秋アニメ『16bitセンセーション ANOTHER LAYER』第6話放送後インタビュー:堀江由衣さん(上原メイ子役)×川澄綾子さん(下田かおり役)|数多くのヒロイン役を演じた二人が語る90年代の声優業界【連載第7回】
若木民喜さん、みつみ美里さん(アクアプラス)、甘露樹さん(アクアプラス)が原作の同人誌『16bitセンセーション』をベースにオリジナル要素を加え、新たな物語にしたTVアニメ『16bitセンセーション ANOTHER LAYER』。アニメイトタイムズでは、現代と過去が入り交じるSF要素が加わりに生まれ変わった本作について語るインタビュー連載を実施中!
連載第7回は、上原メイ子役の堀江由衣さんと下田かおり役の川澄綾子さんが前回から引き続き登場! 第6話は、とんでもない詐欺にあってしまったアルコールソフトの話。そんな中、主人公の秋里コノハはどんな行動を選択するのか! 対談では、90年代のアフレコの話などでも盛り上がりました。
90年代の声優業界はどんな感じだったのか
――この作品でも描かれていますが、90年代当時って、仕事に対する情熱みたいなのが、今と少し違っていた気がします。今のほうが、もっとスマートな感じがするというか……。
川澄綾子さん(以下、川澄):どうなんでしょう。今の若い人たちのことが逆に分からないかもしれないので。
堀江由衣さん(以下、堀江):確かに! 私たち、会社に勤めているわけでもないですし……。あと、90年代の事は流石によく知らないもんね。
川澄:アニメ業界も技術の進歩はありましたけど、私たちがアフレコでやっていることは一切変わらないよね? 最初はビデオをもらって、そこからDVDになって、今はデータになって、ストリーミングになって……という風にで変わっているところもあるけれど、台本はずっと前から変わらず紙ですし、アフレコをしているスタジオも変わらないですし。
堀江:ただ、ゲーム収録に関してはすごく変わったよね?
川澄:今は、アプリゲームが多いからね。
堀江:音声のデータも容量的に入れられなかった時代はありましたけど、当時、我々が仕事をし始めたときは、逆にすごくワード数が多かったんですよ。
川澄:多かったですね。それこそ『Kanon』もそうだし、他のそういう恋愛ゲームなどは、3万や4万ワードくらいあったように思えますけど、今は逆にないよね?
堀江:アプリゲームだと、長くてもそんなにはいかない感じがする。
川澄:とにかくしゃべってたよね(笑)。ひとつのゲームに、12回くらいスタジオに通うとか。
堀江:限界までやってたよね?
川澄:そうだね。1回3〜4時間を全12回とか。
――それを、まさかひとりで?
川澄:そうです。
堀江:時間がすごく長かったよね。
川澄:今日は行けるところまで行こう! 1000ワードは録ろう!とか(笑)。
――やっぱり、根性とか熱血の時代のような気がしますね。
堀江:いえ、ただ整えられていなかっただけなんだと思うんですよ。
川澄:今だと、翌日の声優の喉のことも皆さんが心配してくれるといいますか(笑)。あの頃はタウンページ4冊分くらいの台本をもらってたよね?
――もうタウンページが分からない世代がいるかもしれないので説明をすると、5cmくらいの分厚い電話番号が書いてある本ですね。
堀江:なので台本をキャリーケースに入れて持ち歩いている先輩もいました。
川澄:分厚いから、チェックするだけで手の先の指紋がなくなりそうになるんだよね(笑)。
堀江:懐かしい。確かに、ひとつの作品を最初から最後まで録る形式が、今は少なくなってきてると思います。アプリゲームだと、継続していく感じだから、自分が担当するキャラが出てこなければ半年や1年に1回とかになるし、全然違うなと思います。
――整っていなかったという表現が、しっくり来ました。
川澄:整っていなかったというのもあるし、実際にできることが変わっていった感じがします。
堀江:ゲーム自体も当時は、そういうジャンルが確立されていった時期な気もしています。
川澄:美少女ゲームではなく恋愛シミュレーションゲームのようなものでも、ちょっと声が入るくらいだったものが、ある時、あ行からわ行までのすべての名前を呼ぶようになったりしたんです。その後、声を合成できるようにもなっていったんですけど……。あと、この当時のゲームって、全員が不幸になるストーリーが多くなかった?
堀江:泣かせるゲームが多かったのかもね。キャラクターに対して良いストーリーが必ずあるような。
川澄:だから、すごくよく死んでたなぁと思って(笑)。
堀江:私、逆に生き返ったかなぁ(笑)。
川澄:あれはね!(笑)。今は、あそこまでひとりひとりに重いストーリーはあるのかな。
――時代と共に、仕事が効率化がされていったという話はすごく納得で、だから今のスタイルがあるような感じかもしれないですね。
川澄:今も「Vチェック」という言葉が残っていますが、本当に当時はVHSのビデオテープだったので、現場が3つ4つあると、ビデオテープを持ち歩いていることが多かったです。
堀江:同業者の方がバッグの中身を見たら、これ声優さんかなって分かりそう(笑)。
川澄:それがDVDになったときは、感動でした。
堀江:そう考えると、スタッフさん、VHSにダビングする時間とかも大変だったんだろうね…
川澄:何台もビデオデッキがあったんだろうね。
――だからアルコールソフトみたいに、会社で寝泊まりしていたのかもしれないですね。
川澄:いい時代になりましたよね。
堀江:ちゃんと家に帰れる時代になったんだなぁ。
川澄:働き方改革だしね。
――家で仕事ができるようになったのは大きいですね。
堀江:家に帰れるだけで、仕事をしていることには変わりがないんですね(笑)。
川澄:でも本当に、時代は変わったよ。
堀江:そう考えると、何でアフレコのスタイルはずっと変わらないんだろうね。
川澄:もう変えようがないんじゃない? コロナ禍になりひとりで収録をすることになったのも、結構な激震だったんじゃないかな? 今は少しずつ戻ってきてはいますけど。