この記事をかいた人
- 小澤めぐみ
- 営業職を経験後、記者業務に携わりフリーへ。主に男性声優、漫画、アニメなど浅く広く…今はもっぱら藤沢朗読劇中毒
2017年12月11日(月)、海外ドラマ専門チャンネル『スーパー!ドラマTV』にてアクション・サスペンス超大作『ブラックリスト』の最新スピンオフ『ブラックリスト リデンプション』が独占日本初放送!
“犯罪コンシェルジュ”と呼ばれる最重要指名手配犯のレイモンド・レディントンとFBIの新人捜査官リズことエリザベス・キーンが、レディントンの持つ“ブラックリスト”を元に数々の犯罪捜査にあたる姿を描いた『ブラックリスト』。そのスピンオフ作品である『ブラックリスト リデンプション』では、リズの夫であり、実は国際的に暗躍する工作員だと判明したトム・キーンを中心に物語が展開します。
トムは、レディントンの“ブラックリスト”に載る一人で、トムの生き別れになった母親と目されるスーザン・“スコティー”・ハーグレイヴが指揮する秘密傭兵組織に雇われることに。リズの命を狙った敵でもあるマティアス・ソロモンや天才ハッカーらチームのメンバーと共に、政府が関与できない“裏の仕事”に携わるうち、トムの生い立ちや母親・父親との親子関係がサスペンスフルに描かれていくスパイアクションとなっています。
そこで、放送に先駆けて、スーザン・“スコティー”・ハーグレイヴ役日本語吹替声優の日野由利加さん、トム・キーン役の荻野晴朗さん、マティアス・ソロモン役の浪川大輔さんにインタビューを敢行。キャラクターの役作りや魅力、作品の見どころなどを伺いました。
日野:一人一人の人物像の描かれ方が、過去や抱えている秘密、せりふや言葉から深くえぐっていくことで浮き彫りになってくるような感じだと思います。
浪川:本作みたいに得意分野がそれぞれあって、チームを組んで攻めていくみたいな設定が僕は結構好きで、好きな方も多いと思います。
リズや他のキャラクターも出てきますが、合同捜査をするという感じではなくて、「ブラックリスト」と本作が同じ時間軸で進んでいる感じです。
荻野:FBI に力を借りたいという中で、リズが何度か登場することはありましたね。『ブラックリスト』でレディントンが語っていた口上のようなせりふを言う役割をソロモンが担っていたり、ソロモンや『シーズン3』の回に登場した工作員ネズ・ローワンの過去にも触れたりして、キャラクターがより深く描かれています。
日野:「正義だと思ったら悪なの?」みたいな、ある意味みんなを裏切っていくような面白さがありますね。
浪川さんが「振り回された」と語る3人の関係性
――キャラクターの魅力や関係性について教えてください。
荻野:『ブラックリスト』では、リズの優しい夫として登場しますが、実は敵だったということで、最初は演技でリズに近づいているので、内面が表に出てこなくて、嘘の顔が多いんですね。けど、リズを愛していると気付いて味方になるという流れがあり、リズを愛することで次第に人間らしさが出てくるんですが、「まだ不器用な感じだな」と受け取っていました。
その状態から、本作では母親だと思っているスコティーとの交流によって、感情の発露が結構あります。親子としての感情を持つことで見せる優しい笑顔だったり、逆に怒ったりと、いろいろな感情が見られるのは、本作での新しい一面だと思います。
日野:スコティーは、経営する会社ハルシオン・イージスの経営者としての使命感よりも、「母親としてどうか?」という母性を表現する部分が多く描かれていたと思います。司令塔として指示は出していますが、『ブラックリスト』に出た時よりも夫に対する女性の部分や息子に対する母性、そして彼女なりの正義によって動かしているシーンが多かったです。なので、判断が揺らいだり、弱い部分もいっぱいありましたね。
浪川:ビジネス上の付き合いから、本作ではトムとスコティーに「かなり振り回されたな」という印象です。それがソロモンらしくもあるんですが、本作を見てもらえれば、『ブラックリスト』で「あれは、スコティーに指令を受けてたんじゃないかな?」とか分かると思います。
ソロモンは危険を察知するとすぐに離れて、さっと逃げるタイプ。一匹狼というより、損得勘定で動くので、彼なりにどんな過去があって、こんな性格になったかというところもちょっと見えてきて、誰につくかというポジショニングが難しかったです。今回は皆さん感情面での絡みが多く、そういうお話になると絡み方が難しいなぁと思いました。
日野:きっと、彼は彼なりの「何を信じて生きていったら良いのか?」みたいな迷いなんかがあって。スコティーとの関係性は、そういうところに意味があるのかも。
浪川:そうですね。あと、本作でソロモンかっこいいなぁと思ったところがあって。『ブラックリスト』ではチャラチャラしたイメージがあったんですが、今回、敵と戦うシーンで銃を持って堂々としていたり。これまでは人を使って作戦を指示する側でしたが、自ら動いて戦ったりしているので、「本当はこういうのが得意なのかな?」と思いました。『ブラックリスト』では、ソロモンがトムに撃たれてますけど、本作ではそれでもそばにいるという……。
荻野:それも不思議な関係ですよね。『ブラックリスト』の最後で、トムがソロモンのお腹を撃って「ソロモンは死んだのかな?」って思われていたのに、それがチームを組んで2人で出掛けていって。
浪川:ケンカしてますよね(笑)。まさにスピンオフっぽい、そういうクスッと笑えるようなシーンもあると思います。
スコティーには、“喜”と“楽”の感情がない!?
――では、演技で変化した部分やこだわった部分はありますか?
荻野:『ブラックリスト』では、レディントンという大きな柱があって、トムはそのストーリーの中心から外れた、リズの夫というポジションで。レディントンやリズがハッキリと話す中で、穏やかというかフワッと優しい印象を受けたので、輪郭をハッキリさせた話し方はしないという役作りをしていたんです。
トムは幼いころから、工作員としての訓練を受けてきたという生い立ちもあったので、どんな状況でも動じない精神を持っているんだろうと思って、うれしい時も冗談を言う時も、悲しい時も、苦しい時もあまり息が上がったりしない形を基本線で持っていました。
今回は、子供ができてやたらと喜んでみたり、自分の出生に関わる部分に触れるので、その壁が剥がれたりヒビが入ったりするところを意識して、感情が振れるときには振るように演じました。リズや母親とかと話すときは家族に感じる愛情を全面に出して、優しくしゃべるみたいな部分ですね。
日野:今の“喜怒哀楽”でいうなら、スコティーは“喜”と“楽”がなくて、毎回“怒”と“哀”を表現していました。先ほどもお話したように、深くえぐった部分が多いので「わぁ!」と感情を爆発できなくて、収録が終わっても悶々として帰るくらいでしたね。あと、ファムケ・ヤンセンさんは身長が大きくて……。
浪川:由利加さんとすごくスタイル似てますよね。吹き替えてるときの立ち姿とか。
日野:そんなに偉そうに立ってる?
浪川:そ、そうではないです!
日野・荻野: (笑)
日野:それで、存在感も「バーン!」と大きいんですけど、あまり口を動かさないでモゴモゴしゃべるんです。“喜”と“楽”がない分だと思うんですけど、ぼそぼそと話すので、それに合わせるとスッキリ話せないというところがありました。
荻野:ありますよね。役に合わせて口を動かさないようにすると単純に話しづらいけど、あえてそれで演じるっていう。
日野:他の作品でも(ファムケ・ヤンセンさんの)吹き替えをさせていただいているので、「バーン!」とできる役もありますけど。この作品に限ってはずっとそれで、視線もあまり動かさず、まばたきもあまりする訳でもなく、相手の真意を一生懸命探っているみたいな演技をされていて。どんどん自分の中に発散できないものがたまっていく感じでした。
浪川:これまで、ソロモンみたいな身なりや性格の役を演じることが少なくて、「どうしようかな?」って思いました。『ブラックリスト』ではちょっとエキセントリックなシーンが多く、表現の仕方が大きかったんですけど、今回は俳優のエディ・ガテギさんもお芝居の仕方を変えてきたな、と感じられました。
ガラリと全く変えている訳ではないんですが、声の出し方とかが全然違ったので、声優っぽいことを言うと……今回は役者さんの声の出し方などをまねしてみました(笑)。もちろん声は全然違うし、日本語と英語の違いはありますが、ウイスパーがやたらと多くて、癖のある話し方などで似た雰囲気になるように、『ブラックリスト』と全然違うなと思ってもあえて「今回のシリーズとして、これで演じてみよう」と思いました。
やってみたら、「ソロモンという役は面白いし、面白い役者さんなんだな」と改めて発見しましたし、それが伝わればなと思いました。
日野:ソロモンは何を求めてるんだろうね。心底不安なものがあって、スコティーの中に何を見てるのか、トムの中に何を見てるのか、という立ち位置を作っていっているというか……。
浪川:「救われた!」というせりふがあったり、寂しい部分とか哀愁とか出さないですからね。
日野:出さないけど、スコティーやトムの存在に救いを求めてるみたいな感じがする。
浪川:意外と言う事も優しいですしね。そういうところまで見ていただけると、うれしいです。
――最後に、注目ポイントや印象的に残っているシーンがあれば教えてください。
荻野:トム自身は、母親とか自分のルーツを求めて「母親がどんな人だろう」と探る中で、愛情を感じてスコティーに近寄ろうとするんですけど、付き合いを深めていくうちに「会いにきて良かったのか?」という葛藤も出てくるんですね。
不遇の子供時代があって、リズと出会うことで本当の家族の愛、母親の愛に触れるんですけど、実際に自分と血のつながった相手は初めてなので、そこで心は子供として「会えてうれしい!」と思っていたのに「裏切られた!」となるシーンがあるんです。そこを見てほしいですね。
日野:本来であれば、3人とも感情が揺さぶられるようなシーンがあるんですけど、スコティーが普段の指令と変わらず淡々と話すので、“喜”と“楽”がないと感じるシーンでもあります。その後の、何事もなかったようなソロモンとトムのやり取りも含めて衝撃的なシーンだと思います。
浪川:スコティーの夫であるハワード、スコティー、そしてトムとの関係が気になります。「どちらの言い分を信じていいのか?」みたいなやり取りが繰り広げられるんですが、やり方がすごい! それぞれ遠慮がなくて、「できる人同士だとこんなにも激しいんだな」という、まさに今作でしか味わえないやり取りで。全くあり得ない訳でもなく、考えられるけど「そういう手でくるのか!?」とか「そこにトムがどう絡むのか?」とか、視聴者の方は面白く見られると思います。
[取材・文/小澤めぐみ]
営業職を経験後、記者・編集業務に携わりフリーへ。男性声優を中心に、漫画、アニメ、外ドラ、BLなど浅く広く好奇心は一人前。飲食、旅行、音楽、(ヘタだが)写真撮影、話を聞くことも好きで、近年の自粛生活は苦痛。最近のお気に入りは『薬屋のひとりごと』『異世界でもふもふなでなでするためにがんばってます。』。王道モノから西東問わず歴史モノなど“ファンタジー”や“ミステリー”が好物。今はもっぱら藤沢朗読劇中毒
原題:The Blacklist: Redemption
データ:2017年(米NBC)/アメリカ/二カ国語&字幕/60分/HD作品/全8話
製作総指揮:ジョン・ボーケンキャンプ、ジョン・アイゼンドレイス、デヴィット・アマン
【キャスト】
スーザン・“スコティー”・ハーグレイヴ:ファムケ・ヤンセン(映画『X-MEN』シリーズ)/声:日野由利加
トム・キーン:ライアン・エッゴールド(TV「ブラックリスト」「新ビバリーヒルズ青春白書」)/声:荻野晴朗
マティアス・ソロモン:エディ・ガテギ(TV「ブラックリスト」「START UP」)/声:浪川大輔
ネズ・ローワン:タウニー・サイプレス(TV「HEROES/ヒーローズ」)/声:福田如子
デュモント・デ・ソート:アドリアン・マルティネス/声:島田岳洋
ハワード・ハーグレイヴ:テリー・オクィン(TV「LOST」)/声:麦人
【ストーリー】
FBI捜査官の妻・エリザベス、娘・アグネスとともに新しい生活をスタートしていた潜入工作員のトム・キーン。ある日死んだはずの父ハワードから連絡があり「妻スコティーの会社ハルシオン・イージス内部に潜入し、スコティーの信頼を得て彼女の秘密を探ってほしい」と告げられる。
息子だと名乗らないままハルシオン・イージスの秘密傭兵組織のメンバーとしてスコティーに雇われたトムは、妻エリザベスを殺しかけた仇のマティアス・ソロモン、様々なスキルを要する有能な工作員ネズ・ローワン、サイバー操作によって不可能を可能にする天才ハッカー、デュモント・デ・ソートらチームとともに誘拐されたCIAエージェントの救出に挑むが…。
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