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- 逆井マリ
- 神奈川県横浜市出身。音楽フリーペーパー編集部を経て、フリーのライターとしてインタビュー等の執筆を手掛ける。
ソロ&声優としても活躍中の南條愛乃さん(vo)と、コンポーザー&プロデューサーの八木沼悟志さん(key)からなる人気ユニット、fripSideが10周年記念アルバム『Decade』のリリースを記念したプレミアムワンマンライヴ「fripSide 10th Anniversary Live 2012」東京公演を2012年12月22日(土)に新木場STUDIO COASTで開催。事前にアナウンスされていた通りこの日はスペシャルゲスト=『Decade』にもゲスト参加した第一期ボーカル・naoさんがステージに登場するとだけあって、場内は異様な熱気が終始漂っていた。
18:00──満員のファン2000人の大歓声が響くなか、バックバンドを引き連れて真っ白なドレスに身を包んだ南條さんと、軍服風のロング・コートを着込んだ八木沼さんがステージに上がり、ニューアルバムに収録されたエネルギッシュな『grievous distance』『fortissimo-from insanity affection-』で祝祭の幕を開ける。序盤からフロアが一種異様な盛り上がりを見せるなか、「こんばんは~! fripSideです!“fripSide 10th Anniversary Live”へようこそ~!」と声高々に南條さん。
八木沼さんは「(場内の熱気が)すっげ~な! 前のほう大丈夫? ちょっと後ろに下がってあげて」とスタンディングの観客に気を配りながらも「この日を待ちにまったよ、オレ!」と興奮を隠せない様子だ。そして「今日もマナーを守って全力で楽しみましょう、ヨロシク!」と告げ、南條さんが作詞を手掛けた『endless memory ~refrain as Da Capo~』、『future gazer』を挟み、八木沼さんが横浜の海を眺めながら作ったという『whitebird』という、2曲のロマンチックなウィンター・バラードを披露。
フロアに温かな感動を運び、南條さんはそのままバック・ステージへ……。音が徐々にフェード・アウトしていくなか、静寂を突き破るかのごとくドラマーの「1.2.3.4!」というカウントが鳴り響き、轟音とともに「こんばんは、naoです! 盛り上がってるか~!?」と黒のドレスに身を包んだnaoさんが登場! 「おかえりー!」という大歓声に迎えられて、「まだまだ盛り上がっていこー!」と当時を彷彿させるようなエネルギッシュなハイトーン・ヴォイスで『re:ceptivity』を熱唱し、右肩上がりに一体感を高めていくのだった。
そんなnaoさんの勢いを引き継ぐかのように、今度は白のワンピースに着替えた南條さんが『trusty snow』『infinite orbit』を激しくパフォーム。続いてアコースティック・バージョンの『everlasting』でしっとりとさせたかと思ったら、第一期のカヴァー曲『come to mind』、疾走感溢れる『Heaven is a Place on Earth』、ウィンター・バラード『a silent voice』で、ゴールドの衣装にチェンジした南條さんがダンサーとともにキュートなダンスを初披露(!)。
多彩な曲調に合わせてステージングをクルクルと変化させながらも、ブレイクでは即興ソングを披露したり(ちなみにタイトルは『強引に終わらせるうた』だそうです・笑)、最近メンバー内で流行っているという某キャラクターのマネで和ませたり、八木沼さんが“まわって”コールに応えたりと、ユーモアを忘れない──中盤で見せたこの充実感こそが、10周年を迎えたfripSideの“いま”を象徴しているように感じた。
一息ついて「……躍らせていただきましたけど、大丈夫だったでしょうか……?」と不安そうに南條さんが問いかける。もちろん客席からは拍手喝采だ。「よかった」と嬉しそうな表情を見せたのもつかの間、声のトーンを落として「楽しい時間はあっという間……」と終わりの時間が近づいていることを告げる。
寂しげな表情を浮かべながらも語気を強め「まだまだ盛り上がれますか!? まだまだ汗かいても大丈夫ですか!? 楽しい思い出作りたいですか!? 最後まで一緒に盛り上がってくださーい!」と力強くシャウトし『way to answer』『only my railgun』『LEVEL5 -judgelight-』とキラー・チューンを惜しみなく放出! 大合唱が沸き起こり、湧き立つような熱狂でこの日のハイライトを刻んだのだった。
割れんばかりの歓声に応えたアンコールは『Hesitation snow』からスタート(八木沼さんはギタリストとして登場!)。黒の衣装に身を包んだ南條さんが感謝の気持ちを伝えたあとに「本編に出てくれたnaoちゃんをみんなで呼びたいと思うんですが……準備はいいでしょうか? せーのっ!」と声をかけ、一斉に「naoちゃーん!」と叫ぶ。すると、白の衣装を着たnaoさんが登場し盛大な拍手が沸いたのだった。
そのまま当時の話になり「naoちゃんは一期のときに尽力してくれて。ホントに俺のワガママによく付き合ってくれたなと」と苦笑しながら八木沼さん。そして続ける。「……っていうかさ、(会場に来ている人たちも)それぞれ10年間あったと思うんだけどさ、今日この場にみんなで集まれてるってコトが良いと思いませんか? fripSideは次の10年に向けて頑張ります。2013年はやるよ、やる。めちゃんこやる! だから期待してください」とその決意を伝え、3人で『message(version2)』『Decade』を届ける。
<繋がりあう/温もりから/明日も歌が生まれていく><痛みさえもチカラにして/今日も奏で続ける/君とともに>(『Decade』より)──11年目への覚悟すらも感じさせる楽曲でオーディエンスと共鳴する。なんて輝かしいクライマックスなんだろう。
……と思いきや、これだけで終わらないのがfripSide。今回もやってくれました。なんと曲の終盤も終盤、ステージ横からいきなり『Decade』のMVに出演していたルー大柴氏が「やぶからスティックにごめんなさ~い!」と登場し場内大フィーバー(笑)! 曲が終わると「10周年、ビューティフルですね! サイコウなひとたちとトゥギャザーできて、アイムソーグラッドでございます!」と“ルー節”でお祝いし、八木沼さんがルーさんに「新木場のコトを英語にすると?」と問うと「ニュー木場でいいんです!」と言い放ち2000人が大爆笑。笑顔でフィナーレを飾ったのだった。最後は全員で挨拶し、八木沼さんが締め。「来年もいっぱいライヴをやっていきたいね。……行くぞ、武道館!」。2013年も期待してます!
>> fripSide OFFICIAL SITE
[取材&文・逆井マリ]
神奈川県横浜市出身。既婚、一児の母。音楽フリーペーパー編集部を経て、フリーのライターとしてインタビュー等の執筆を手掛ける。パンクからアニソン、2.5次元舞台、ゲーム、グルメ、教育まで、ジャンル問わず、自分の“好き”を必死に追いかけ中。はじめてのめり込んだアニメは『楽しいムーミン一家』。インタビューでリアルな心情や生き方を聞くことが好き。