アニメ
『スター・ウォーズ:ビジョンズ』「のらうさロップと緋桜お蝶」レビュー【全作レビュー連載第8回】

『スター・ウォーズ:ビジョンズ』「のらうさロップと緋桜お蝶」レビュー|アニメファンの心をくすぐる美術背景とウサギをモチーフにした主人公!涙なしでは見られない家族の物語【全作レビュー連載第8回】

オタク心がくすぐられる!? 日本要素が盛りだくさんの美術背景

皆さんは『スター・ウォーズ』と聞くと、どのような光景が思い浮かびますか? 宇宙、戦艦、クローンの軍勢、ライトセーバー、ジェダイが着ているローブなどなど、人によって違うと思います。

日本のクリエイターたちが、それぞれの目線で『スター・ウォーズ』の物語を描いた『スター・ウォーズ:ビジョンズ』は、9作品それぞれに“日本”が現れているのが特徴的です。この「のらうさロップと緋桜お蝶」にも日本らしさを感じさせられる要素がたくさん詰まっています。

たとえば、どこか沖縄を彷彿させるような自然豊かな“惑星タオ”。その惑星の一家の長である弥三郎は、帝国軍の技術支援を受けながら、美しい自然を失うかもしれないという危惧で反乱を起こします。

技術が進歩するにつれて森や海の美しさが消えていってしまう……どこか今の日本や環境破壊が進んでいる世界を反映しているかのよう。『スター・ウォーズ』ではお馴染みの宇宙戦艦スター・デストロイヤーと機械的な建物が海の上に浮かんでいて、そのアンバランスが際立ちます(建物周辺の海は黒く濁っている描写まで細かく描かれていました)。

また、武士と『スター・ウォーズ』の世界観を混ぜたような衣装もオタク心をくすぐられるようなデザインになっているんです。ロップは和傘を背負っていたり、弥三郎は武士の普段着のような格好をしていたり、お蝶は着物を現代風にアレンジしたような服装になっています。

そのお蝶が帝国側についたときの服装がガラリと変わっているので、ハッキリと“帝国側についた”ことが服装からも感じ取ることができて「あぁ、そっちにいってしまったんだ……」と。

セリフはなくとも、美術背景や衣装などからキャラクターの心情や関係性が読み取れるところにオタ心がくすぐられますよね。「きっとこういうことがあったんだな」「こんな生活を送ってきたんだな」と想像がどんどん膨らむようなアニメーション技術が堪能できる作品です。

個人的に、アニメーション美術における日本ならではのクオリティーを強く感じたのは、ロップと弥三郎が1対1で話をするシーン。ここでロップの顔がアップに映りますが、キラキラと輝く目が本当に綺麗で見入ります。

クライマックスに向けての戦闘シーンでも、キャラクターの「目」に鳥肌が立つほどインパクトがあり印象に残っています。“目が生きている”からこそ、キャラクターの表情から気持ちがビリビリと伝わってくるんだな、と感じました。「画」の力の凄さに胸を打たれます。

主人公は可愛いウサギがモチーフ!『スター・ウォーズ』を見たことがないアニメファンに推したい作品

『スター・ウォーズ:ビジョンズ』は全9作品ありますが、その中でもこの「のらうさロップと緋桜お蝶」はこれまで『スター・ウォーズ』の世界に触れたことがないアニメファンに推したい作品でした。

「シリーズが長くて詳しくないから分からない」と思う方もいますが、そんなことはありません! どちらかというと、作品を見ていないほうが純粋に楽しめるんじゃないかな、と思うほどです。

また、本作の主人公・ロップはウサギがモチーフになっているキャラクターでもあるので可愛い。健気で真っ直ぐで家族想いなところが、なお良い……!

なぜ主人公をウサギ型人間種族にしたのかについて、五十嵐監督は「日本文化の中にある“キャラ”というものでなければいけないと思いました。“キャラ”というのはリアルな人間でなく、日本の美少女キャラクターに代表されるような、ビジュアルもパーソナリティーも極端にデフォルメされた存在です」と話し、日本のアニメやマンガの原点でもある手塚治虫さんの『地底国の怪人』の耳男から発想を得たようです。

「思わず抱きしめたくなるようなキャラクターにしようと開発していきました」と五十嵐監督がコメントを出しているように、モフモフで本当に可愛くて抱きしめたくなる主人公。だからこそ、これまで『スター・ウォーズ』に触れてこなかった方でも楽しめます。

日本の映画やアニメの影響を受けて製作されたのが『スター・ウォーズ』ですが、さらに独自の進化を遂げて原点に戻ってきたのが『スター・ウォーズ:ビジョンズ』。

今の日本のアニメ業界で活躍しているアニメ制作スタジオや監督陣が、それぞれの世界を広げて描くストーリーが9作品も楽しめるなんて本当に贅沢です。少しでも気になった方はぜひご覧ください!

[文/福室美綺]

連載バックナンバーはこちら!

◆【連載第1回】「The Duel」レビュー
◆【連載第2回】「タトゥイーン・ラプソディ」レビュー
◆【連載第3回】「赤霧」レビュー
◆【連載第4回】「T0-B1」レビュー
◆【連載第5回】「村の花嫁」レビュー
◆【連載第6回】「九人目のジェダイ」レビュー
◆【連載第7回】「The Elder」レビュー
◆【連載第8回】「のらうさロップと緋桜お蝶レビュー」
◆【連載第9回】「THE TWINS」

『スター・ウォーズ:ビジョンズ』とは

ディズニープラスにて独占配信

ジョージ・ルーカスが黒澤明作品や日本文化から多大な影響を受け制作した「スター・ウォーズ」の創造のルーツとも言える日本へルーカスフィルムが強いリスペクトを込めた「スター・ウォーズ」史上初の一大アニメプロジェクト。「スター・ウォーズ」の創造のルーツとなった“日本”、そしてその日本から新たに誕生する、「スター・ウォーズ」への期待が、世界的に高まっていく中で、エグゼクティブ・プロデューサーであるジェームズ・ウォーは「これは私たちが愛する“アニメ”という文化を生んだ日本へ贈るルーカスフィルムからのラブレターです。」と日本アニメに対する熱い想いを語る。参加したクリエイターたちが、<スター・ウォーズ>そして<日本のアニメ>への熱い情熱を持って創り上げる、独自のビジョンで描いた9つの「スター・ウォーズ」は9月22日(水)16時よりディズニープラスにて全9話一斉に日米同時配信される。

◆ディズニープラス公式サイト

(C)2021 TM & (C) Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.

 

福岡出身。触れた作品にすぐハマる、ちょろさNo.1ライター。好きな作品は『Free!』『NO.6』『十二国記』『ギヴン』『新世界より』など。好きな声優さんは保志総一朗さんと坂本真綾さん。ハッピーエンドよりも意義のあるトゥルーエンドや両片想いが大好物な関係性オタクで、主にイベントレポートやインタビューを担当しています。最近はVTuberがマイブーム。

この記事をかいた人

福室美綺
福岡出身。触れた作品にすぐハマる、ちょろさNo.1ライター。親友であり敵のような複雑な関係性が大好物です。

担当記事

関連記事
アニメファンなら高確率でハマる!? 美しいビジュアル、華やかな世界……『宝塚歌劇団』の4つの魅力ポイントをご紹介!
“清く、正しく、美しく”をモットーにしている「宝塚歌劇団」をみなさんはご存知でしょうか?宝塚歌劇団は、大正3年(1914年)に創立された格式ある女性だけの歌劇団です。花組・月組・雪組・星組・宙組の5組といずれの組にも所属しない専科に分かれており、団員はタカラジェンヌの愛称で親しまれています。近年では、アニメや漫画作品が宝塚歌劇団で上演されることが多くなり、名前だけ知っているという方も多いかもしれません。しかし、「敷居が高そう」「アニメファンの私には向かなさそう」「興味はあるけど……」と、足を踏み入れるにはなかなかの勇気がいるのも事実。だけどちょっと待ってください! “宝塚歌劇団はアニメ好きこそハマる”ということを、アニメライター6年、ヅカファン(宝塚歌劇団のファンの総称)歴10年の私が保証します!「夢とは見るものではなく、叶えるものです。でも、たとえ叶えられなくても、叶えるために努力する道のりが、私は夢だと思っています。」これは現在でも舞台を中心に活躍されている元男役トップスター・安蘭けいさんの言葉。トップスター就任まで長い道のりを歩んできたからこそ重みがある言葉で、宝塚劇団を知らない方でも自然と胸を打たれるのではないで...
関連記事
映画『るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning』緋村剣心と雪代縁の熱いアクションシーンを撮影レポート! 大友啓史監督のインタビューもお届け
日本映画の歴史を変えたエンターテインメント作品の頂点として君臨し続ける、アクション感動大作『るろうに剣心』シリーズ。その最新作『るろうに剣心 最終章TheFinal/TheBeginning』が、それぞれ2021年4月23日(金)、6月4日(金)より2作連続で全国公開となります。“最終章”と題し、今回剣心の前に立ち塞がるのはシリーズ最恐の敵・雪代縁。縁は剣心が人斬り抜刀斎だった頃に繋がる因縁の相手でもあります。そんな注目の映画『るろうに剣心最終章』の撮影現場に潜入!剣心と縁の熱いアクションシーンが繰り広げられる現場にお邪魔し、その様子をたっぷりとレポートしていきます。また、撮影現場の見学後に行われた大友啓史監督のインタビューも併せてお届け。これまでの映画『るろうに剣心』とはまったく違ったテイストになっているという“最終章”について語っていただきましたので、ぜひご覧ください。※取材は新型コロナウイルス感染症が流行する前に行われました。クライマックスシーンの撮影現場に潜入!今回お邪魔した現場は、剣心と縁が熱い戦いを繰り広げるアクションシーン。クライマックスのシーンということもあり、撮影現場に入ると熱気がすごく、その場の空気感だけで圧倒されます。...
関連記事
映画『るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning』緋村剣心と雪代縁の熱いアクションシーンを撮影レポート! 大友啓史監督のインタビューもお届け
日本映画の歴史を変えたエンターテインメント作品の頂点として君臨し続ける、アクション感動大作『るろうに剣心』シリーズ。その最新作『るろうに剣心 最終章TheFinal/TheBeginning』が、それぞれ2021年4月23日(金)、6月4日(金)より2作連続で全国公開となります。“最終章”と題し、今回剣心の前に立ち塞がるのはシリーズ最恐の敵・雪代縁。縁は剣心が人斬り抜刀斎だった頃に繋がる因縁の相手でもあります。そんな注目の映画『るろうに剣心最終章』の撮影現場に潜入!剣心と縁の熱いアクションシーンが繰り広げられる現場にお邪魔し、その様子をたっぷりとレポートしていきます。また、撮影現場の見学後に行われた大友啓史監督のインタビューも併せてお届け。これまでの映画『るろうに剣心』とはまったく違ったテイストになっているという“最終章”について語っていただきましたので、ぜひご覧ください。※取材は新型コロナウイルス感染症が流行する前に行われました。クライマックスシーンの撮影現場に潜入!今回お邪魔した現場は、剣心と縁が熱い戦いを繰り広げるアクションシーン。クライマックスのシーンということもあり、撮影現場に入ると熱気がすごく、その場の空気感だけで圧倒されます。...
もっと見る
関連記事
キャラソンメドレーやシークレットゲストで沸いた!保志総一朗さん25周年アニバーサリーライブレポート
2018年8月19日(日)、豊洲PITにて保志総一朗さんの声優活動25周年アニバーサリーライブ「VoiceandHarmony」が開催されました。保志さんがライブを行うのは、2016年5月に行われた2ndLIVE以来の約2年ぶり。5月30日にアニバーサリーアルバムの発売を記念して行われた今回のライブでは、待ちに待ったファンたちで大いに賑わいました。本稿では、シークレットゲストの登場やキャラクターソングメドレーなど、約3時間半にも及んだライブの模様をたっぷりとお届けします!最初から全力疾走!声優活動25年の歴史を感じる楽曲のオンパレード青色の光で埋め尽くされる会場内で、今か今かと待ちわびるたくさんのファンたち。「アニバーサリーライブの始まりだーっ!」と、スパンコールがあしらわれた黒のジャケットに紫色のパンツというフォーマルな衣装で保志さんが登場!記念すべき1曲目は、アニバーサリーアルバムの1曲目に収録されている「Harmony〜夢のチカラ〜」。保志さん自身が作曲した楽曲でアニバーサリーライブのスタートです!続いて披露した「CrystalBlaze」は保志さんが作曲・作詞を手がけた楽曲。「ヘイ!ヘイ!ヘイ!」とステージ上を移動しては、会場のファンたちを煽り、最初から全力投球の...
関連記事
『アイドリッシュセブン』ŹOOĻ 1st Album “einatZ” 発売記念インタビュー|広瀬裕也さん、木村昴さん、西山宏太朗さん、近藤隆さん、4人で歌う意味が込められているAlbumに
アプリゲーム『アイドリッシュセブン』に登場するユニット、ŹOOĻ(ズール)の1stAlbum“einsatZ(アインザッツ)”が2020年11月25日(水)に発売となりました。そこで今回、アニメイトタイムズではアルバム発売記念として、亥清悠役の広瀬裕也さん、狗丸トウマ役の木村昴さん、棗巳波役の西山宏太朗さん、御堂虎於役の近藤隆さんにインタビューを実施!アルバム曲に込められた想い、それぞれが感じたキャラクターの成長、そして新たなŹOOĻとしての魅力……たっぷりと語っていただきました。すでにアルバムを手に取られた方は、ぜひ曲を聴きながら、歌詞カードを読みながら最後までご覧ください。【アルバム】アイドリッシュセブンZOOL1stAlbum「einsatZ」豪華盤完全限定生産 「einsatZ」はŹOOĻの初アルバムにぴったりのタイトル──最初に、ŹOOĻ初のアルバムが発売されると聞いたときの気持ちをお聞かせください。広瀬裕也さん(以下、広瀬):ほかのグループの方々もアルバムを出されていて、僕も『アイナナ』のファンですので羨ましさを感じつつ、“ŹOOĻももっと曲数が増えたら良いな〜”という気持ちがあったので、すごく嬉しかったです。嬉しさに加えて、“どんな歌を歌うんだろうなぁ”と妄想が膨らみま...
おすすめタグ
あわせて読みたい

スター・ウォーズ:ビジョンズの関連画像集

おすすめ特集

今期アニメ曜日別一覧
2025年冬アニメ一覧 1月放送開始
2024年秋アニメ一覧 10月放送開始
2025年春アニメ一覧 4月放送開始
2024年夏アニメ一覧 7月放送開始
2024秋アニメ何観る
2024秋アニメ最速放送日
2024秋アニメも声優で観る!
アニメ化決定一覧
声優さんお誕生日記念みんなの考える代表作を紹介!
平成アニメランキング