映画
『銀英伝 Die Neue These 激突』宮野真守・鈴村健一対談

『銀河英雄伝説 Die Neue These 激突』上映記念──ラインハルト役・宮野真守さんとヤン役・鈴村健一さんの対談インタビュー!二人が部下にしたいキャラクターは?

 

演じるごとに人間らしさを感じるラインハルトと、理解が深まるほど難しさを実感するヤン

――ここまで長く同じキャラクターを演じることは珍しいと思いますが、演じ始めた時と比べてキャラの印象や想いが変わったところ、または変わっていないところは?

宮野:演じる前は、ラインハルトに絶対的なオーラや存在感を客観的に感じていましたが、いざ演じてみると彼の内面を知って、人間的な面がどんどん見えてきて、演じるごとに彼の人間らしさがわかってきました。

鈴村:長年同じキャラクターを演じているとなじんでくるものですが、ヤンは理解が深まれば深まるほど、難しさを実感しています。

宮野:ヤンは難しいと思う。

鈴村:ラインハルトは人間臭さが見えてきて、人間的な幅が出てきましたが、ヤンは既に完成している人というイメージがあって。成長するというよりも「ヤンならどうするか?」という選択を迫られるお芝居が多くて。

ドラマが進んでいくと、「ヤンはこんなことを言うんだ?」とか「こんなこと思うんだ?」ということが起きるし、それに対応しないといけないので、なかなか手ごわいなと。なじませる作業をしながらも、やればやるほど深淵に近づく役だなとここ最近感じます。

――お互いが演じるキャラクターについて魅力を感じる点はどこでしょうか。

宮野:二人の精神性はまったく違うと思っていて。ラインハルトは「大切な人を守ること」=「宇宙を支配すること」につながると思っているから、宇宙を手に入れようと向かっていますが、ある意味それって、一番大きな私情じゃないですか?

鈴村:そうだよね。その1つのためだけに宇宙を変えようとするのはすごいよね。

宮野:決して独裁をしようとか、私利私欲のためとか考えてはいなくて。自分が虐げられていた世の中とは違う社会を作りたいという高い志があるし、国の制度を変えたりしているのは立派だけど、その根本は私情なんですよね。

一方のヤンは達観していて、歴史を学んできたからこそ、自分が生きて戦っている今も歴史の一部にすぎないと悟ってしまっていることは、すごさだけではなく、怖さも感じます。ヤンの目的は得体が知れないからこそ、ヤンの存在に興味を持ってしまうし。

間違いを正すとか、大切な人を守るという方向に向かってはいるけど、戦いの歴史が繰り返されることもわかっているという。

鈴村:本作に関わる前から「銀河英雄伝説」の原作を読んで、石黒版のアニメを拝見していまして、最初はヤンのほうが好きでしたが、物語の中盤以降に差し掛かると、ラインハルトにとても興味が湧いてきたんですよ。

ラインハルトもヤンも突出した才能を持っていますが、ヤンはここ数十年の戦争を止めることしかできないことがわかっているから、それだけをやろうという精神性で、超リアリストだと思います。

それに対してラインハルトはロマンチストだと思うんです。銀河を統一することで平和な世の中にしたいと考えてはいるけど、お姉さんを皇帝に奪われた過去があるから、貴族たちが我が物顔で振舞う社会をまずは変えなければいけないし、同盟と戦争中だから、戦争も無くさなきゃいけないとかやることがいっぱいあってだいたいの人は無理とか理想だとあきらめてしまうと思うんですよ。でも、ラインハルトは本気で成し遂げようとするし、その彼の姿勢や理念に賛同して仲間が集まってきて、めちゃめちゃカッコいいんです。

超人的だなと思っていたラインハルトはこれからもっとカッコよくなるし、もっとかわいくなります(笑)。一見、ヤンのほうが感情豊かに見えるけど、実はそうではなく、冷徹に見えるラインハルトのほうが人間臭いということが4年かけてやっと見えてくるのがおもしろいですね。
 

 

セカンドシーズンで印象深ったキルヒアイスの死

――前回のセカンドシーズンで印象深かったエピソードやシーンを挙げるとすると?

鈴村:セカンドシーズンってどのあたりでしたっけ(笑)。

宮野:キルヒアイスがいなくなってしまうところですね。

鈴村:そこ本当に山場だよね。

宮野:ラインハルトにとっては本当に大きいところです。彼を形成する上で本当にキルヒの存在は大きくて重要な出来事だったんですよね。死後もラインハルトの中にずっとキルヒがいますし、今後も重要な存在になるとわかるシーンだったと思います。

鈴村:ラインハルトにとっては一番大きいよね。

宮野:そうですね。今後もその約束にある意味囚われていくことにもなるので。

鈴村:ヤンの陣営でいえば、内部のゴタゴタがより強くなり始めたことかなと。自由惑星同盟は民主主義国家だと言っている割には、同盟と帝国、どちらが民主主義なのかなと思わせる部分が出てきて。

今回のサードシーズンにもつながってきますが、ヤンが「君はトップ取れるよ」とけしかけられたシーンはドキっとしました。

ヤンはトップに立つ資質はあると思いますし、やったらおもしろいと思うけど、ラインハルトと対照的で、本人にはまったくその気がないんです。

二人とも同じ思想を持ちながらもまったく対照的というのが「銀河英雄伝説」のおもしろいところですよね。見ている人はヤンに自由惑星同盟のトップに立ってほしいと思いながら見ているけど、ならないところが描かれているのにリアルで。

だからこそ群像劇になっていくし、ヤンの代わりの人が出てくるのかとか、それを邪魔する人が出てくるのかなとか、自由惑星同盟が一筋縄ではいかない様子が描かれていたかなと思います。

 

(C)田中芳樹/銀河英雄伝説 Die Neue These 製作委員会
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