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- 逆井マリ
- 神奈川県横浜市出身。音楽フリーペーパー編集部を経て、フリーのライターとしてインタビュー等の執筆を手掛ける。
──さきほど「もっと面白いルートがあるのなら探してみたいと思う時がある」といったお話がありました。監督はいろいろな道を探る、案内役の立場でもあるんだなとハッとしました。
増井:そうですね。僕は監督という仕事を交通整理みたいな仕事だなと思っています。大きい駐車スペースに車を誘導する係の人がいるじゃないですか。ああいうイメージ。「あっちのほうが良さそうなので、あっちに止めて下さい」とか「そこに止めて下さい」とか。ごちゃごちゃにならないように、案内・整備する係だなぁと思いました。
黒沢:すごいお仕事だ……。
高垣:我々は監督に導かれています。
黒沢:心が広くないとできないなぁと思います。私は舞台に出演する機会も多いんですが、演劇の場合は監督はもちろん、演出家、美術家、照明担当の方、音響監督とも直接喋るんですよね。「今日は湿度どうですか?」「じゃあこのくらいの声でいってみようか」とか、積極的にやりとりをします。
でもアニメ監督の場合は、直接アニメーションを作られている方や、声を出してる方に、面と向かってなにかを言う場面って意外と少ないイメージがあります。作画監督や撮影監督など、各セクションのリーダーとやりとりするイメージです。
増井:そうですね。例えば演劇の場合は監督が表立って指導すると思うんです。中にはスパルタ的なご指導をされる方もいらっしゃると思います。それに比べると、アニメ監督の場合は文通のようなイメージのやりとり(笑)。
黒沢:文通……! なるほど!
増井:だからこそ、アニメーションの現場ってコロナ禍でも回っているような気がします。リモートでも意思疎通が取りやすいですから。
黒沢:なるほど……! 少し話はそれてしまいますが、今のアフレコの(少人数制の)形ってこれからもしばらく続きそうだと思っていて。この時代ならではのクリエイションの仕方というのは、私も演者サイドのひとりとして探していきたいなと思っているんです。
それで聞いてみたいなと思っていたんですが、監督は最終的に組み上がったときに違和感を覚えることはありませんか?
増井:違和感はないんですが……こういう時代になる前は、アフレコブースに声優の皆さんが一斉に集まって、揃って録っていて。その場の掛け合いだからこそ生まれるものがあったと思うんです。最近はそれがないので、演者さんとしてはやりにくさがあるだろうなとは案じています。
また、コロナ禍になってからはアフレコはパートごとの収録なので、自分としてはプラモデルを組み立てていくような感覚なんですよ。でも演者は「この部品をお願いします」と言われても、どこにつく部品なのか、どうつながるのか、イメージがしにくいだろうなと。
黒沢:なるほど。私は今、無責任に監督たちにそのパーツを投げているような感覚もあります。監督に全幅の信頼を置いているからこそ、できることではありますが、「どんな切り取り方をされても構いませんが、置けるものは置いていきます」「とりあえず投げて、飛び道具や接続部に使ってください。そこのジャッジはお任せします」という気持ちです。
でもだからこそ挑戦できることもあって。今のこのスタイルというのは、自分としては楽しくもあります。
高垣:コロナ禍になってからアニメ制作の中で一番変わったのって、やっぱりアフレコ現場ですよね。掛け合いによって生まれにくくなったものはあるとは思うんですけど、監督やディレクターにジャッジしていただくことで、それに近いものが生まれるように導いていってもらっているなと感じています。
アフレコがパーツになってる分、どんな組み合わせでもいけるようにと、いろいろな可能性を自分も提示していきたいなって思いました。今できる最善を尽くしていきたいなと。
第4話では店長が追い出されてしまうので(笑)、他のメイドや佐野さんのお芝居は見られていなかったんです。だから白箱を見たときに「ああ、こうなっていたんだ!」と新鮮でした。
増井:そういう意味では、アニメづくりは工場に近いのかもしれないね。
いろいろなセクションで、いろいろなラインで、いろいろな部品を作っていて。特にライブ感があるのがアフレコのセクション。演者の皆さんにとってこれまでのようなライブ感はないにせよ、他のセクションに比べると、やはりライブ感があるんです。
声優さんの声が乗ることで命が吹き込まれ、すべて合体するとひとつの番組になる。他のセクションのことは知らない場合はあるけど、最終的にひとつの形になることをそれぞれが目指しているっていう。
黒沢:第4話の話題ではないんですけど、今回ってタイトル全部を通して、「これを(というメッセージ)」はあるんですか?
増井:毎度お話が違ってはちゃめちゃじゃないですか。全体的にはふざけているように見えるんですけど……。最終的には「なんでメイドが銃を持ってるの? そもそも変じゃね?」って方向に向かっています。それは根底にある設定です。
そもそも「メイドと任侠を掛け合わさったらどうなる?」という竹中プロデューサーの企画から発進していった作品ですが、僕は僕で「この作品は何を目指しているんだろう?」「どこにたどり着けば良いんだろう」と考えていました。それで“そもそも論”にいきたいなって。
もしもメイドが銃を持ったら、という不思議な世界のお話なので、現実とは違うんですけど、「萌えのメイドの世界」と「銃のある世界」を一緒に魅せることで、最終的に……「銃ってそもそも必要なの?」というのを、僕としては書きたいなと思っています。
黒沢:今のお話、聞けて良かったです……! 実はずっと聞きたかったんです。いったいどういう考えでこの作品をつくっているのだろう、と。
増井:(笑)。
高垣:キャッチコピーの通り「暴力について」にスポットが当たっているんですね。
増井:静かに、ですけどね。
──興味深いお話をたくさんお伺いできました。インタビュー現在、アフレコは後半に突入しているようですね。
増井:そうなんです。あっという間なのでなんだか残念ですね。楽しかったから。
高垣:あっという間でしたね。私たちも作品が始まるまでは未知数なところがいっぱいありましたが、本当に毎回楽しくて。私たちがこうやってお喋りしているときは、まったく情報解禁していない段階ですけど、キャスト陣が「これどういうことなんですか?」ってなるのと一緒で、皆さんも「見ないと分からない」と思うんです。でも「見たら分かるし、掴まれるよ」っていう。今、自信を持ってみんな作っています。この作品が公開されたときの、世の反応が楽しみです。
黒沢:1話ずつ見ていくことでどう感じるんだろう?
高垣:1話ずつ見ていって、キャラクターたちに愛着が湧いていってほしいなとも思うなあ。それとやはり、なごみの存在は、とんとことんにとっても、この作品世界にとっても大きいんだろうなと感じます。
増井:そうですね。なごみの存在は大きいです。
──第5話以降の見どころについてもお伺いできればと思います。
増井:第5話は大ピンチです(笑)。でも嵐子のバースデー回でもありますので、お楽しみに!
黒沢:見どころはトマトジュースです!! トマトジュースのシーン、本当に、本当にすごく好きなんですよ! アフレコ段階では色はついていなかったんですけど、そのシーンの絵は仕上がっていたんです。制作陣の気合いを感じました。ぜひ楽しみにしていてください。
高垣:嵐子の36歳の誕生日の回です。どう迎えるかが描かれるお話なんですが、4話から引き続き、とんとことんのメンバーってこんな感じだよね、っていうのを楽しみにしててもらえたらなと思います。個人的にはエンディングのオンエアが楽しみです。嵐子さんの意外な一面も見られるんじゃないかなと。面白いですよ!
──まだ想像がつきませんが、楽しみにしていますね!
インタビュー・逆井マリ
神奈川県横浜市出身。既婚、一児の母。音楽フリーペーパー編集部を経て、フリーのライターとしてインタビュー等の執筆を手掛ける。パンクからアニソン、2.5次元舞台、ゲーム、グルメ、教育まで、ジャンル問わず、自分の“好き”を必死に追いかけ中。はじめてのめり込んだアニメは『楽しいムーミン一家』。インタビューでリアルな心情や生き方を聞くことが好き。
2022年10月6日(木)~TOKYO MXほかにて放送
TOKYO MX・サンテレビ・KBS京都・BS11
10月6日より 毎週木曜 24:00~ 放送開始
AT-X
10月7日より 毎週金曜 21:30~ 放送開始
リピート放送:毎週火曜9:30~ 毎週木曜15:30~
ABEMA:10月6日より 毎週木曜 24:00~
dアニメストア:10月9日より 毎週日曜 24:00~
ほか 各配信プラットフォームにて 10月12日(水) 24:00以降、 順次配信予定!
バンダイチャンネル
Hulu
U-NEXT
ツイキャス
auスマートパスプレミアム
J:COMオンデマンド メガパック
みるプラス
TELASA
ビデオマーケット
Google Play
ひかりTV
Rakuten TV
HAPPY!動画
クランクイン!ビデオ
原作:ケダモノランド経営戦略室
監督:増井 壮一
シリーズ構成:比企 能博
キャラクターデザイン・総作画監督:仁井 学
美術監督:本田 こうへい
美術設定:伊良波 理沙
色彩設計:中野 尚美
プロップ設定:入江 健司、 鍋田 香代子
撮影監督:石黒 瑠美
3D監督:小川 耕平
特殊効果:村上 正博
編集:高橋 歩
音楽:池 頼広
音楽制作:Cygames
音響監督:飯田 里樹
音響効果:中野 勝博
音響制作:dugout
アニメーション制作:P.A.WORKS
和平なごみ:近藤玲奈
万年嵐子:佐藤利奈
ゆめち:田中美海
しぃぽん:黒沢ともよ
店長:高垣彩陽