楠木ともりさん、22歳のバースデーライブは笑顔に包まれて――『Reunion of Sparks』レポート|メジャーデビュー以降にリリースした楽曲をすべて披露
2022年初夏に4thEPのリリース、夏にZeppツアー(東京・名古屋・大阪・福岡)の開催が決定! 楠木ともりさんが22歳の誕生日当日の2021年12月22日に「Kusunoki Tomori Birthday Live 2021『Reunion of Sparks』」を豊洲PITで行った。メジャーデビュー後初となる有観客でのワンマンライブ。声優であり、自身で作詞・作曲をするシンガーソングライターでもある彼女の音楽の魅力がぎゅっと凝縮されたステージだった。
メジャーデビュー以降にリリースした楽曲をすべて披露!笑顔に包まれたバースデーライブ
会場が暗転し真っ暗になると大きな拍手が起こる。メジャーデビュー前も彼女はワンマンライブをしてきていたのだが、デビューしてからはコロナ禍とも重なり、一度も有観客でのワンマンライブができていなかった。その分、会場に詰めかけた多くのファンは、どんなライブになるのかを楽しみにしていたと思う。だからこそ、拍手のあとの真っ暗で静寂に包まれた時間は、集中力を高める時間になっていた。その静寂を打ち破りドラムのカウントから「アカトキ」のイントロが流れると、真っ白な衣装をまとって登場した楠木ともりが、伸びやかな歌を響かせる。会場からも自然とクラップが起こっていた。
これはあくまで個人的な印象になるが、久しぶりという感覚なのか、“はじめまして”だからなのか、観客にも少しだけ緊張があったように思う。席を立っていいのか? ここでクラップをしていいのか?というちょっとした迷いが感じられたのだ。でもそれが何とも初々しくて、この緊張感こそがライブの醍醐味だと思った。
MCで「人がいる!」と驚いた表情を見せると、まず最初に「座ったままだとあれなので、立ちましょうか」と声をかける。もちろん次の曲のことも考えてのことだろうが、ここでグッと距離を詰めたのが良かった。そのあと、音楽を感じて自由に体を動かして楽しんでほしい、と彼女も想いを伝え「ハミダシモノ」へと続いていく。
ステージの後方には4つの異なるサイズの正方形のスクリーンが用意され、そこに様々な映像を映し出していくのだが、この曲では花や万華鏡の美しい映像をバックに歌っていく。バンドサウンドの中でもスーッと抜けてくる歌声でAメロやBメロを歌い、サビではサウンドに負けない力強い声を叩きつけるという緩急。これはもはや彼女の得意とするところかもしれない。どこか余裕すら感じるパフォーマンスだった。「眺めの空」では、映し出された雲の色が変わっていく中、エモーショナルな歌声が響き渡る。特に落ちサビからのラスサビの爆発力と繊細な曲の締めくくり方は見事で、このライブにかける思いも感じ取れた。
続いては、少し雰囲気を変えての「よりみち」。リリックビデオの街の描写を映し出しつつ、彼女自身はステージを歩いたり、セットに腰掛けたりしながら歌う。生演奏によってムーディーになった感じもまた良くて、楽曲の新たな魅力を引き出していた。星空を映し出し、ピアノと歌声で静かに始まった「sketchbook」は、溶けて消えいりそうな歌声に目を閉じて聴き入ってしまう。最後のコーラス部分の歌声もとても美しかった。
客席に、初めて楠木のライブに来るというお客さんが多いことを確認し、インディーズ時代のワンマンライブでよくカヴァーをしていたことを説明すると、ゆったり聴いてほしいと星野源の「未来」を歌う。この曲は震災直後に書かれたもので、不安や絶望の中にかすかな光が感じられる。それを今の世界の状況と重ね、彼女自身も「励まされた」のだという。そんな言葉たちをしっかりと大切に届けると、次は、みゆなの「くちなしの言葉」をアコースティックで披露。心地よく揺れるボーカルと、後半ベースが加わりグルーヴィになっていく感じが素晴らしかった。
ファンに向かって打ち明けた想い、満員の会場は彼女を勇気づける
「ここから3曲、盛り上げたい!」と言って、再び自身の楽曲へ。「Forced Shutdown」は、ライブで聴いて、なんて難解なアレンジなんだ!と改めて驚かされたが、曲に心酔しながら豊かな表現力で歌い上げていく。サウンド的にもボーカル的にも突き抜けた「ロマンロン」で会場と一緒に盛り上がると、「熾火」ではさらに爆発力のある歌声と演奏で会場を熱くする。途中のバンド紹介でのソロ回しもカッコ良かったし、終わったあともこの日一番の大きな拍手が起こっていた。
「ここ1年くらいは、今までにないくらい落ち込んでいた時期があって、自分はみんなの前に立つ意味があるのだろうかと考え始めてしまったんです。声優でも歌手でも素敵な方がたくさんいる中で、自分がやりたいことを発信しても、それは求められているのかしら?って。そういう気持ちでいたら曲も書けなくなってきて、仕事もどうしようかという時期がありました。私の音楽や声を求めているのかなって、3rdEPを出すまでも不安だったけど、やりたい気持ちは自分の中にあるから続けて頑張っていたんです。でも、こうして皆さんが目の前にいることが答えだなと今、思います!」と気持ちを吐露する。
コロナ禍でメジャーデビューし、実際に目の前にファンがいる状態で自分のライブをしていなかったことは大きかったと思う。実際にファンからの声は届いているし、配信ライブを見てくれた人がいることを知っていても、そこに実際に人がいるという現実に勝るものはない。それに加えて、彼女は他の声優アーティストがやっていないようなことをしているところがあるから、見えない不安も大きいのだろう。でも満員の会場は確実に彼女を勇気づけたと思う。
そして「この日のライブ楽しかったな、普段辛いことがあるけど、この日はそれを忘れられたなと、少しでも思ってもらえるライブにしたいと思い、ここに立っています」と伝え、不安な時期を支えてくれたファンや家族やスタッフへ向け、心のこもった「バニラ」を届ける。バンドの残響感と感情の乗ったボーカルに感動すると、最後は、3rdEPから、クリスマスのムードも感じられる「narrow」。切なさもありつつ、しっかり前を向いていて、サウンド的にハッピーさも感じられる曲は、本編を締めくくるのにふさわしかった。
アンコールでは、リリックビデオを映し出しながら「タルヒ」を歌う。浮遊感のあるイントロと〈寒さを知らなければ 誰かをあたためられないでしょう〉という、光を灯してくれる言葉が温かい。息を多めにウィスパー気味に歌う特徴的なボーカルと肯定感のある言葉たち、そしてサウンドの厚み……多くの人に力を与えることができる曲だと改めて感じた。
歌い終わってすぐ「生きていて良かったと思いました」と思わずこぼしていたが、本当にそう思える曲だ。「明日もその次の日も毎日がタルヒになるよう、祈りながら歌わせてもらいました」と伝え、最後は彼女の今ある曲の中で、おそらく一番ポップで明るい「僕の見る世界、君の見る世界」を歌って、笑顔でライブを終えた。
……のだが、最後に記念写真を撮影しようとしたところで、バンドメンバーの「HAPPY BIRTHDAY」の演奏と共にケーキのプレゼントが! 12月22日は彼女の誕生日当日。果たして22歳はどんな1年になるのか。2日後の大阪公演で、2022年初夏には4thEPのリリースが、夏にはZeppツアーの開催決定が発表され、すでに楽しいことは待ち構えている。これまで当たり前だったことだが、また次のライブでと約束ができることは素晴らしいことだ。次のライブまで、今日のこの温かい光景を心に留めておきたいと思う。
[文・塚越淳一]
最新リリース情報
楠木ともり 3rdEP「narrow」
NOW ON SALE
■初回生産限定盤A[CD+BD] VVCL-1936~1937 / ¥4,950(税込)
■初回生産限定盤B[CD+DVD] VVCL-1938~1939 / ¥4,950(税込)
■フォトブック盤(初回生産限定盤C)[CD+フォトブック] VVCL-1940~1941 / ¥2,640(税込)
■通常盤[CD] VVCL-1942 / ¥1,650(税込)
【収録内容】
[CD]
01. narrow(作詞・作曲︓楠木ともり 編曲︓重永亮介)
02. よりみち(作詞・作曲︓楠木ともり 編曲︓武内駿輔)
03. 熾火(作詞・作曲︓楠木ともり 編曲︓荒幡亮平)※読み︓おきび
04. タルヒ(作詞・作曲︓楠木ともり 編曲︓やぎぬまかな)
05. narrow -Instrumental-
06. よりみち -Instrumental-
07. 熾火 -Instrumental-
08. タルヒ -Instrumental-
[Blu-ray・DVD]
・narrow -Music Video-
・よりみち -Lyric Video-
・熾火 -Lyric Video-
・タルヒ -Lyric Video-
・ライブ映像 Tomori Kusunoki Story Live 「LOOM-ROOM #725 -ignore-」全編収録
※Blu-ray・DVD共通
★DOWNLOAD&STREAMINGはこちら
■「narrow」Music Video
■「よりみち」Lyric Video
■「熾火」Lyric Video
■「タルヒ」Lyric Video
楠木ともりプロフィール
1999年12月生まれ。声優、シンガーソングライターとして活動中。
代表作として、TVアニメ『ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン』の主役・レン役、『遊☆戯☆王SEVENS』霧島ロミン役、『ラブライブ︕虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』優木せつ菜役など。現在放送中のTVアニメ『マブラヴ オルタネイティヴ』ヒロイン・鑑純夏役やTVアニメ『先輩がうざい後輩の話』ヒロイン・五十嵐双葉役として出演。
2020年8月TVアニメ『魔王学院の不適合者』EDテーマ「ハミダシモノ」にてソロメジャーデビュー。続いて発表した2021年4月リリース2nd EP「Forced Shutdown」、同年11月リリースの3rd「narrow」も全てオリコン週間トップ10入りを果たす。声優活動を精力的に行いながら、自身で作詞作曲し、ライブグッズのデザインも手掛けるなど、多方面で才能を開花させている。