繰り返し観る度に新しい発見が! TVアニメ『DRAMAtical Murder』監督・三浦和也さん×蒼葉役・私市淳さん対談
7月から放送をスタートしたTVアニメ『DRAMAtical Murder[ドラマティカルマーダー]』。日本列島の南西に浮かぶ「碧島」で暮らす主人公・蒼葉。島の縄張り争いをする「リブスティーズ」、電脳オンラインゲーム「ライム」両方の戦いに次第に巻き込まれていく。その中で出会う様々な人物たちと蒼葉は複雑な関係を築いていくのだが……。
今回はアニメイトTV特別企画として、三浦和也監督と蒼葉役・私市淳さんのスペシャル対談が実現! 笑いも交えつつ、ほんわかとした雰囲気でじっくり語っていただいたお話をたっぷりお届けします。
●キャラクター描写に力を入れたアニメ制作の現場
――『DRAMAtical Murder』のTVアニメ化に際し、三浦監督はどのような点を意識して制作を始めたのでしょうか?
三浦和也監督(以下、三浦監督):どのように作ろうか模索している時に、『DRAMAtical Murder』は主人公の蒼葉の物語にしたいと思ったんです。なので、蒼葉を中心にやっていこうと決めて進めていきました。
――制作に入られてからはどのくらい?
三浦監督:プロデューサーによると脚本打ち合わせが1年くらいあったようなので長かったのかもしれません。シナリオの制作期間は少し長かったのかもしれませんが、アニメ自体の制作としては普通だったと思います。シナリオがしっかりあったので、序盤は時間を使って僕が絵コンテを描くことができました。
――第1話から監督自ら絵コンテを担当されていて。
三浦監督:今後もまだまだ担当します。
――ゲーム原作を手掛けた「ニトロプラスキラル」からのご意向などはどのように取り入れていったのでしょうか?
三浦監督:やっぱりキャラクター描写ですね。キャラクターの感情面をしっかり表現するよう気を付けていました。脚本打ち合わせの席にニトロプラスキラルさんも同席していただいて、その場で意見を言ってくださって。最初は僕もドキドキしていましたが、僕自身ゲームをやって自分なりに理解していたので、多少の解釈の違いはあれ、大筋は合っていたようでホッとしました。
――この作品自体の魅力はどの部分に感じましたか?
三浦監督:ただBL作品だと言うだけでなく、しっかりとした世界観とキャラクターでかなり作り込まれていて、どこを観ても楽しめる作品だと感じました。物語を追えば追うほど惹き込まれる魅力があります。
――キャラクターを描写するうえで気にかけた点はどこでしたか?
三浦監督:どの作品でも気にするところですが、キャラクターの表情ですね。特に一番見るのは”目”だと思うんです。目線の送り方、アイコンタクト等は重要なところかなと思って気にかけています。
●ファーストシーンで「いい声」披露の蒼葉に冷や汗
――三浦監督と私市さんは『DRAMAtical Murder』が初対面だったのでしょうか?
三浦監督:会ってなかったですよね?
私市淳さん(以下、私市):はい。僕ら演者側って、監督さんたち制作スタッフに会う機会がなかなかないんですよね。
――私市さんから見た蒼葉というキャラクターはどんな印象ですか?
私市:普段の蒼葉はラフな感じで、やる気があるんだかないんだかわからない。でもここぞという時には怖いんだぜってとこもある。第1話でも、ミズキに「コイツに絡むと顎砕かれるぞ。キツネの踵落としって必殺技があるんだ」って言われていましたしね。
――第1話の後半で出てくるライム(仮想世界を舞台にした電脳ゲーム)のシーンで声がガラリと変わりますよね。
私市:あと、先ほど監督もおっしゃっていた通り、目つきも変わって。アニメで初めてこの作品を知った方からは「二重人格か?」という声もありましたが……真相は今後の放送をお楽しみに(笑)。いろんな蒼葉をどう表現していこうか悩みながら、大事に扱っていかないとと思って演じています。
――1シーンごとにかなり気をつかいそうですよね。
私市:そうなんですよ。だから僕もわかんない時があるんですよね。そういう時は……聞きます(笑)! PS Vita®版では自分1人で収録しているので、わからなくなってもその場で聞いてすぐにもう1回できるし、自分の間でできる。ライターさんもスタジオにいらっしゃるので、キャラクターがまだ固定できていない部分でも話しながらじっくりできるんですよね。だけど、アニメの場合はテンポが速い。自分の間尺でしゃべれないので、そこで通常の蒼葉を表現する時には今も悩みながら考えながら演じています。微妙なニュアンスを出すのには苦労していますね。第1話の台本をもらった時から悩みましたもん。
三浦監督:というのは?
私市:頭のシーンで蒼葉がお客さんと電話でしゃべっているんですけど、声! お客さんに声を褒められている描写があって、第1話からしてハードル高いなと(笑)。蒼葉は声に魅力があって人を惹きつけるという設定があるんですけど、「これに対して僕はどうすればいいんでしょう?」って最初にライターさんに投げた質問でした。一番地声に近い部分でやらせてはもらっていますけれど、蒼葉のそういう設定もあって、だからこそ声の質・張りを大事にやっています。
●私市さんの蒼葉に三浦監督自身も観客に!?
――監督から見た、私市さん演じる蒼葉の魅力とは?
三浦監督:特に序盤はストーリー的にもガッと前に突き進むタイプではないですが、とにかくしゃべる量が多いんです。そこは申し訳ない(笑)。実は先ほど私市さんが言ったことを、印象に残ったシーンとして僕もメモしていたんですよ。第1話のファーストシーン。「いい声」ってどうやるんだろう(笑)。
私市:(笑)。
三浦監督:コントロールする側で難しいと思うのは、蒼葉自身は序盤何もしないので困るんですよ。
私市:本当にそうですね(笑)。
三浦監督:そんな中でも私市さんはいろいろなアプローチをしながらキャラクターを表現してくれているので、大変でもあり、ありがたいと思いつつ見ています。……でもアニメ的にはもっといろんな表現があったほうがやりやすいですか?
私市:いえいえ全然! 蒼葉なりの行動だと僕も思います。
三浦監督:ですよね。
私市:たくさん喋っていますし、周りでいろんなタイプのキャラクターが動いてくれていますから。蒼葉自身が動いて見せるというよりも、他のキャラクターの接し方や距離感で蒼葉の加減が自然に変わってくるんです。
三浦監督:それはありますよね。第1話でも紅雀とミズキとでは、話している時の雰囲気がまるで違う。おもしろいです。今後もそこを見比べてもらえるとおもしろいと思いますよ。
――蒼葉のシーンで印象に残っているのは?
三浦監督:序盤だとやはり第1話。さっきの話の冒頭の「いい声」もそうですが、ラストのほうに出てきた雰囲気が違う蒼葉の声の変わり加減が印象に残っています。アフレコを見ながら逆に僕が楽しんでしまっています(笑)。
私市:あの蒼葉は今後も見逃せないですよね! ゲームの収録の時からそうなんですが、あの蒼葉、僕は演じるのが不得手なんです……。ああいう低い声がなかなか出なくって(笑)。低い声での芝居が安定しない。
三浦監督:そうなんですか? 苦手なようには聴こえませんでしたが。
私市:ちょっと頑張ると声がひっくり返ってしまうんです。だから、低い声で表現をつけるのが困惑していて。アニメだと特にみんなと一緒にアフレコをするので、基本的に一発勝負。自分の加減でできないですからね。勢いでやればできるけど、そうすると画とパクが合わなくなってしまう。毎回悩んでいます。
●私市さんから見た三浦監督の印象は、温和な○○!
――それでは、私市さんにも序盤で印象に残っているシーンについてお聞きします。
私市:第2話はクリアもしゃべったんですよね。僕はクリアの登場シーンが好きです。上から降ってきてドーン(笑)! 『平凡』(蒼葉がバイトしているジャンクショップ)の前で騒いでね。クリアは突飛なところがあるキャラクターなので、「なんだ、コイツ!?」というインパクトはあります。でもクリアと蒼葉のやり取りは漫才みたいになるのでおもしろいです。
三浦監督:クリアとのやり取りも結局、裏があるので……。
私市:そうなんですよね。なぜクリアはあのような行動をしたのか!? この作品のおもしろいところって、蒼葉だけでなく、紅雀、クリア、ノイズ、そしてミンクも何か裏がある。裏があるからこそ、今、蒼葉と接している。その謎が今後の放送で解明していく……のであろう!
三浦監督:(笑)。
私市:それがはたして12話の中に納まりきるのか!?
三浦監督:最終的には、彼らとの関係性の中で蒼葉がどうなるのか? というところがこの作品の物語として楽しいところなので、毎話見逃さないでもらいたいですね。
私市:第2話はあと、タエさんの家でご飯食べたんだった。素敵なおばあちゃんなので、今後活躍する回にご期待ください(笑)! 第3話はなんでしたっけ?
三浦監督:ノイズが蒼葉の部屋に侵入してきた回でした。
私市:そうでした! 蒼葉の部屋がとんでもないことになった回(笑)。ようやく蒼葉の前にみんな揃った回でした。みんなでドーナッツ食べたりして…。 あっ! ミンクだけいないのか。彼がいても、喋らないもんな(笑)。アニメだけ観ている人には、ミンクだけまだ謎の存在ですよね。どこまでいっても喋りませんから(笑)。
――私市さんから見た三浦監督の印象はいかがですか?
私市:アフレコスタジオのガラスの奥の方で、スタッフの皆さんと「どうする?」という感じに話をしているのが印象に残っています。見た感じ、すごく温和そうじゃないですか。なので、「怖い」という印象はなく、話しやすく接しやすいです。アニメの制作会議には僕ら演者は関わらないのでわからないですけど、裏でいろいろ試行錯誤されている中でもきっと柔軟に対応されているんだろうなと感じています。
――蒼葉について監督から私市さんへ何か要望はあったのでしょうか?
三浦監督:キャストの方々はCS版ゲームも収録されていたので、『DRAMAtical Murder』については、よく知っているし、アニメは基本的にはゲームを忠実に描いているので、声や芝居関係に関しては僕からは何もなかったですね。音響監督さんとのやり取りの中で少し調整を加えたぐらいでした。むしろ自由にやってもらってもいいぐらい。そのぐらい勢いがあったほうがいいんじゃないかな(笑)。
●隣に蒼葉たちがいるような没入感を大事に描いたアニメ
――監督が演出面で大切にした部分についてもお聞かせください。
三浦監督:原作ファンもアニメから入った方もそうですが、没入感を大切にしたいので、その世界に、観ている人がいかに入れるかを心がけています。観ている人の隣で蒼葉たちが喋っているのを感じてもらえるようといいなと思っています。
私市:確かに蒼葉とタエさんの家の食卓シーンとか観ていると、「昭和~」ってな感じでホッとします。ライム空間や出て来るキャラクターを見るとトンデモない世界だと思われるかもしれませんけど、蒼葉たちが住んでいる家は下町な感じですもんね(笑)。その辺のギャップがおもしろい。蓮の声自体がまずギャップ(笑)。
――蒼葉は少しずつ成長していって、その結果変化するキャラクターではなく、すでに様々なものを抱えているものがあって、それを少しずつ見せていくタイプですよね。
私市:すごい成長や変化を遂げるキャラクターではないけれど、蒼葉は人との繋がりでいろんな姿を見せていくんです。最初は知り合いではなくても仲良くなっていったり。人によって付き合い方・接し方が違うので、その辺のニュアンスが僕の芝居でも伝えられていたらいいんですけど、アニメではまだより相手を知っていく途中過程なので、今後の課題でもあります。
――いよいよ登場人物も出そろってきたところで、今後の見どころをお聞かせください!
三浦監督:監督としては正直「全部!」と言うしかないのですけど(笑)。意味のないカットは作っていません。「見逃すとソンしちゃうよ」というところは多々あります。かつ、横目で流し見てもわかるようには作ってありますけどね(笑)。ちゃんと観ていただければ、とても楽しめるように作っています。5月に第1話の先行上映会があった時にクリア役の中澤まさともさんにも、「ここにあのカットがあるのはそういうことなのか!」と気づいてもらいました(笑)。台詞も聴き逃しのないように、じっくり観てもらって、一度全話観終わった後にもう一度観ると、いろんな発見がありますよね?
私市:いろんな伏線がすでにアチコチに散りばめられていますからね。
三浦監督:と言っても僕が考えたわけではなくて、原作通りなんですけどね(笑)。
私市:それは監督が上手く映像としてアニメならではの見せ方をしてくれていますから。
三浦監督:後は、蒼葉がこの後どう変わっていくのか? 変わらないのか? もしくは……死んじゃうのか?
私市:ええ~!? 死なないでくれ~!!
三浦監督:(笑)。今後も楽しんで観ていただければ嬉しいですね。キャラクターや物語はもちろん見どころなんですが、大きく関わってくる音楽にも注目してもらいたいですよね。オープニングやエンディング曲は非常に電脳チックなサウンドになっています。今後、エンディングにもおもしろい変化があるかも!?
私市:イメージソングミニアルバム(仮)も出るんですよね? サントラもBlu-rayボックスに収録されるらしいので、Blu-rayで本編を繰り返し観れるし、更にもう1話オマケが付いていて、お得! 映像も綺麗だし、音楽もカッコイイし、演じているみんなも意気込みたっぷりなので、皆さんも一緒に駆け抜けていってほしいなと思います。
――ありがとうございました!
[取材&文・磯貝綾子]
■テレビアニメ『DRAMAtical Murder[ドラマティカルマーダー])』
【ON AIR】
テレビ東京 7月6日スタート 毎週(日)深夜1:35~
テレビ大阪 7月11日スタート 毎週(金)深夜2:40~
テレビ愛知 7月7日スタート 毎週(月)深夜3:05~
※テレビ東京での第1話は深夜1:40~の放送となります。
※放送時間は変更になる場合があります。
AT-X 7月12日スタート 毎週(土)夕方6:00~
リピート放送:毎週(月)朝9:00~
毎週(水)深夜3:00~
毎週(金)午後3:00~
【STAFF】
原作:Nitro+CHiRAL
製作:DRAMAtical Murder製作委員会
監督:三浦和也
シリーズ構成:待田堂子×淵井 鏑(ニトロプラス)
脚本:待田堂子、関根聡子
キャラクター原案:ほにゃらら(ニトロプラス)
キャラクターデザイン:番 由紀子
サブキャラクターデザイン:岩永悦宜
総作画監督:番 由紀子、小峰正頼
色彩設計:大塚奈津子
美術監督:永吉幸樹(ヘッド・ワークス)
撮影監修:大山佳久(Assez Finaud Fabric.)
撮影監督:久野利和(Assez Finaud Fabric.)
3DCGプロデューサー:井野元英ニ(オレンジ)
3DCGディレクター:鈴木正史(オレンジ)
編集:高橋 歩(ジェイ・フィルム)
プロップデザイン:森岡賢一
音楽:林 ゆうき
音楽制作:DIVE II entertainment
音響監督:飯田里樹
音響効果:和田俊也
音響制作:ダックスプロダクション
アニメーション制作:NAZ
オープニングテーマ:GOATBED「SLIP ON THE PUMPS」
オープニングテーマ制作協力:GEORIDE
【CAST】
蒼葉(CV:私市 淳)
紅雀(CV:高橋広樹)
ノイズ(CV:日野 聡)
ミンク(CV:松田健一郎)
クリア(CV:中澤まさとも)
蓮(CV:竹内良太)
ミズキ(CV:高橋研二)
ウイルス(CV:間島淳司)
トリップ(CV:樋口智透)
他
【STORY】
主人公・蒼葉は、日本列島の南西に位置する碧島で、ジャンクショップ「平凡」でアルバイトをしながら、祖母のタエと2人で暮らしていた。島では肉弾戦での縄張り争いを繰り広げる「リブスティーズ」、仮想空間でバトルを行う電脳オンラインゲーム「ライム」が流行していた。蒼葉はそのどちらにも参加せず、日々を過ごしていたが、ある日、突然に強制的にライムバトルに引きずり込まれてしまうのだった――。
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