夏アニメ『将国のアルタイル』主演・村瀬歩さんとマフムートとの共通点とは/声優インタビュー
カトウコトノ先生による人気コミック(講談社「月刊少年シリウス」にて連載中)を原作とし、2017年7月7日(金) 深夜より、MBS/TBS“アニメイズム”枠ほかにて、放映されるTVアニメ『将国のアルタイル』。独創的な世界観と洗練されたキャラクターたちが登場し、戦略とアクションが織り成すストーリーとして、話題を集めています。
物語の舞台は、将軍(パシャ)と呼ばれる為政者たちの治める草原と砂漠の国・トルキエ将国。12年前、隣国・バルトライン帝国との戦争で母を失ったマフムートは、平和な国にしたいと願い、トルキエ史上最年少で将軍となる。しかし、交易で得た巨万の富をもって安寧を取り戻したトルキエに対して、再び帝国の侵略が始まる。犬鷲・イスカンダルを相棒に、国家間に渦巻く陰謀と策略を切り裂かんとマフムートが動く!
本稿では、マフムート役の村瀬歩さんへ行ったインタビューをお届け! 作品の見どころから、オーディション秘話まで、いろいろとお話していただきました。
――初めて脚本を読んだ時の感想や、作品へ印象をお聞かせください。
マフムート役・村瀬歩さん(以下、村瀬):メインとなっているのは、国対国の戦いです。思惑などがうごめいていて、その中で人がどのように生きて、戦っているのか?という戦争や政治といった大河的なところもありながら、もうひとつのテーマとして、少年が大人になっていく過程を描いています。
少年が、自分の理想通りにはいかないことや現実に直面し、「負ける」ということを経験していくことによって、苦労して成長していく物語です。成長と大河的要素が織り交ざっていて、とても読み応えがある作品だなと感じながら、読ませていただきました。
――マフムートというキャラクターは、どんな人物だと思いましたか?
村瀬:17歳という年齢に反して、ものすごく大人というか、冷酷だなと思う部分と、情を捨てきれずまだ大人になりきれない、子供だなと思う部分が同じぐらい同居している人物です。そこがすごく面白いと思いました。
その中で「彼が国のために、どういう人間になっていくのか?」というのが描かれているので、子供から大人って何かの境があるわけじゃないんですけど、そういう中間にいるような立ち位置なので、成長中なんだなという印象ですかね。
すごくモチベーションも高いし、自分の信念も曲げないし、1回やってみるまではすごく頑固なんだけど、やってみて結果が出て自分が間違っていたとしたら、きちんとそれを踏まえて反省できる。次に活かそうとするところが彼の大人なところだと思うし、ただ、その先を考えずに自分の感情や情に動かされてしまうところは子供だなと……。アンバランスな感じで、それが見ていて面白いなと思いますね。
――マフムートと村瀬さんご自身で、共通点はありますか?
村瀬:(しばらく考えて)何だろうな……。この作品自体がある種国盗りものなので、置かれている環境が違いすぎて自分のひいき目なしには話せないんですけど、頑固っていうところは似ていますね。僕もけっこう1回思いこんだり、自分がこうだと思うと、それを貫きたくなっちゃうタイプの人間なんです。
あと、彼は聡い人間で頭の回転が速いと思うので、失敗したとか、これは違うなと思ったら、すぐにそれを受け入れようとしている。彼ほどスッと入るわけではないんですけど、そういうところはちょっと似ているかなと思いますね。
――マフムートというキャラクターを演じるにあたり、アフレコ収録の際に、意識した点はありますか?
村瀬:アフレコ収録を始めて感じたんですけど、第1話はある意味、序盤のマフムートのピークです。自分が将軍になったことで「これからもっとより良い国にしていくぞ」という、すごく前向きな気持ちが表れています。
ただ、もっともっと高いところに行けるかもしれないと思っていたものが一気に崩れていく感じがして、彼自身が苛立ちを覚えます。苛立ちを覚えつつも、私利私欲じゃなくもっと先を見据えようとか、ここだけにとどまらないでいようと、大きい視点で捉えています。
彼はまだできる範囲が限られているんだけど、その中でもっと成長していきたいという思いや、そういうモチベーションが尽きることのない人だなと作品を通して思ったので、そこのところは、まず念頭に置いてお芝居をさせていただきました。
――マフムートというキャラクター演じていて、楽しかったところや難しかったところはありますか?
村瀬:難しかったのは、オーディションのセリフの時にもあったんですけど、ザガノス(CV:古川慎さん)に対して、「お待ちください」、「いや、おかしいでしょう」っていうところです。文章の流れの中でも、「ここを立てて、ここは大事にしたい」と思うものの、なかなか難しかったですね。
マフムートの言っていることは、ひとつひとつが等身大の言葉なんです。だから全部のセリフにエネルギーを注いでいかなくてはならなかったから、自分の中でもっともっと熱量を燃やしていかないと、ここはマフムートの気持ちが前に出ないと思いました。
ポーカーフェイスを気取りたがりの年頃だし、けっこうシャラ(CV:日笠陽子さん)とか他の人と話している時は表情が崩れたりするんですけど、基本的にはかっこいい路線のキャラクターなので、そういうところでも自分の中で留まってはいけない表現と、そういう熱量の出し方の難しさを1話からすごく感じました。
――確かにマフムートを見ていると、理想に燃えていて、心の中に熱いものがあるんですけど、他のキャラクターに対して、クールな表情を見せるシーンが多いですね。
村瀬:彼は多分国が栄えてほしいとか、戦争を自分がどうにかしたいとか、そういったやりたいことや目的地が見えているので、そこに対しての障害であったり、そういうものに対しての反応は大きいんです。
でも、それ以外の部分、基本的にはすごく頭のいい子だし、ある程度腕も立つ子なので、平常のラインがあんまり変わらない感じがしていました。
村瀬さんおすすめの見どころをご紹介!
――本作の見どころや、個人的におすすめしたい注目シーンを教えてください。
村瀬:見どころは、MAPPAさんの画です。今回アニメ化するにあたって、アフレコの時点からかなり画がきれいでした。また、絵コンテも見させていただいたのですが、古橋(一浩)監督の画には世界観があるんです。その上できちんと原作でこういうところを大事にしているんだなとわかるんです。
その時点で、作品の方向性を示す一種の道しるべみたいな感じになっているので、キャストとしても、そこに乗っかりやすいところがあって、監督が描く画の時点で世界観ができあがっている。画だけ見てもすごいので、アニメーションとして動く画も面白いものになっているんじゃないかなと思います。
あと、キャラクターとしてカリル(CV:緒方賢一さん)がすごく好きなので、カリルを演じる緒方さんのしゃべり方にも注目していただきたいですね。カリルとしての緒方さんのしゃべり方は、今までいろんなものを見て、いろんなものを自分で感じてきたながらも、それが説教じみていない。そういう上の立場から諭すとか、導いてあげる師のような説得力があります。
そんなお芝居であり、声であったので、そういったところを持つ諸先輩方とお芝居をさせていただくことができ、ありがたいなと思いました。ぜひ、その辺りも楽しみに聞いていただけるといいなと思います。
――豪華キャスト陣も本作の見どころのひとつです。アフレコ収録中の雰囲気はどんな様子なのでしょうか?
村瀬:けっこう顔見知りというか、初めましてではないキャストの方がすごく多い現場なんですよ。そういう意味でも、ある程度、お話をさせていただける環境があるので、ありがたいなという思いがありますね。
シャラ役の日笠さんが普通にお話しているだけなのに面白いんです(笑)。どちらかというと、シャラは人を振り回すタイプのキャラクターなんだけど、日笠さんは他のキャストの方に振り回されている感じがあって、すごく和やかで現場の雰囲気も楽しく進ませていただいていますね。
――そういったチームワークの良さも作品に出るのではないでしょうか?
村瀬:そうですね。オン・オフがしっかりしているので、収録していない時は、それぞれ静かにしている人もいれば(作品内の)国を越えて話している人もいます。
僕はけっこう、敵となるルイ大臣役の津田(健次郎)さんとも普通にお話しちゃっているんですけど、それでもいざアフレコ収録が始まると、国同士の思惑が始まったなという感じになります。
チームワークの良さというか、現場の雰囲気作りをいろんな方が気にされて、いい現場になっているんじゃないかなと思います。
キュロスも受けていた!? 村瀬さんのオーディション秘話
――先程、カリルがお好きだとお話されていましたが、ご自身が演じているマフムート以外で、気になるキャラクターはいますか?
村瀬:気になるキャラクターはいっぱいいますけど……。原作でいうと、スレイマン(CV:小西克幸さん)やザガノスって、物語の序盤にマフムートと関わって、マフムートが負けを認める人物なんです。だから、そういうところもすごく気になっていましたけど、スレイマンとかザガノスって、背格好もそうだし、心の置き方としても、自分が(演じる際には)ファーストチョイスで選べない人だからこそ、気になるキャラクターではありますね。
あと、直感的に思ったのはキュロス(CV:KENNさん)ですかね。実はオーディションでキュロスも受けていたんですけど、キュロスのイメージが全然わかなくて……(笑)。自分の中で全然イメージができてなかったので、「誰が(キュロスを)やるんだろう?」って思っていました。
今の収録の段階(インタビュー時)では、まだキュロスが出てきていないんですけど、「キュロスって、自分の中でこうかな?」と思っていたものをKENNさんがどう演じられるのか、すごく気になっています。
キュロスもあまり感情の起伏が大きくはないんだけど、ちょっと人を刺してくる(鋭い言葉で、要点や人の急所をつく)ところとか、原作にあるマフムートの手をつかんで命を握るところとか、ああいったシーンはどういう駆け引きになるのか楽しみという意味でも、キュロスがすごく気になりますね。
――オーディションでマフムートとキュロスを受けられたとお話がありましたが、マフムートはスッとイメージできたんですか?
村瀬:そうですね。マフムートは原稿を読ませていただいた時に、信念が強くて、でもどこかちょっと大人になり切れてない人だなとイメージできました。
オーディション原稿も、原作の1~8巻の内容があったんですけど、セリフの抜粋の仕方も成長度合いが感覚的にわかるものだったので、あんまり迷うことなくお芝居ができたんです。ただ、キュロスは難しいなと、すごく思ったんですよね(笑)。
――では、オーディションでマフムートを演じた際に、手ごたえみたいなものを感じられたのでしょうか?
村瀬:いやぁ~、手ごたえは全然、わかんなかったです(笑)。画やセリフに魅力を感じましたし、国盗りものの作品に参加したことがなかったので、マフムートでなくても、何かしらご縁があったらいいなというふうには思っていたんですけど、手ごたえは全然なかったですね。
――そういったことも含めて、今後が楽しみですね。
村瀬:ぜひぜひ楽しみにしていてください。
――村瀬さん演じるマフムートは己の信念をしっかり持っています。村瀬さんがお仕事をする上で、ご自身の信念(最も大切にしていることや心がけていること)はどんなものですか?
村瀬:言葉通りに受け取っていただいていいんですけど、自分の中で役に優劣をつけないことです。自分自身が「演じていて楽しいな」とか、「この役好きだな」とか、「やりがいがあるな」というのと、お仕事の感情とを別にするというのは、信念としてちゃんと持っているつもりです。あくまで作品におけるキャラクターの声を担当させていただいているので、私物化せず、イコール(=)キャストではないと思っています。
だけど、自分の一番の理想としては、例えばアニメを観て、アニメのマフムートはこんな感じなんだと思っていたものが、漫画を読んでいる時や別の媒体でも、何となく村瀬がやっているマフムートの声で再生されるという感じに、どこか息づいていると嬉しいですね。
生ものなんだけど、自分が出すぎないというか、私物化しないでいようというのはすごく思っています。だから、主役であれ、ひと言だけの参加であれ、そういう役の大きさで、仕事の価値を決めないようにしようというのは信念として持っています。
――マフムートはトルキエ史上最年少で将軍となります。その若さゆえに、国を守るという理想と現実に悩み、成長していきますが、村瀬さんご自身が何かに悩んだり、超えられそうにないと感じる壁にぶつかったりした時に、行うことは何かありますか?
村瀬:僕はけっこう人生が楽しいんですけど、それと仕事の悩みは別だと思っています。満足したらたぶんそこで終わっちゃうし、常に「今の自分には足りていないところ、どういうふうにトライしたらいいのかな?」とか、そういうことはいつも役を演じる時も思っています。
オフの時も、ふと自分の中に生まれてきた感情で「ああ、こういうことやってみたら、楽しんじゃないかな?」とか、常に壁というか、自分で感じているものはあって、そこはちょっとずつ掘っていく作業だと思っているので、日常ですね。
日常的に何かチャレンジというか、壁は一気に壊せるものではないから、ちょっとずつ、何かうまくいかないなと思っていたものでも1年とか2年とか続けていって、その時にパッと振り返った時に、「こういうところは成長してる」と感じることができたら進めているんだなと感じるし、逆に変わっていないなと思ったら、「やばいな」というふうに、どこかで警鐘鳴らす自分もいるし、という感じですかね。
――お仕事の時でも、オフの時でも、楽しみにしていることや、気分転換として気持ちを切り替える際に行っていることはありますか?
村瀬:アプリゲームが好きなので、休みの日じゃなくても、家に帰ってとか、もしくは現場が終わったらすぐにアプリゲームを開いて、触るだけでけっこう気分がリフレッシュされるんです。
あとは、友達とご飯に行ったりとか、旅行行ったりとか、普通な感じのリセット方法ですかね。
――リフレッシュして、お仕事に臨まれると、また新鮮な気持ちでいっそう良いお仕事ができそうですね。
村瀬:役者のメンタルって、すごくその役にめちゃくちゃ影響しちゃうから、僕の場合はあんまり新鮮味というか、そういう表現がピンと来なかったんですけど。
役者自身のメンタルがいい状態だと役に対してアプローチができる幅も広がります。悪い状態なりにアプローチできるところはありますけど、楽しいとかそういう感情の幅が狭くなっちゃうこともありますから。
ただ、やっていく中で、ルーチンワークになっちゃいけないと思うし、常に役に対してもっといいアプローチができるんじゃないかという探求心というものが腐らないように自分をリフレッシュしたりするのは、とてもいいことなんじゃないかと思っています。
――本作を楽しみにしているファンのみなさんへメッセージをお願いします。
村瀬:本当にスケールの大きい作品で、魅力的な登場人物がどんどん登場してきます。その中で、ひとりの少年が大人になっていくという、理想だけじゃなくきちんと現実も知った上で成長していくという面でも、すごく楽しめる骨太な物語となっております。
あとは、我々役者陣だけでなく、画の方であったり、音楽の方であったり、スタッフの方々が作品によりいっそう彩をつけてくださっているので、ぜひ楽しみに観ていただけたら嬉しいなと思います。
――ありがとうございました。
[インタビュー・文/宋 莉淑(ソン・リスク)]
作品概要
■TVアニメ『将国のアルタイル』
【イントロダクション】
犬鷲使いの少年将軍(パシャ)、乱世に挑む!二大国家を揺るがすエキゾティック英雄譚! カトウコトノ原作、「月刊少年シリウス」(講談社)で好評連載中のコミック「将国のアルタイル」。その独創的な世界感描写と洗練されたキャラクター設定で、人気を博す意欲作が2017年、待望のテレビアニメーションとなって登場する。監督には「機動戦士ガンダムUC」や「るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-」で知られる古橋一浩、アニメーション制作は「この世界の片隅に」「ユーリ!!! on ICE」のMAPPA と、強力な布陣で、一級エンターテインメント作品に挑む!
ここではない世界、いまではない時代。 将軍と呼ばれる為政者たちの治める 草原と砂漠の国・トルキエ将国。12年前、隣国・バルトライン帝国との戦争で母を失ったマフムートは、平和な国にしたいと希い、トルキエ史上最年少で将軍となった。しかし、交易で得た巨万の富をもって安寧を取り戻したトルキエに対して、再び帝国の侵略が始まる。犬鷲・イスカンダルを相棒に国家間に渦巻く陰謀と策略を切り裂かんと動くマフムートは、いかにして自分の国を平和へと導くのか?―――理想と現実の狭間で彼のとる行動とは…?
【放送情報】
MBS 7月7日より毎週金曜26:25~
TBS 7月7日より毎週金曜26:27~
BS-TBS 7月8日より毎週土曜24:30~
新潟放送(BSN)7月19日より毎週水曜26時20分~
※放送時間は変更になる可能性がございます。
【スタッフ】
原作:カトウコトノ(講談社「月刊少年シリウス」連載)
監督:古橋一浩
シリーズ構成:高木 登
キャラクターデザイン・総作画監督:菅野利之
副監督:いがりたかし
美術設定:成田偉保(KUSANAGI)
美術監督:小倉一男(KUSANAGI)
プロップデザイン:新妻大輔
アクション作監:神谷智大
色彩設計:佐々木 梓
撮影監督:大山佳久
編集:廣瀬清志 (editz)
3Dディレクター:石神亮一
音響監督:木村絵理子
音楽:川﨑 龍
アニメーション制作:MAPPA
製作:将国のアルタイル製作委員会
オープニングテーマ:シド『螺旋のユメ』(Ki/oon Music)
エンディングテーマ:Flower『たいようの哀悼歌(エレジー)』(Sony Music Associated Records)
【キャスト】
マフムート:村瀬 歩
ザガノス:古川 慎
キュロス:KENN
アビリガ:諏訪部順一
スレイマン:小西克幸
カリル:緒方賢一
ルイ:津田健次郎
レレデリク:小林ゆう
グララット:櫻井孝宏
ルチオ:小野大輔
ブレガ:山路和弘
バラバン:中井和哉
バヤジット:内山昂輝
アイシェ:茅野愛衣
オルハン:島﨑信長
イスマイル:岡本信彦
イブラヒム:佐藤拓也
シャラ:日笠陽子