『映画 仮面ライダーゴースト』公開記念ミスター平成ライダー高岩成二さんインタビュー <前編>ーー 「仮面ライダーは“僕”そのものです」
今年で45周年を迎えた「仮面ライダー」シリーズの劇場版最新作『劇場版 仮面ライダーゴースト 100の眼魂とゴースト運命の瞬間』が2016年8月6日(土)に公開となります。(同時上映は、今年で40作目となる「スーパー戦隊」シリーズの『劇場版 動物戦隊ジュウオウジャードキドキサーカスパニック!』)
今作は15人の英雄の力を借りて戦う仮面ライダーゴースト/天空寺タケル(演:西銘駿さん)と仮面ライダーダークゴーストが、全世界の命を懸けた激しい戦いを描いた作品。そんなゴーストの激しいアクションを実現させる立役者がスーツアクターの高岩成二さん。"変身後"のキャラクターを演じる高岩さんは、変身前との一体感や複数のキャラクターの演じ分けで話題を集める注目のスーツアクター。『仮面ライダーアギト』(2001年)以降の15作品で主役ライダーを演じ続ける高岩さんに、シリーズが45周年をむかえるこのタイミングでインタビューを実施しました。声優ファンには、関俊彦さんが声を担当した『仮面ライダー電王』のモモタロスといえば、分かるでしょうか。
そんな高岩さんに、映画最新作から演技の苦労話などをお聞きし、<前編><後編>の2回にわたってお届けします。<前編>では最新作『仮面ライダーゴースト』を中心に、スーツアクターを務める際の心構えを伺いました。
表情がない面芝居で感情を伝える方法とは?
――映画とテレビの撮影とで異なる点や苦労した点はありましたか?
高岩成二さん(以下、高岩):撮影自体はテレビと並行して行っていたので、演じることに関して映画だから特別なことは意識していなかったですね。ですが、テレビでは出来ない場所での撮影やスケールの違うアクションには挑戦させていただきましたね。今回ですと、英雄が住む村ということで「江戸東京たてもの園」に初めて伺いました。アクション面ではとにかく足場が良いところを探してするようにしてます。ただ、監督に"岩場でやって"と言われてしまったら従うしかないので、僕にできるのはその場所で安全にアクションが出来るようこっそりと耕すことくらいですね(笑)
――15人の英雄の力で戦う仮面ライダーゴースト/天空寺タケル(演:西銘駿さん)のキャラクターは作る上で意識していることはありますか?
高岩:タケルは18歳の少年ですが、"ゴーストハンターの父がいる"という設定から恐らく訓練は受けていたんじゃないかなと考えてみました。行きずりで戦うことになってしまったので動きも最初はおぼつかなくしていたんですが、話が進むにつれて戦い方が定まっていきました。
――タケルが戦っている雰囲気を出すために取り入れた動きはありますか?
高岩:僕がタケルをイメージして取り入れた動きは拳法ですね。そうなった理由はタケルがお寺に住んでいるので少林寺拳法かなと単純に(笑) イップ・マン(ブルース・リーの師匠にあたる人物)の詠春拳をベースにして、僕の知っている限りの拳法を混ぜた、敵の攻撃を受け流すスタイルがメインになっています。それはタケル役の西銘にも伝えていて、構えの指導もしたりして一緒にキャラクターを作っていきました。
――劇場版でも英雄たちの力を借りて戦い、その度に見事に演じ分けられていたのが印象的でした。それぞれの英雄の動きにはどのようなインスピレーションが加えられているのでしょうか?
高岩:ゴーストは『仮面ライダー電王』(2007年)のような憑依ではなく、あくまで"力を借りて戦っている"だけなんです。ムサシ魂(宮本武蔵)なら二天一流(二刀流)を勉強して構えを取り入れてみてはいるんですが、モチーフを動きで再現してしまうと映像的には憑依になってしまうんですよね。
かといってタケルのヒョロっとした感じが出過ぎてしまうとベンケイ魂(弁慶)やゴエモン魂(石川五右衛門)になったときに、見ている子供たちが弁慶が弱いと勘違いしちゃうかもしれない。だから、タケルとしての部分は西銘に任せて、あえて少しオーバーな演技をしています。ゴエモン魂では歌舞伎っぽい動きで表現してみたりですね。要所要所で動きを取り入れることで"タケルが力を借りている"という説得力を持たせています。
――映画では限定フォームであるダーウィン魂(ダーウィン)が登場しましたが、高岩さんには"ダーウィンはこういう人物"というイメージはあったのでしょうか?
高岩:そもそもダーウィンってどんな人なのか分からないじゃないですか(笑) "進化論"の人だということは知っていても、人物像が掴めないので動きのイメージも出来なかったですね。幸いなことに、そんなに動くシーンがあったわけではないので助かりました(笑) もし芝居をやってくれとなったら、ちょっと困ったかもしれないですね。
スーツアクターがキャストオフして素顔で出演! その心境は?
――テレビでは本作の敵である眼魔世界の幹部・ジャイロとして素顔で出演されていて驚いた視聴者も多かったと思います。出演のオファーは早い段階から決まっていたんですか?
高岩:それはですね、ロケ先で助監督が誰かに電話してたんですよ。その電話で"高岩さんの足のサイズですか? 26.5ですね"というのが聞こえてきて。僕はてっきりゴーストの新しいフォームでも出て来るのかと思って聞いてみたら、"いや、顔出しです"とその場で出演を知りました(笑)
――テレビの38話、ジャイロがタケルと戦うシーンでは、ゴーストとゴーストが戦っているという、ある意味で夢の対戦カードとなっていましたね。
高岩:あの38話を担当されたのが坂本浩一監督(変身する前の生身での戦いを多く撮ることで有名)だったので、"せっかくだし戦ってみようか?"という話になり、いやぁフルボッコにしてしまいましたね(笑) スーツを着ていない分生身の方が動きやすかったんですが、やっぱり照れくささも感じました。
『ビーファイターカブト』(1996年)のゲンジ(フリオ・リベラ役)以来、ここ何十年と顔出しはしていなかったですから。これまでも、その時々、監督のご厚意で、エキストラとして顔出しで出させていただいたことはありましたが、ジャイロのように名前をもらって映ったのは本当に久しぶりでしたからね。
"ミスター平成ライダー"と呼ばれるまで
――『仮面ライダーアギト』(2001年)で初めて主役ライダーを演じられましたが、仮面ライダーという作品を演じることになり戸惑いはありましたか?
高岩:それまで演じてきた「スーパー戦隊」シリーズはまだフィルム撮影だったんですけど、復活した「仮面ライダー」シリーズはいきなりビデオ撮影だったので、環境の変化の戸惑いはありました。芝居でも、スーパー戦隊では小さい子供たちにもわかるようなストーリーなので、僕たち(スーツアクター)もデフォルメされた分かりやすいお芝居を求められるんです。
初めてアギトを演じたときは"表現がスーパー戦隊っぽいですね"と監督に言われてしまい、仮面ライダーではより濃いドラマを表現しなくてはいけないんだと実感しました。そこからですね。"一人の役者として仮面ライダーを演じてみよう"と思ったのは。どの程度まで使われるかはわからないけど、思い切っていろんな挑戦をしてみたんです。ありがたいことにそれが受け入れてもらえたんですよね。
――その結果として仮面ライダーアギト/津上翔一(演:賀集利樹さん)や仮面ライダー龍騎/城戸真司(演:須賀貴匡さん)などの、キャラクターとの一体感が生まれていると思います。
高岩:アギトは記憶をなくしている設定だったので、変身後にキャラクターを意識しないようにしていました。だって何も覚えていないってことは、何者でもないわけですから。反応も薄くて、当たり前のように怪人をやっつけて去っていくイメージですね。反対に龍騎はジャーナリストの普通の青年なので、若さと人間臭さをたくさん出しています。人を探してるときに、見つけたら普通は一度止まるのをそのまま通り過ぎてみたり、ちょっと馬鹿っぽいですよね。相方のナイトが正反対のクールなキャラクターだったので、彼を立てるためにオーバーな動きを意識していました。
――仮面越しでも表情が見えるように感じることが多いですが、出し方のコツというのはあるのでしょうか?
高岩:マスクをつけているので、普通の俳優さんがやるような目や眉を動かして感情を表現することは当然出来ないんです。ただ、普通の俳優のような演技に近づけたい、というのはこの仕事を始めたころからずっと思っていることですね。
例えば、マスクを正面から見た角度から、ほんのちょっと動かすだけで印象が変わるんです。(動作を交えながら、)怒っている(少し顎を引く)、悩んだり落ち込んでいる(顎を大きく引く)、気配を感じる(微かに後ろを向く)、強い気配を感じる(勢いをつけて振り向く)といった感じです。数センチ数ミリでも違いが大きく出るので、毎回演じるライダーに合わせて、マスクをつけた状態がどう映っているのかを考えるようにして、どうしたら良いものになるかを常に探っています。
仮面ライダーとは"僕"自身
――長年仮面ライダーを演じてこられて、高岩さんにとって「仮面ライダー」はどういった存在になっていますか?
高岩:"僕"そのものですね。僕も小さい頃に見ていた口なんで、"子供たちに夢を与える"と答えたいですが、とてもそんなおこがましいことは言えません。仮面ライダーってスーパー戦隊とは違うオンリーワンのヒーローなんです。龍騎には13人の仮面ライダーがいて、ゴーストの映画にもいろんな仮面ライダーが出てきましたが、主役のライダーは1人だけですから。そんな主役のライダーをやらせていただいているので、自分の看板となるタイトルだというプレッシャーは何作演じてもつきまとっているんです。
見ている子供たちにとって仮面ライダーというのは、西銘や佐藤健、福士蒼汰たちが変身した姿だと思ってるはずなんですよ。でも僕にしたら、演じてきた仮面ライダーは全部"僕"なんです。だから、僕にとって仮面ライダーとは何かと言われたら"高岩成二"そのものですね。
<後編>では複数のキャラクターの演じ分けで話題となった『仮面ライダー電王』(2007年)や、公開されたばかりの新ライダー『仮面ライダーエグゼイド』について伺っています。"ミスター平成ライダー"と呼ばれる高岩さんには、エグゼイドはどのように映ったのか? ご期待ください!
[取材・文/原直輝]
<公開情報>
『劇場版 仮面ライダーゴースト 100の眼魂とゴースト運命の瞬間』
『劇場版 動物戦隊ジュウオウジャー ドキドキ サーカス パニック!』
2016年8月6日(土) ROADSHOW!
変身せよ、ゴースト! 力を合わせろ、ジュウオウジャー! この星の未来のため、輝く生命を守り抜け!!
命、燃やすぜ! 歴史上の英雄・偉人たちと心をシンクロさせ、人々の思いを未来へとつなげるために激しい戦いを繰り広げている仮面ライダーゴースト。
本能覚醒! 地球で暮らす、すべての生命を守るため、動物が持つ野性のパワーを駆使して宇宙からの侵略者と戦う動物戦隊ジュウオウジャー。
2016年、夏――日本が世界に誇る2大ヒーローシリーズの最新劇場版がやって来る。生誕45周年の“仮面ライダー”、そして通算40作を迎えた“スーパー戦隊”。ここに、記念すべき<スーパーヒーローイヤー>に贈る、ヒーローたちの熱き戦いを見逃すな!
>>劇場版『動物戦隊ジュウオウジャー』&『仮面ライダーゴースト』公式サイト
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ミスター平成ライダー高岩成二さんへインタビュー<前編>
後編はこちら。
『映画 仮面ライダーゴースト』公開記念ミスター平成ライダー高岩成二さんインタビュー <後編>ーー スーツアクター高岩さんの仮面ライダーエグゼイドの第一印象は?