「ビビってるんですかァ?」をキメることが私の最初で最後の仕事――アニメ『終末のワルキューレ』ブリュンヒルデ役・沢城みゆきさんインタビュー
ゼウス役の高木渉さんに面と向かって言いたかったあのセリフ!?
――沢城さんが気になったキャラクターはいますか?
沢城:これは選びづらいですけど、男性の視点と女性からの視点で違うのかなぁ。
それは分からないですけど、キャストの間では佐々木小次郎が人気でした。男の人生としてグッと来るものがあるんだと思いますし、私も原作を読んで、たまらないキャラクターだと思いました。それをよもや山路和弘さんが演じることになるとは。「最高だぜ!」って思いました(笑)。
自分がやってみたいなと思うのはジャック・ザ・リッパーですかね。あのどこにもいない稀有な人生と稀有な試合に立ち会ったキャラクターはなかなかいないと思っているので、ジャックはやったら面白そうだけど難しそうだな、という感じです。
あと、男の子に生まれていたらシヴァをやりたかったなぁ。あれは男の子の夢とか友情が詰まっているキャラクターですよね。人生として背負うものがいっぱいあるので、男の子の魅力がギュッと詰まっていると思いました。
――アフレコで演じる上で苦労された点、こういうところが面白かったな、という部分はありますか?
沢城:コロナ禍なので、全員揃ってせーので収録できたわけではなかったのですが、第1話と第2話はゲル役の黒沢ともよちゃんと一緒に収録ができたんです。ヒルデの魅力ってゲルと一緒にいるときに際立つところがあって、一般人代表のようなゲルと真逆の魅力を持つヒルデの会話って、お互いの魅力を映し合うというか、映し合えると思うんです。
ひとりでやっていたらどうなっていたか分からないところも、ともよちゃんと二人で収録できたのは良かったです。
曲に例えると、ともよちゃんが主メロを奏でてくれて、ヒルデが休符になっていくような感じなんです。そうやって二人でハーモニーを奏でていくと、そのシーンの形がグッとできていったので、休符の面白さというのは感じていました。
ゲルありきのリアクションで成り立つ感じが音としてはあったので、ともよちゃんにいろいろ仕掛けていじわるをするのは楽しかったです(笑)。何をやっても絵に描いたようなリアクションをまっすぐに返してくれるんですよね。
ちょっといま表現を間違えましたね……。いじわるではなく、くすぐりがいがありました(笑)。
――よく分かります。
沢城:だからヒルデって引き算なんですよね。ひとりでやっていても分からないというか。熱く燃えている人がいるところに水をかけていくような感じなので、全員で一緒にやったら、より自分の立ち位置が分かったのかなと思います。
それと、ともよちゃんは太鼓持ちもしてくれるんです! ひと言終わるごとに「今のグッと来ました」「沢城さん以外に、ヒルデをやれる人、いるんですかね?」とかまで言ってくれるので、私を公私ともにもり立てながら活躍してくれたので、本当にありがたかったです(笑)。
――声優陣の豪華さも作品の魅力で、先程山路さんのお話も出ましたが、第1~3話で活躍する、呂布役の関智一さん、トール役の緑川光さんについて、役者仲間としての目線ですごいところを教えていただけますか?
沢城:イベントでお二人とご一緒できたとき、若輩であることは承知の上で「先輩がすごかった」という話をずっとしていたんですけど、本当に声の仕事をしていたら「こうなりたいな」と思う大先輩のお二人で、普通に生活していたら聞けない音がいっぱい聞けるんです。
両足の骨が折れたときの「ぐぅう」とか、関さんがやると本当にそう聞こえるんですよね。声を張り上げるわけではないんだけど、今この人がすごくときめいたんだ!というのを、緑川さんはちょっとの音色の差で出すんです。
クールな役をやりながらも、その機微が分かる。それって当たり前のことなんですけど、やろうと思うとあんなふうにはなかなかできないんですよね……。
改めて憧れていた方たちだし、プロになってからも「う~ん」と唸ってしまいます。やっぱり技術者……俳優ではなくて技術者としての技もたくさんあるので、一緒にアフレコをやりたかったな、背中を見たかったなとは思いました。
――あまり先輩役者の方たちとは一緒にアフレコできなかったのですね。
沢城:全然です。私はともよちゃんと一度やっただけで、あとはひとりで抜きのスタイルだったので、皆さんの音を聞きながら録っていたんです。それは残念なことですけど。
――そうだっんですね。ゼウス役の高木渉さんとは掛け合いも多く、遠くから見合ったりしているシーンなどもあったので一緒にやりたかったのではないですか?
沢城:そうですね。高木さんに向かって、「いちいちこっち見んな、エロジジイ(戦闘変態嗜虐愛好神)」って言いたかったですね(笑)。すごく残念なことに今気が付きました。
すごく鼻息荒くやってくださっていて、私のカットに鼻息がこぼれてきていたんですよ。それを存分にうざったく思いながらひとりで一生懸命声を入れましたけど(笑)。
渉さんに関しては、彼がグルーヴしていたものが残っている音で聞けたので、別録りでしたけど、ちょっと一緒にやっているような体感もあって嬉しかったです。
――先程「ゲルありきのリアクション」ともおっしゃっていたので、先に入れた声が入っているのはヒルデとしては良かったことかもしれないですね。
沢城:そうですね。受けのほうが多いので、その順番はありがたかったです。(高木さんが)あとだと、渉さんがどう演じるか予想のつかないセリフがたくさんあったので、助かりました。