この記事をかいた人
- わたなべみきこ
- 出産を機にライターになる。『シャーマンキング』『鋼の錬金術師』『アイドリッシュセブン』と好きなジャンルは様々。
見逃せない作品が揃う2022年春アニメの中でも、とりわけ大きな注目を集めている『SPY×FAMILY』。
主人公で父のロイドはスパイ、母のヨルは暗殺者、娘のアーニャは人の心を読める超能力者(エスパー)。そんな3人が互いの正体を隠したまま、かりそめの家族・フォージャー家として暮らすハプニングだらけの日常を描いたホームコメディ漫画作品です。
原作の面白さはもちろんのこと、ロイド役に江口拓也さん、アーニャ役に種﨑敦美さん、ヨル役に早見沙織さんなど人気声優が起用されたことも相まって、放送前から大きな話題に。
第1話放送後は、多くのファンが感想をツイートしたことによりTwitterで関連ワードがいくつもトレンド入りするなど、本作が多くの人に支持されていることを改めて実感しました。
かく言う私も、放送前に原作を手に取り読んでみたところ見事に大ハマり。あっという間に最新話まで読んでしまい、それだけに止まらず滅多に買うことのないLINEスタンプまで購入してしまう始末です。
物語のテンポ感や緩急、そしてキャラクターの良さなどをひしひしと感じながら、10話ほど読み進めたあたりで「こんなのみんな好きじゃん!」と声に出してしまったのですが、多くの人がこの作品に惹かれるのは、作中に散りばめられた“ギャップ”にあるのではないかと思い至りました。
“ギャップ”とは大きなズレ、食い違いのことを指す言葉ですが、『SPY×FAMILY』はキャラクターやストーリーの各所に“ギャップ”が散りばめられており、そこに私たちは面白さを感じ、どんどん惹かれていくのではないでしょうか。
今回は“ギャップ”に注目して本作の魅力に迫ってみたいと思います。
『SPY×FAMILY』作品情報
敏腕スパイであるロイドよりも大きなギャップを持っているのはアーニャとヨルだと感じます。
まずは、孤児院から引き取られたアーニャ。子どもらしい天真爛漫な姿を見せる彼女は、超能力で人の心を読んだ際にも素直な反応を見せ、一見するとギャップはあまりないように思えます。
明かされていないアーニャの出生や超能力の秘密、経歴が本作の最大のギャップであり、鍵になることが予想されます。
次に、妻のヨルは、暗殺者と思えないほど普段はおっとりとした性格。表社会で働く市役所では、独り身であることを同僚の女性たちにバカにされていても、それに気づかないほど天然な一面を見せています。
ですが、それ以上に私がヨルを本物の暗殺者だと感じるのは、暗殺者であることを鋭い観察眼を持っているはずのロイドにさえ勘付かれていないということ。敏腕スパイである彼ならば、少しでもボロを出せば危険な人物であることに気付きそうなものですが、ヨルは完璧に隠し通しています。
このことこそがヨルが真の暗殺者であり、表の顔と裏の顔を完全に使い分けている証拠なのです。
一方、本作の主人公・ロイドのギャップは不意に見せる優しさです。敏腕スパイである彼は、詳しく描かれてはいないものの、これまで数々のスパイ任務に従事してきたことでしょう。
職業柄多くの人を欺き、時には人を殺めることもあったと推測されますが、己の感情に蓋をして冷静沈着に任務を遂行してきたことは、彼の言動から容易に想像できます。
アーニャが敵にさらわれてしまうアニメ第1話。本当に冷徹なスパイであれば、わざわざリスクを冒して敵地に乗り込むことはせず、アーニャを見捨てて自分は身を隠し、また別の子どもを孤児院からもらってくるのでしょう。
しかし、ロイドはそうすることができません。それどころか、アーニャを危険に巻き込んだことを自分の失態と捉えます。
この優しさはスパイとしては評価されない部分なのかもしれません。ですが、そんな彼の人間らしさが私たち視聴者(読者)を惹きつける魅力なのです。
ギャップの魅力はキャラクターだけではなくストーリーにも。本作は互いの正体を隠しているためにフォージャー家で起こるハプニングだらけの日常がストーリーの中心です。
そんな彼らが紡ぐ、笑えてほっこりできるストーリーの合間に挟まれるシリアスシーンが、スパイスのようにピリッと効いていることも私たちが本作に魅了されるポイントです。
第1話でもロイドがアーニャの育児に奮闘するほっこりシーンの中に、つらい経験を持っているアーニャの過去やロイドがスパイという職に就いたバックグラウンドが差し込まれます。このギャップが物語に深みを生み、気が付くと視聴者(読者)は本作に魅了されてしまっているのです。
アーニャやロイドのさらに詳しいバックグラウンドに加え、それ以上に明かされていないヨルの幼少期や暗殺者になった経緯など、今後も注目ポイント多数! 1話1話、目が離せません。
今回取り上げたもの以外にも『SPY×FAMILY』には数多くのギャップが盛り込まれています。とりわけ、登場人物たちのギャップには驚かされることばかり。これから様々なキャラクターが登場しますが、ギャップを抱えていない人物などいないと思うほど、視聴者の多くが抱くであろう第一印象をことごとく裏切ってきます。
ようやく家族として動き出したフォージャー一家。お互いに正体を秘密にしているにも関わらず、それぞれの能力が絶妙に噛み合って、予想外に事件を解決してしまうところも本作の見どころのひとつです。
小野賢章さんをはじめとした新キャストも追加され、まだまだこれから盛り上がりが期待される『SPY×FAMILY』。ぜひ“予想を裏切られる感覚”を楽しんでください。
[文/わたなべみきこ]
1990年生まれ、福岡県出身。小学生の頃『シャーマンキング』でオタクになり、以降『鋼の錬金術師』『今日からマ王!』『おおきく振りかぶって』などの作品と共に青春時代を過ごす。結婚・出産を機にライターとなり、現在はアプリゲーム『アイドリッシュセブン』を中心に様々な作品を楽しみつつ、面白い記事とは……?を考える日々。BUMP OF CHICKENとUNISON SQUARE GARDENの熱烈なファン。
2022年4月9日(土)〜
テレビ東京ほかにて放送開始
人はみな 誰にも見せぬ自分を 持っている――
世界各国が水面下で熾烈な情報戦を繰り広げていた時代。
東国(オスタニア)と西国(ウェスタリス)は、十数年間にわたる冷戦状態にあった。
西国の情報局対東課〈WISE(ワイズ)〉所属である凄腕スパイの〈黄昏(たそがれ)〉は、東西平和を脅かす危険人物、東国の国家統一党総裁ドノバン・デズモンドの動向を探るため、ある極秘任務を課せられる。
その名も、オペレーション〈梟(ストリクス)〉。
内容は、“一週間以内に家族を作り、デズモンドの息子が通う名門校の懇親会に潜入せよ”。
〈黄昏(たそがれ)〉は、精神科医ロイド・フォージャーに扮し、家族を作ることに。
だが、彼が出会った娘・アーニャは心を読むことができる超能力者、妻・ヨルは殺し屋だった!
3人の利害が一致したことで、お互いの正体を隠しながら共に暮らすこととなる。
ハプニング連続の仮初めの家族に、世界の平和は託された――。
原作:遠藤達哉(集英社「少年ジャンプ+」連載)
監督:古橋一浩
キャラクターデザイン:嶋田和晃
総作画監督: 嶋田和晃 浅野恭司
助監督:片桐崇 高橋謙仁 原田孝宏
色彩設計:橋本賢
美術設定:谷内優穂 杉本智美 金平和茂
美術監督:永井一男 薄井久代
3DCG監督:今垣佳奈
撮影監督:伏原あかね
副撮影監督:佐久間悠也
編集:齋藤朱里
音楽プロデュース:(K)NoW_NAME
音響監督:はたしょう二
音響効果:出雲範子
制作:WIT STUDIO×CloverWorks
OP:「ミックスナッツ」Official髭男dism
ED:「喜劇」星野源
ロイド・フォージャー:江口拓也
アーニャ・フォージャー:種﨑敦美
ヨル・フォージャー:早見沙織
フランキー・フランクリン:吉野裕行
シルヴィア・シャーウッド:甲斐田裕子
ヘンリー・ヘンダーソン:山路和弘