
積み重ねを踏まえたうえで、ごくシンプルに――「よかったな」に込められた甚爾の複雑な感情。『呪術廻戦』第2期「渋谷事変」第40話放送後インタビュー 伏黒 恵役・内田雄馬さん×伏黒甚爾役・子安武人さん
同じ空間で親子を演じる幸せ
ーー第40話「霹靂」では、恵と甚爾の激しい戦いが繰り広げられます。おふたりでの収録はいかがでしたか。
内田:最初で最後の親子の掛け合いだったと思いますが、恵としては父親と認識していない状態です。原作を読んでいる内田としては「来た!」と思っても、恵は「なんだこいつ!?」という感じで。
子安:そこは「懐玉・玉折」での五条と全く一緒なんだよね。
内田:そうなんです。やたら強くてやばい奴が突然出てきたという状況なので。
子安:映像も原作に味付けされていて、凄まじかったです。
内田:バトルの過酷さが、恵の「何だったんだ……」という気持ちを物語っていたのではないのでしょうか。
ーー子安さんは、息子とのシーンに臨むうえでどのような思いがありましたか。
子安:「渋谷事変」では主役とも全然絡まない中、唯一息子とだけ接点があります。互いにはっきりと認識しているわけではないですが、同じ空間で同じ空気を吸っているようなシーンだったので、一緒に演じられて嬉しかったですね。全然違う場所で会ったときに「今度よろしくね!」と話すくらい、雄馬君との共演が楽しみだったんです。
ただアフレコが始まってみると、淡々と会話もなく進んでいく中、雄馬君がひとりで一生懸命に戦いの息を入れていて。ひたすら強い甚爾を見ながら「申し訳ないなぁ」と思いつつ、最後の一瞬のために、隣のマイクに立っていました。
これがどれだけ楽しいか……! 自己満足かもしれませんが、隣で息を吸わないとセリフは言えない、心臓が動いてないとセリフが喋れないみたいな。時間と場所を共有して作品にセリフを並べることが「こんなにも嬉しいことなんだ」と改めて感じました。
ーー内田さんとしても、隣に子安さんが立っていると気持ちの入り方が変わりますか。
内田:もちろんです! 一緒に隣で生きているという実感が嬉しいですし、作品に入っていく感覚も変わってきて。役として呼吸しながら、緊張感を共有している感覚といいますか。一緒に録ることで生まれる空気感や呼吸は絶対に違うと思います。あと、個人的には子安さんと一緒にマイク前に立てる嬉しさもありますね。
子安:僕も嬉しかったよ。
内田:緊張感だけでなく、そのほかの色々な感情まで共有して作っていきました。恵の認識とは別に、親子という役柄を通して一緒に演じられた経験がすごく嬉しかったです。
子安:物語の内容や感情とは別に、作品を作る役者としてね。
内田:そうなんです。親子という間柄は、それだけ大きいのだと思います。
子安:実際、自分の息子とも大して年齢が変わらないので、接しやすいんです。収録以来、ずっと息子のように思っていますよ。放送が終わっても、この感覚はしばらく続くのではないでしょうか。
内田:僕もパパと呼ばせていただきまます!(笑) でも今回、体の中に作品が入っていきそうな感覚を子安さんと共有できて嬉しいです。いつでも起きるわけではないので……。
子安:そうだね。そんなにはない経験だと思います。
ーー本作のファンにとっては、ありがたいコメントではないでしょうか。
子安:完全に場外乱闘だけどね(笑)。
内田:演じるキャラクターとは違いますが、それだけの想いを懸けて作っていると思います。
最後のセリフに込めた甚爾の積み重ねと複雑な感情
ーー最後に甚爾が恵にかけた「よかったな」という言葉には、複雑な心境が感じられました。子安さんが演じるうえで意識したことを教えてください。
子安:これは……もちろん沢山あるんです! でも、はっきりとは言いたくないんです。あくまでも僕の答えであり、価値観なので「ああ、そうなんだ」とは思われたくない。色々な人が、色々な解釈をして良いんですよ。その人の感じ方やイマジネーションを奪いたくないので、考える余地はある程度残しておきたくて。
ただひとつ言えるのは、彼は良い人ではないから、良い人が言う「よかったな」ではない。甚爾の複雑な感情や性格、これまでの積み重ねを踏まえたうえで、ごくシンプルな「よかったな」でなければと思っていました。
優しく言うだけのセリフではないから、とにかくあのシーンは難しいんです。みんな注目しているから「こんなにプレッシャーを感じるセリフある!?」というくらい(笑)。なので、ただ「よかったな」と言っているわけではないことは、知ってもらえたら嬉しいです。そして、その気持ちを視聴者のみなさんがどう受け取ってくれるのか、楽しみにしています。
内田:みなさんの反応は僕も楽しみです。
ーーそのセリフを受けた内田さんの心境も教えていただけますか。
内田:あくまで僕個人としての気持ちですが、「恵がいつかあの言葉を思い出す日が来るかもしれない」と思いました。それくらい甚爾として積み重ねてきたものが凝縮されたセリフになっています。振り返ったとき、確実に感じるものがある「よかったな」でした。甚爾については語られていない部分も多い中、どこまでセリフに乗せるかは本当に難しいところです。
ただ、そこまでのストーリーがあって、キャラクターの気持ちがあって、初めて言葉が生まれるので、役者としては楽しかったという気持ちもあります。あえて一言に想いを乗せるセリフが、『呪術廻戦』の難しさであり、面白さです。たった一言の掛け合いでこんな思いになれるのは、一緒に演じる素晴らしさであり、アフレコを好きな理由の一つですね。
子安:それがAIにはできないことだよね。想いというものがある限り、僕たちはこれから先も負けないと思います。
内田:そうですね。たとえ“音”が似ていても。
子安:そこに複雑な感情を乗せられるのは、僕たちが勝っているところじゃないでしょうか。
ーー最後に「渋谷事変」の後半戦に向けて、メッセージをお願いします。
子安:僕(甚爾)のいない世界が展開していきますが、原作を読んでいるので、この先の過酷さは知っています。うちの息子がどれだけ頑張っているかを草葉の陰から見守っていきたいです。いち視聴者として、子安も観ます!
内田:既に大変なことが起きていますが、「どうなっちゃうんだ、渋谷」というレベルで、ここから先はよりハードな戦いになっていきます。最後まで覚悟して観ていただきたいです。どのキャラクターもみんな必死に生きているので、ぜひ最後まで見届けてください!
ーーありがとうございました!
TVアニメ『呪術廻戦』作品情報

●第1期
Blu-ray&DVDシリーズ 第1巻~第8巻発売中!
TVシリーズ 各動画配信サービスで配信中!
●第2期
毎週木曜23:56~MBS/TBS系列全国28局にて放送中!
イントロダクション
少年は戦うーー「正しい死」を求めて
集英社「週刊少年ジャンプ」で連載中の、芥見下々による漫画作品『呪術廻戦』。
2018年3月から連載が開始され、人間の負の感情から生まれる呪いと、それを呪術で祓う呪術師との闘いを描き、既刊20巻にしてシリーズ累計発行部数は驚異の7,000万部を突破。
2020年10月から2021年3月までは毎日放送・TBS系列にてTVアニメ第1期が放送され、国内のみならず全世界で大きな反響を呼んだ。さらに、同年12月24日、第1期の前日譚にあたる物語が描かれる『劇場版 呪術廻戦 0』を上映し、全世界で一大ムーブメントを巻き起こした。
そして、2023年に放送が決定している第2期で描かれるのは、五条 悟と夏油 傑の高専時代の物語「懐玉・玉折」。劇場版にて示唆された五条と夏油の決別した過去がついに明らかとなる。
さらに、連続2クール内にて「懐玉・玉折」の後、第1期から続く時間軸の物語「渋谷事変」も描かれることが決定。10月31日、ハロウィンで賑わう渋谷駅周辺に突如“帳”が下ろされ大勢の一般人が閉じ込められる。単独で渋谷平定へと向かう五条だが、これは夏油や真人ら呪詛師・呪霊達による罠だった…。虎杖、伏黒、釘崎といった高専生のメンバーや呪術師たちも渋谷に集結し、かつてない大規模な戦闘が始まろうしていた。
呪いを廻る壮絶な物語が再び廻りだすー
「渋谷事変」ストーリー
最後に笑うのは、人か―呪いか―
「五条 悟は 然るべき時 然るべき場所
こちらのアドバンテージを確立した上で封印に臨む
決行は10月31日 渋谷」
2018年10月、特級呪霊による交流会の襲撃以降呪術高専内の緊張が高まる中、ついに内通者の正体が判明する。
果たして内通者は誰なのか、その目的とは―!?
そして、2018年10月31日。
ハロウィンで賑わう渋谷駅周辺に突如“帳”が降ろされ大勢の一般人が閉じ込められる。“一般人のみが閉じ込められる帳”という高度な結界術に加え、一般人を介して告げられた「五条 悟を連れてこい」という指名から、上層部は被害を最小限に抑えるために五条単独での渋谷平定を決定する。
罠を仕掛け待ち構える夏油や真人ら呪詛師・呪霊達、そこに単独で乗り込む五条、さらには“帳”の外側に集結した虎杖、伏黒、釘崎、七海、そして数多くの呪術師たち。
渋谷に集結した呪術師VS.呪詛師・呪霊の
かつてない大規模な呪い合いがついに始まる―!!
STAFF
原作:「呪術廻戦」芥見下々(集英社「週刊少年ジャンプ」連載)
監督:御所園翔太
シリーズ構成・脚本:瀬古浩司
キャラクターデザイン:平松禎史・小磯沙矢香
副監督:愛敬亮太
美術監督:東 潤一
色彩設計:松島英子
CGIプロデューサー:淡輪雄介
3DCGディレクター:石川大輔(モンスターズエッグ)
撮影監督:伊藤哲平
編集:柳 圭介
音楽:照井順政
音響監督:えびなやすのり
音響制作:dugout
制作:MAPPA
主題歌
「懐玉・玉折」オープニングテーマ:キタニタツヤ「青のすみか」(Sony Music Labels)
「懐玉・玉折」エンディングテーマ:崎山蒼志「燈」(Sony Music Labels)
「渋谷事変」オープニングテーマ:King Gnu「SPECIALZ」
「渋谷事変」エンディングテーマ:羊文学「more than words」(F.C.L.S./Sony Music Labels)
CAST
虎杖悠仁:榎木淳弥
伏黒 恵:内田雄馬
釘崎野薔薇:瀬戸麻沙美
五条 悟:中村悠一
真人:島﨑信長
夏油 傑:櫻井孝宏
両面宿儺:諏訪部順一