐに正義に向かっていける力強さを出してほしいと。やっぱりジョーは正義に向かっていくのだなと感動したし、しっかり表現していきたいと思いました。
――収録は、短い期間に集中して行われましたが、その時の現場の様子はどのような感じでしたか?
宮野:まず今回の収録が始まる前に企画や作品の世界観を監督が丁寧に説明して下さって、僕たちがどういう方向へ向かって行けばいいのかという指針を示してくれたんです。監督の方から距離を縮めて下さいました。作品作りをする上で、短い時間ながらも絆が必要なので、本当にありがたかったです。
監督は、「シリーズではないから、あっという間に終わってしまったけど、とても濃密な時間を過ごすことができたね」と言って下さいました。僕ら出演者一同、ひとつになれたのは、監督が最初に想いを伝えてくれたからだと思います。
休憩中も、作品の持っている謎をキャスト同士でディスカッションするのがとても楽しかったです。話し合いの結果を監督に投げかけたり、一つの答えの形を教えてもらったり。そういう深いやり取りが出来ていたので、短い収録期間ではありましたが、シリーズを通してやっているようなチームワークで演じられました。
――先ほど、声をあてる際に感じた不思議な感覚についてお話がありましたが、やはり苦労されましたか?
宮野:セルルックの動きに声をあてるということが、慣れるまでは不思議な感覚がありましたね。しかし役者が物語を理解してやりやすいように、リハーサルの時間を長く取って下さったり、細かくリハ―サルをやらせていただいたので、それは最初だけの驚きでした。あとは、仲間とのチームワークを信じて演じることができました。
――監督はジェット・リンク役の小野大輔さんとの掛け合いを仮編集で聞いて、今回のキャスティングを決定されたそうです。収録期間中の小野さんとのエピソードはありますか?
宮野:ジョーとジェットとして小野さんと、お芝居でガチでぶつかり合えたのがとても楽しかったです。ものすごい緊張感があって演じていてゾクゾクしました。
ジェットとの絆を取り戻せたのに、ジェットを救えなかったくやしさを抱え、神に向かって叫ぶシーンを演じたあと、小野さんが「鳥肌が立ったよ」と言ってくれたのが本当に嬉しかったです。
――今回、3DCGIで作るという技術的な面もあってジョーの髪型を始めキャラクターデザインが一新されましたが、その辺りはどのように感じられましたか?
宮野:スタイリッシュでかっこいいですし、今回の『009 RE:CYBORG』が持つテーマにマッチングしているデザインになっていて感動しました。
――非常に深い作品なので、あえてライトな質問をひとつ。9人いるゼロゼロナンバーサイボーグの中で、もしどれかひとつ能力がもらえるとしたら、誰の能力が欲しいですか?
宮野:やはり加速装置ですね。自分が使ってみてとても便利だったので(笑)。宮野真守にも欲しいです。特殊な服が必要になるかも知れないですけどマッハで動けるので、遅刻も恐れなくていいですね(笑)。
――ジョー以外に演じてみたいキャラクターはいますか?
宮野:ジョーであることに誇りをもってやらせて頂いているので、ほかのキャラクターをというのは考えにくいですけれど、無理なところでフランソワーズとお答えしておきます(笑)。あのセクシーさが欲しいですしね。
――では、最後に映画の公開を楽しみにしている方々へメッセージをお願いします。
宮野:"RE:CYBORG"というタイトルに相応しく新しいことにチャレンジしている映画です。それは、ストーリーもそうだし、映像としてもそうだし、この作品でしか観られない『サイボーグ009』があると思います。
そして正義とはなにか、悪意はどこにあるのかということを、見た人がそれぞれに感じられるテーマがあります。ジョーたちが戦う姿から、少しだけでも自分が生きている世界を見つめ直してもらえたら、これからの人生で何かちょっとした発見につながるのではないかなと思います。是非、じっくりと観て頂ければ嬉しいです。
【作品概要】
映画『009 RE:CYBORG』
全国公開中(2D/3D)
<STAFF>
原作: 石ノ森章太郎
脚本・監督:神山健治
音楽:川井憲次
キャラクターデザイナー:麻生我等
絵コンテ:青木康浩 林祐一郎
アニメーションディレクター:鈴木大介
演出:柿本広大
リードアニメーター:植高正典
美術設定:渡部 隆 滝口比呂志
美術監督:竹田悠介
色彩設計:片山由美子
撮影監督:上薗隆浩
サウンドデザイナー:トム・マイヤーズ
ラインディレクター:川端玲奈
制作プロデューサー:松浦裕暁
製作プロデューサー:石川光久
プロデューサー:石井朋彦
共同制作:Production I.G / サンジゲン
配給:Production I.G / ティ・ジョイ
宣伝:STEVE N' STEVEN / プレシディオ
<CAST>
サイボーグ001(イワン・ウイスキー):玉川砂記子
サイボーグ002(ジェット・リンク):小野大輔
サイボーグ003(フランソワーズ・アルヌール): 斎藤千和
サイボーグ004(アルベルト・ハインリヒ):大川透
サイボーグ005(ジェロニモ・ジュニア):丹沢晃之
サイボーグ006(張々湖):増岡太郎
サイボーグ007(グレート・ブリテン):吉野裕行
サイボーグ008(ピュンマ):杉山紀彰
サイボーグ009(島村ジョー):宮野真守
<STORY>
2013年、世界各地の大都市で高層ビルが崩壊する同時多発テロが次々に発生した。誰の意思で計画されたかも分からない無差別テロは人々を不安とパニックに陥れた。
そんな時、かつて世界が危機に陥るたびに現れ人々を救った9人のサイボーグ戦士が、ギルモア博士のよびかけによって再び集結しようとしていた。
サイボーグのリーダーである009こと島村ジョーは、過去の記憶をリセットされ、30年間高校生活を繰り返していた。ジョーの記憶が呼び覚まされた時、ゼロゼロナンバーサイボーグの新たな戦いが始まる。