この記事をかいた人
- 福室美綺
- 福岡出身。触れた作品にすぐハマる、ちょろさNo.1ライター。親友であり敵のような複雑な関係性が大好物です。
皆さんは『スター・ウォーズ』と聞くと、どのような光景が思い浮かびますか? 宇宙、戦艦、クローンの軍勢、ライトセーバー、ジェダイが着ているローブなどなど、人によって違うと思います。
日本のクリエイターたちが、それぞれの目線で『スター・ウォーズ』の物語を描いた『スター・ウォーズ:ビジョンズ』は、9作品それぞれに“日本”が現れているのが特徴的です。この「のらうさロップと緋桜お蝶」にも日本らしさを感じさせられる要素がたくさん詰まっています。
たとえば、どこか沖縄を彷彿させるような自然豊かな“惑星タオ”。その惑星の一家の長である弥三郎は、帝国軍の技術支援を受けながら、美しい自然を失うかもしれないという危惧で反乱を起こします。
技術が進歩するにつれて森や海の美しさが消えていってしまう……どこか今の日本や環境破壊が進んでいる世界を反映しているかのよう。『スター・ウォーズ』ではお馴染みの宇宙戦艦スター・デストロイヤーと機械的な建物が海の上に浮かんでいて、そのアンバランスが際立ちます(建物周辺の海は黒く濁っている描写まで細かく描かれていました)。
また、武士と『スター・ウォーズ』の世界観を混ぜたような衣装もオタク心をくすぐられるようなデザインになっているんです。ロップは和傘を背負っていたり、弥三郎は武士の普段着のような格好をしていたり、お蝶は着物を現代風にアレンジしたような服装になっています。
そのお蝶が帝国側についたときの服装がガラリと変わっているので、ハッキリと“帝国側についた”ことが服装からも感じ取ることができて「あぁ、そっちにいってしまったんだ……」と。
セリフはなくとも、美術背景や衣装などからキャラクターの心情や関係性が読み取れるところにオタ心がくすぐられますよね。「きっとこういうことがあったんだな」「こんな生活を送ってきたんだな」と想像がどんどん膨らむようなアニメーション技術が堪能できる作品です。
個人的に、アニメーション美術における日本ならではのクオリティーを強く感じたのは、ロップと弥三郎が1対1で話をするシーン。ここでロップの顔がアップに映りますが、キラキラと輝く目が本当に綺麗で見入ります。
クライマックスに向けての戦闘シーンでも、キャラクターの「目」に鳥肌が立つほどインパクトがあり印象に残っています。“目が生きている”からこそ、キャラクターの表情から気持ちがビリビリと伝わってくるんだな、と感じました。「画」の力の凄さに胸を打たれます。
『スター・ウォーズ:ビジョンズ』は全9作品ありますが、その中でもこの「のらうさロップと緋桜お蝶」はこれまで『スター・ウォーズ』の世界に触れたことがないアニメファンに推したい作品でした。
「シリーズが長くて詳しくないから分からない」と思う方もいますが、そんなことはありません! どちらかというと、作品を見ていないほうが純粋に楽しめるんじゃないかな、と思うほどです。
また、本作の主人公・ロップはウサギがモチーフになっているキャラクターでもあるので可愛い。健気で真っ直ぐで家族想いなところが、なお良い……!
なぜ主人公をウサギ型人間種族にしたのかについて、五十嵐監督は「日本文化の中にある“キャラ”というものでなければいけないと思いました。“キャラ”というのはリアルな人間でなく、日本の美少女キャラクターに代表されるような、ビジュアルもパーソナリティーも極端にデフォルメされた存在です」と話し、日本のアニメやマンガの原点でもある手塚治虫さんの『地底国の怪人』の耳男から発想を得たようです。
「思わず抱きしめたくなるようなキャラクターにしようと開発していきました」と五十嵐監督がコメントを出しているように、モフモフで本当に可愛くて抱きしめたくなる主人公。だからこそ、これまで『スター・ウォーズ』に触れてこなかった方でも楽しめます。
日本の映画やアニメの影響を受けて製作されたのが『スター・ウォーズ』ですが、さらに独自の進化を遂げて原点に戻ってきたのが『スター・ウォーズ:ビジョンズ』。
今の日本のアニメ業界で活躍しているアニメ制作スタジオや監督陣が、それぞれの世界を広げて描くストーリーが9作品も楽しめるなんて本当に贅沢です。少しでも気になった方はぜひご覧ください!
[文/福室美綺]
ディズニープラスにて独占配信
ジョージ・ルーカスが黒澤明作品や日本文化から多大な影響を受け制作した「スター・ウォーズ」の創造のルーツとも言える日本へルーカスフィルムが強いリスペクトを込めた「スター・ウォーズ」史上初の一大アニメプロジェクト。「スター・ウォーズ」の創造のルーツとなった“日本”、そしてその日本から新たに誕生する、「スター・ウォーズ」への期待が、世界的に高まっていく中で、エグゼクティブ・プロデューサーであるジェームズ・ウォーは「これは私たちが愛する“アニメ”という文化を生んだ日本へ贈るルーカスフィルムからのラブレターです。」と日本アニメに対する熱い想いを語る。参加したクリエイターたちが、<スター・ウォーズ>そして<日本のアニメ>への熱い情熱を持って創り上げる、独自のビジョンで描いた9つの「スター・ウォーズ」は9月22日(水)16時よりディズニープラスにて全9話一斉に日米同時配信される。
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福岡出身。触れた作品にすぐハマる、ちょろさNo.1ライター。好きな作品は『Free!』『NO.6』『十二国記』『ギヴン』『新世界より』など。好きな声優さんは保志総一朗さんと坂本真綾さん。ハッピーエンドよりも意義のあるトゥルーエンドや両片想いが大好物な関係性オタクで、主にイベントレポートやインタビューを担当しています。最近はVTuberがマイブーム。