アニメ映画『ぼくらの7日間戦争』鈴木達央さんインタビュー|自分の中の檻を取っ払うエンターテインメント
全てのシーンに見どころがある映画
――では、鈴木さんが特に印象深いシーンを教えて下さい。
鈴木:うーん……。やっぱり監督(村野佑太監督)たちがすごく繊細に作品を作っているんですよね。壮馬の秘密が何気ないシーンの中に少しだけど描かれている。そのコンテに脱帽でした。
こちらが何かを入れようとしなくても、自然と欲しいカットになっていて、そこに飛び込んでいった感覚でした。俺からすれば、それに対してどうわざとらしくやらないかに掛かってくるなって。
例えば、飲み物を飲んでいる時の壮馬の何気ない仕草。そういったところもしっかりと描いていて。それが全部伏線になってるんですよね。他のキャラクターに焦点を移してもいいんだけれど、細かく細かくキャラクターの心理を紡いでいくというか。
なので、変な気負いもなくフィルムの中にいましたね。自分的にここだ! というシーンを作るわけでもなくって。逆にそうやって作ると音響の菊田さん(菊田浩巳音響監督)から凄いダメ出し喰らいました(笑)。
――そうなんですか?
鈴木:「そういうのいらない。普通で」って(笑)。
――あはは(笑)。
鈴木:なので、「はーい」って(笑)。そうそう。そういう意味で言えば、キャストのみんなと収録した2日間以外は辛かったんですよ。都合で一部別撮りになったシーンがあったんですけど。
7人で収録した時の空気感が素晴らしかったんですよね。特に北村さん(鈴原守役・北村匠海さん)と 芳根さん(千代野綾役・芳根京子さん)の空気感が凄くて。本当に独特の空気感を持っている役者。個性派と呼ばれる部類ってこういうことを言うんだろうなって。
それが混じっている状態でのアフレコだったので、“プロの声優”では出ない空気感があったんです。その時に流れている空気感。これはとても大事な時間だったなって。後から一人で収録している時に……まぁ、そこに全然飛べないわけですよ。だって、リテイクしまくりでしたから。
――え!? 鈴木さんがですか?
鈴木:そうなんです。みんなと録っている時にできたことが全然できなくって。この作品は空気感が命でしたね。本当に悔しかったです。ちゃんと人に見せられるものにはしましたが、収録終わった後に「悔しかったです」って言っちゃったくらいなので。
――なるほど。そんなに普段とは違う現場だったんですね。ちなみにちょっと聞いてみたかったんですけど、鈴木さんって年齢問わずキャラクターを演じていらっしゃるじゃないですか。今回のような学生役を演じる時はどんなことを意識しているのでしょうか。
鈴木:“今感”を大切にすることですね。若い子の喋り方に歳を重ねるとついて行けなくなるので。「何が楽しいの?」って疑問を感じそうになる、いや感じるんですよ。
それ自体が一番ダメなことなんだよなって。年を重ねると自分というものが凝り固まってきちゃうし、ロジックができるようになる。
自分の中でのフローチャートができちゃうんですよ。スキルツリーみたいな。それを自分でなぞりがち。若い時ってそれがないから飛べるんですよ。それを楽しめる。そうなれる自分を知っておかなきゃいけないなということは意識しています。
――その感覚が大切なのですね。
鈴木:うん。だって、それがないと若い役ができないから。おっさんが若い声出してるだけになっちゃうので。
人間の感情なんて理屈じゃ全然分からないですから。理屈で分かるのは上積みだけでしょう?