この記事をかいた人
- 阿部裕華
- アニメ・音楽・映画・漫画・商業BLを愛するインタビューライター
今回はオメガバースを特集しました。センセイが可能な限り簡単にまとめてくださいましたが、複雑な設定があるため、概要を掴むのになかなか時間がかかることがあるかもしれません。
しかし、話題のキモでもあった性別の多様性がオメガバース最大の難関でもあり、最大の魅力なのです。
これは僕たちが話していたように作品を読んでみるのが一番理解が早いと思います(実際のところ僕がそうでした)。
より楽しめるのは、センセイがご紹介してくださった大まかな「オメガバースというジャンル」の設定をなんとなく頭に入れておくことですが、BLの基本知識がある方はそのまま足を踏み入れるのもOKです!
各作品の漫画の前には「この世界でのオメガバース」といった説明書のようなものが入っていますし、ほとんどの作品の冒頭のストーリーが作品世界を理解しやすいようにゲームのチュートリアルのような構成になっています(ここは新興ジャンルならでは!)。あまり肩肘張らずに楽しみましょう!
それでは今回も行ってみましょう! 先に言っておくと、オメガバース、いいですよ。
阿部センセイにおすすめされた『先生のせんせい』。なんだかややこしくしてすみません……。
「まずはこれから!」とセンセイに猛プッシュされたので、この作品から手を出してみました。
表紙の雰囲気からもわかるように、ほんわかふんわかほんわかほい! なオメガバース作品になっていまして、知識が全然ない僕でも「これは初心者向けだ!」とわかる内容でした。
舞台はとある小学校。新米教師の大路(α・攻め?)は、学生時代の恩師で片思い相手だったスクールカウンセラーの保美(β・受け?)と再会します。大路は保美への好意を捨てきれずに徐々に距離を詰めていきますが……。
大路は快活な好青年、保美はどこかかまってあげたくなるゆるふわ美男という、王道で安心して読めるBL展開しますし、何より作品の雰囲気が優しさに包まれていて、これを読めば癒やされること間違いなしです。
しかも、その中に散りばめられたオメガバース要素が入門編としてはバッチリで、各性別の違いや、その違いによって起こる問題と感情の振れ幅が、上手く共存しています。オメガバース作品が気になる人は、まずみんなこれから読んでほしいくらいです……!
ようやく意気投合しかけたところで、酔って「もうあなたのこと好きになんてなりませんよ〜」なんて冗談をきっかけに、関係がすれ違ってしまうところも展開的には素晴らしいので、甘さ6:切なさ4くらいがお好きな方はぜひ。
そして、これは直接的にBL要素に関わっているポイントではないのですが、舞台が小学校というところがかわいらしくていいんです! メインの二人以外にも様々なキャラクター(大人&子ども)が登場しますが、子どもたちのかわいさがとにかくピュアで癒やされます。
子どもが登場するBLはあまり読んだことがないので今回がはじめてだったのですが、これもオメガバースという設定だからこそ生きてくる設定になったのかなと思いました。
BLとして楽しむのもよし、普通の恋愛ものとしてほっこりするのもよし、キャラクターたちを愛でるのもよしな、美味しい入門作品でした!
『先生のせんせい』から一歩踏み出し、続いての作品です。まず簡単に説明すると、絵が綺麗で、ストーリーが切なくもラストはハッピーエンド、そしてちゃんとエッチです……!(『先生のせんせい』とのギャップに「キャッ……!」となりました)
『きみはもう噛めない』のカップリングはβ×Ωという組み合わせ。タイトルからもなんとなく察することができますが、資産家の息子でありすでに番となる相手ができてしまったΩのオリヴァーと、そんなオリヴァーを好きになってしまった無職のリアムの関係性が描かれます。
番になっているということは、番の相手にしか発情しないはず……なのですが、オリヴァーは特殊体質で、万年発情期で誰にでも発情してしまうというなんともエッティーな体質なのです……!
そんなオリヴァーの性処理係として雇われたのがリアムでした。こんなのエチエチになるほかない……!
最初は仕事だと思って(この世界では男×男といった同性の性行為は少し差別的な見方をされる模様)、オリヴァーに接するリアムでしたが、徐々に惹かれていき……といったストーリーです。
オリヴァーの蕩け顔(まじでとろとろ)をはじめとした性描写が魅力的なので、そちらの話ばかりになってしまいましたが、全体を通したストーリーの流れも素晴らしいのが本作の魅力です。
仕事でセックス→え、めっちゃ気持ちいいじゃん……!→次第に行為はエスカレート→時間をともにする中でお互いを知る→行為だけでなく好意も抱くように→番のいるΩとただの性処理βとして悩む→その後の展開やいかに……!?
とこれを聞いただけでもストーリーが気になりませんか? 恋愛の嬉しさや楽しさ、葛藤や絶望、そして希望までをも1冊にまとめた名作です。
すべてのバランスがちょうどよくまとまった黄金比のようなオメガバース。リブレの重版率1位なのも納得です!
※すみません。アニメイトでの取り扱いは現在ありません。
タイトルを見ると悲しそうな雰囲気がある本作ですが、最初の落差からラストにかけてのストーリー構成が秀逸です。
超俺様αの鵬高嶺(おおとりたかね)の番であるΩの恭壱(きょういち)は高嶺に捨てられ、高嶺のハーレムで生まれて同じく捨てられたαの音々(ねおん)と共同生活をしています。
血の繋がりはないものの音々から「父さん」と慕われる恭壱。しかし、音々は恭壱に対して家族以上の感情を抱き、16歳の誕生日にその気持ちを打ち明けます。そして、恭壱は長年来ることがなかった発情期が訪れてしまうのです……。
普段はしっかりと落ち着いた恭壱なのですが、二世代のαに翻弄される姿は、まぁセクシャルなのですよ……! 発情期を迎えると、もう辛抱たまらんといった表情でαを求めてしまうのです。
恭壱は、「父さん」と呼ばれるだけはあってそれなりの年齢です。音々と親子のように接してきた関係性や年齢差を後ろめたさがありながらも体は求めてしまいます。その葛藤がなんとも切ない!
表紙からも察することができますが、恭壱はメガネをかけています。なんと、情事のシーンはなぜかどれもメガネが外れてしまうのです! メガネが外れた恭壱がまぁ無防備なことこの上ない! でもそれがいいのです!
もちろん、高嶺と音々の二人のαも良い関係性で、我道を歩むスーパー攻め様感のある高嶺と、その高嶺にライバル心を抱く音々が努力して成長していく様子の対比も恋愛模様を加速させていきます。
一体この三人の関係はどうなっちゃうの!? そんなハラハラドキドキエチエチな三人の行方をぜひお楽しみに!
オメガバースでミステリーをやるなら? その答えが『リバース』で間違いないでしょう。刑事ものと恋愛要素が並行して進んでいく本作。きっとラストの展開に驚かされるはずです。僕は読みながら「まじかよ」と言ってしまいました。
登場人物のαの刑事・吐木幸村(はばきゆきむら)とΩの小説家・化野円(あだしのえん)は、孤児として同じ養育施設で出会った関係。やがて意気投合した二人は、恋人になり、養育施設を出たあとに同棲、幸村と円は番となります。しかし、何度うなじを噛んでも円の発情期が安定しません。
すれ違いながらもお互いを求める幸村と円。このもどかしさは心が締め付けられるような悲しみを感じさせられます。好き合っているのに幸せになれない二人っていますよね。あのような感じです(本作で二人が幸せになるのかはナイショにしておきます)。
そしてミステリー部分。幸村が担当することになったのは、謎の連続殺人事件でした。オメガバースならではの性別が関係している事件を追ううちに、この社会に潜む生きづらさが浮き彫りとなっていきます。
さらに円は幸村に重要な秘密を隠しており、それが起因して物語が急展開! 様々な要素に頭がぐちゃぐちゃになりますが、その感覚こそがキャラクターたちと一緒に物語を追っているような感覚になって楽しんです!
あーもうネタバレしたい! 核心に触れてしまうので言えない〜! みんな読んで! この辛さと楽しさがわかるはずだから!!!
ひとつ言えるのは、α、β、Ω、そして運命の番とオメガバース作品での重要な設定はありますが、作品によってはそれが必ずしも幸せにはつながらないということ。我々の現実世界と同じようにオメガバースの世界でも性別や人間関係で葛藤し、挫折し、乗り越えていこうとするのです。
そんなご都合主義とは程遠い生々しい人間関係を楽しみたい方は『リバース』のページを開いてみてください。
アニメ・音楽・映画・漫画・商業BLを愛するインタビューライター。Webメディアのディレクター・編集を経て、フリーライターとしてエンタメ・ビジネス領域で活動。共著「BL塾 ボーイズラブのこと、もっと知ってみませんか?」発売中。