秋アニメ『16bitセンセーション ANOTHER LAYER』若木民喜さん(原作)×髙橋龍也さん(脚本) インタビュー|いろんな制約の中を切り抜けて、紡がれた物語【連載第1回】

コノハと守は、桂馬とエルシィ？ 2人を中心に据えた物語

――内容面での期待感がすごく高まりましたが、キャストについても少し触れていきたいと思います。オリジナルのキャラである主人公·秋里コノハを古賀葵さんが演じています。PVで見たところ、かなりエネルギッシュだと感じたのですが。

若木：髙橋さん、どうでした？

髙橋：イメージはバッチリでした。

若木：すごかったですよね。僕はもうちょっとか細い声をイメージしていたんです。でも古賀さんがかなり自分色に染めちゃったから、すごいな! これはエネルギーがあるな!って。拡声器を当ててあげると、こんなことを言っている陰キャっていうイメージが、古賀さんによって、元から拡声器を仕込んである感じになった。そのおかげで全体の雰囲気はだいぶエネルギーがあるものになったので、すごかったなぁ。

――何があっても、それを突き破っていきそうなパワーがありましたね。

若木：確かに。あれが未来から飛んでくると、未来ってどんな世界なんだろうって思うかもしれない(笑)。

――もともと原作にいたメンバーはどうですか？上原メイ子役は堀江由衣さん、下田かおり役が川澄綾子さんです。

若木：これはもう、TVアニメ『To Heart』にも出演されていた2人ですね。

髙橋：お2人ともTVアニメ『Kanon』にも出ていますね。

若木：なのでレジェンドであり、ミューズ。

髙橋：声を当てられた作品が作品内に登場するというメタ的なことになりましたね。ただ脚本を書いているときは、まだキャストが決まっていなかったので、遊びを入れることはなかったんです。だから現場でそれがどうなったのかは分からないです。

――そしてPC98をこよなく愛するプログラマーの六田守役が阿部敦さんです。

若木：阿部さんは、今回色んなことをしてもらわないといけないので、その兼ね合いで、一番うまくやってくれていた阿部さんにお願いをしました。阿部さんは大声を出しても声がきれいなままというのが良くて、そこがすごく気に入っています。

――今回、守がかなりキーとなる存在ですよね。コノハと守が物語を動かしているところがありました。

若木：これは僕の『神のみ』スタイルを移行しているんですよ。つまり桂馬とエルシィの関係をフォワードとバックスを入れ替えたらコノハと守になるっていう。その意味では、この2人の会話を作るのは、すごくラクだったんです。

髙橋：僕も『神のみ』に参加しているので、すごくやりやすかったです。やっぱりあの2人ですよね。

若木：誰からも注意されなかったこともあって、真ん中に信頼できるユニットを置いておかないと、自分が物語をコントロールできないと思ったんですよね。やっぱりアニメって、みんなが看板で、それぞれの武器を持ち寄って集まるから成り立つものなんだと途中で考え方を変えて、あまり冒険をしないようにしようと思ったんです。だから僕が一番計算できるものをやったほうが一番いいだろ!って。

――すごく興味深い話ですし、とても腑に落ちますね。最後に、作品を期待しているファンへメッセージをお願いします。

髙橋：脚本側で言うと、各話の脚本を担当されているのが、当時のゲームや、その文化にゆかりのある方々なので、そこは楽しみにしていただきたいです。あの人が携わっている作品のパロディを書いている!みたいなことがあるかもしれないのでお楽しみに。

若木：いろんな制約があるなかで、できる限り当時を再現しようという熱意は伝わってくると思います。座組を見ていただければ、アニメーション制作はst.シルバーですし、その後ろにはPurple softwareの石川泰さんもいる。そして髙橋さんを含めたスタッフは、ど真ん中でやっていた人たちなので、そういう意味ではすごく良い人たちでやれていると思います。エロ無しで美少女ゲームを表現しなければならないので、アフレコでもすごく工夫をしながら、あらゆる状況にも対応できるようにセリフを変えて何度も録っていたりするんです。これもデリケートなところなので大変だとは思いますが、そんな苦労を通して出てきたものだというのを感じてほしいです。

そして、それこそが美少女ゲームの歴史でもあると思うんですよね。いろんな制約の中で、それをどう切り抜けるか。それがこのアニメでも行われていると思いますので、ぜひ見ていただきればと思います。

[文/塚越淳一]

『16bitセンセーション ANOTHER LAYER』作品情報

あらすじ

秋里コノハは美少女＆美少女ゲームが大好きなイラストレーター。超人気絵師になることを夢見て美少女ゲーム制作会社で奮闘しているものの現実はうまくいかず……、ソシャゲ全盛期の現代に会社は傾き、コノハはサブのイラストレーターとしてモブキャラの後ろ姿を塗る日々を過ごしていた。

ある日、ひょんなことから過去の名作美少女ゲームをゲームショップの店主から譲ってもらうことに。美少女ゲーム黄金時代に思いを馳せ、『同級生』のパッケージを開くと突如まばゆい光に包まれ、気づくとコノハは過去にタイムリープをしていた！

行きついた先は1992年！世は美少女ゲーム黎明期！アルコールソフトという会社で働くことになったコノハは、美少女を想い、美少女を描き、美少女を創りあげていけるのか！？

圧倒的な美少女への愛でお送りする、ひとりの少女の物語――『じゃ、始めるね！』