秋アニメ『16bitセンセーション ANOTHER LAYER』第6話放送後インタビュー:堀江由衣さん(上原メイ子役)×川澄綾子さん(下田かおり役)|数多くのヒロイン役を演じた二人が語る90年代の声優業界【連載第7回】
詐欺にあってしまったアルコールソフトの今後は?
――やっぱりアフレコは皆さんでやったほうがいいですか?
川澄:お芝居的には、みんなで集まって録るほうが、もちろんいいと思います。
堀江:もともとは、テープで録っていた時代に、戻したり止めたりができなかったので、このシーンに必要な人が全員集まって、本来ならひとりひとりにマイクを渡したいけど、足りないので順番に使ってくださいというところからアフレコの歴史は始まっていると思うんですよ。それがいつの間にかスタイルになっていったと思うんですが、これが果たして技術の最先端なのかと言われると、よく分からなくなってくるんです。
川澄:海外は当たり前にひとりアフレコですしね。
堀江:でも、やっぱりひとりでやるのは違うなぁっていうのもあって。相手がいるとやりやすいというのは、当然なんですよ。
川澄:そうだね。
堀江:でも、ヘッドフォンで別のスタジオにいる相手の声が聞こえてきても、やっぱり違うから、そこは永遠に課題なんだろうなぁ。でも人がいる限り、後ろにいる人のノイズは出るし、そういうところもクリアになっていくのかな?
川澄:前、円形になってやれば、マイクワークしないで済むのではという話もしていたじゃない?(笑)。
堀江:そうそう。そういうこともいろいろ考えたんですけど、やっぱり答えは見つからないんです。
川澄:そもそもマイクの数とモニタの数が、すごいことになるしね(笑)。
――ということは、やっぱりこれが最適解なのかもしれないですね。
川澄:いろんなことを経て、これに落ち着いたんでしょうね。
堀江:コロナ禍でバラバラに録っていた時期も、ガヤが混ざらないとか、音が合わないみたいなことで苦労するという話を、スタッフの方々から聞いていたので、やっぱりみんなで録るのがいいんでしょうかね。
川澄:掛け合いセリフの収録は絶対に一緒にやったほうがいいというのは、3年間できなかった時期を経験して思ったことですね。
堀江:やっぱり相手がしゃべってくれると分かりやすいしね。
川澄:ひとりでの収録も慣れれば、大外しはせずにできてしまうけど、それもやっぱり違うのかなと。
――新人育成という意味でも、一緒に録れたほうがいいのかなと思いますね。
川澄:それはそうですね! 新人さんは本当にコロナ禍は辛かったと思います。自分の力以上のものって、人とやって出させてもらえたりするので。
堀江:でも、なんかまだ方法がある気がするんだよなぁ。
一同:(笑)
堀江:だからバーチャル空間みたいなものが正解かもなってちょっと思っているんですよ。自分の家から、みんなでバーチャル空間に入ってアフレコをする。
川澄:堀江由衣の新たな提案……。
堀江:20年後にはスタンダードになっているかもしれない(笑)。
――思わぬ方向に話が進んでいきましたが、第6話はいかがでしたか?
堀江:やっぱり実名が出てくる作品があるから、こういうことが本当にあったのかな?と、ちょっとドキドキしながら見ている自分がいました!
川澄:この市ヶ谷さんって、モデルいるんですか?みたいなね(笑)。
堀江:あと、てんちょーのモデルっているのかな?とか。
川澄:カリスマ的ゲームプロデューサーで、詐欺で捕まった人っているのかな?って一瞬考えてしまいましたけど、いないんですよ。
堀江:きっとそこはフィクションなんでしょうね。私たちも覚えがないから(笑)。
川澄:あの人のことか!とかないもんね。でも、詐欺だと分かるまでのみんなの盛り上がりを見ていると、コンシューマー移植は、ゲームを作っている人たちにとっては本当に素晴らしい、夢のようなことなんだということは伝わってきました。でも、この時代でも10億円騙されるのは、すごいですよね。
堀江:バブルは弾けていたけれど、エンタメは上り調子だったように思えますけどね。。
川澄:ゲームがとても上り調子になっていた時期でしたもんね。だからこそ、10億円の借金を背負った会社がどうなっていくのか! これまでその時代に干渉しないよう、未来の知識や技術を見せないようにしていたコノちゃんが、その禁じ手を破る展開になっていくので、未来への影響がいよいよ気になりますよね。
堀江:コノちゃんがどんなゲームを作るのかも、気になっています。
――個人的には、コンシューマー話が詐欺だったことが分かったとき、「だってさ…コンシューマーやりたいじゃん!」ていうかおりのセリフにグッときたんですよね。
川澄:会社が大きくなってやっと掴んだチャンスでしたからね。かおりは美少女ゲームを作ることに誇りを持っているし、大好きな仕事なんだけど、やっぱり世間から見るとなかなか理解はされないというジレンマを抱えていたと思うんです。それが全年齢版のゲームができるということで、もしかしたらみんなに見せている姿よりも、もっとやる気があったのかもしれないなと感じられるようにしたいなと思っていました。印象的だったのが、コノちゃんに、ゲームは作らないのかと聞かれて、「そりゃ…作るけどね」って言い切るところで、本当にかおりとメイ子はゲームを作るのが好きなんだなと思いました。
堀江:私は、てんちょーが騙されていくくだりとかに悲しくなってきて。なんかかわいそうだなと。
川澄:被害額は想像していたより一桁多かったけどね(笑)。
堀江:すごく調子に乗ってるところもあって、てんちょーはクリエイターではないから、みんなに相手にされていないと思ってしまっていたところから「報われたい!」と思ってやったことで騙されてしまうのは切ないですよ。かおりさんにももちろん怒りはあるし、これからどうするの!という。ここまでのアルコールソフトが楽しい雰囲気で、勢いもあっただけに、大きめの挫折がきたような感じでした
川澄:第5話でゲームがヒットしていたところからの落差がね。
堀江:ファンディスクができたって喜んでいたし、社員も増えていたのに。
――その他のシーンで気になったところはありますか?
堀江:まぁ、「うぐぅ」イジられてるなぁって、ちょっと思いました(笑)。(※『Kanon』の月宮あゆの口癖)
川澄:めっちゃイジられてたね(笑)。
――確かに(笑)。では最後に、第7話はどんなことが起こりそうですか?
堀江:6話がとても気になる展開で終わったので、ここからどうなるんだろうと楽しみにしています。
川澄:これでコノちゃん、元の時代に戻っちゃったらどうする?
堀江:やりかけで?
川澄:次に来るのが2005年になっていたり(笑)。
堀江:ありえる。これ、私の本当に勝手なイメージですけど、ゲーム業界って、急にいなくなる人、いそうじゃないですか。
川澄:コノちゃんにはいてほしいなぁ(笑)。だって一番、次が気になる展開だったから。
堀江:ずっと未来の技術を封じられてきたところで、じゃあここから本当に無双しちゃうんですか?っていうところなので、私たちも気になっています!
[文/塚越淳一]
『16bitセンセーション ANOTHER LAYER』作品情報
あらすじ
ある日、ひょんなことから過去の名作美少女ゲームをゲームショップの店主から譲ってもらうことに。美少女ゲーム黄金時代に思いを馳せ、『同級生』のパッケージを開くと突如まばゆい光に包まれ、気づくとコノハは過去にタイムリープをしていた!
行きついた先は1992年!世は美少女ゲーム黎明期!アルコールソフトという会社で働くことになったコノハは、美少女を想い、美少女を描き、美少女を創りあげていけるのか!?
圧倒的な美少女への愛でお送りする、ひとりの少女の物語――『じゃ、始めるね!』
キャスト
(C)若木民喜/みつみ美里・甘露樹(アクアプラス)/16bitセンセーションAL PROJECT