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- 小川いなり
- 会社員からライター、編集者の道へ。アニメ、漫画、特撮、映画など、手当り次第に鑑賞します。
黒柳徹子さんの自伝的小説を原作とするアニメ映画『窓ぎわのトットちゃん』が、2023年12月8日(金)より公開されます。
世界累計発行部数2500万部を突破した大ベストセラーを豪華キャスト・スタッフの手で映像化する今作。11月18日(土)、公開に先駆けた完成披露舞台挨拶が、TOHOシネマズ六本木ヒルズにて開催されました。
本イベントには、原作者・黒柳徹子さん、トットちゃん役・大野りりあなさん、大石先生役・滝沢カレンさん、八鍬新之介監督が登壇。制作に至るまでの経緯や心に残った名シーンなど、作品に関するトークを展開しました。
本稿では、キャスト陣と会場に集まったお客さんが、作品完成の喜びをともに分かち合った本イベントの模様をお届けします。
冒頭では、黒柳さんから今作の企画が始動するまでの経緯が語られました。これまで映像化のオファーはすべて断っていたものの、昨今の社会情勢から「やはり映画にしたほうが良いんじゃないか」という心境の変化があったとか。そんなタイミングで八鍬監督からアニメ映画化の打診があり、そこから実に7年の制作期間を経て、今作は完成を迎えました。
八鍬監督は、現在も世界中で戦争の被害者が出ていること、かつて日本も戦争を経験したことに触れ、「『窓ぎわのトットちゃん』には、戦時中でも思いやりの心を忘れずに生きた人々が描かれていた。その姿を映像化して世界に届けられれば、少しでも明るい未来に繋がるんじゃないか」と映像化の意義について解説します。
本編を観た黒柳さんは、当時の色々なことを思い出しただけでなく、自分の経験が映画の中で丁寧に描かれていたことに感動し、涙を流したとその仕上がりを絶賛。監督に「心からお礼申し上げます」と言葉をかけると、客席からは自然と拍手が起こりました。
そんな今作で主人公・トットちゃんという大役に挑んだ大野りりあなさん。オーディションでは「自分をトットちゃんだと思いながらやった」と振り返ります。さらに、役との共通点を問われると「おしゃべりが大好きなところ」と「色々なことに興味があるところ」が似ているとコメント。黒柳さんも大野さん演じるトットちゃんに「とっても可愛かったです」と改めて太鼓判を押しました。
トットちゃんの担任のこと、大石先生役の滝沢カレンさんは、演じるなかで「徹子さんの歴史の中に入れたような嬉しい瞬間がたくさんあった」と回想。一方、声をあてるうえでは「どうすれば自分がこの世界に入れるのか」を真剣に考えたと振り返ります。
次の話題は、今作の中で印象に残ったシーンについて。大野さんは、「君は、ほんとうは、いい子なんだよ。」という小林先生のセリフにとても感動したと語ります。黒柳さんにとっては、今でも度々思い出すほど、自身の中で大事な言葉になっているとか。
滝沢さんは、トットちゃんから見た「電車の教室」が描かれる場面をピックアップ。さらに八鍬監督が、トットちゃんとその友達である泰明ちゃんが木登りをするシーンを話題に挙げると、黒柳さんは、泰明ちゃんとのシーンを観た際に当時の思い出が蘇り、思わず泣いてしまったと打ち明けました。
イベントでは、小林先生役・役所広司さんとトットちゃんのママ役・杏さんからのビデオレターに加え、主題歌「あのね」を歌うあいみょんさんからの手紙を黒柳さんが代読する一幕も。
主題歌について、「聴いたときに心がポカポカした」と真っ直ぐな言葉で称賛する大野さん。一方、黒柳さんは「本当に子供らしい曲だと思って、覚えて歌ってみようと思ったのですが、ちょっと難しかったです」と茶目っ気たっぷりにコメントしました。
最後に登壇者より、会場に集まったお客さんへメッセージが贈られます。大野さんが、友情の大切さ、争いの寂しさなど、様々なメッセージが込められた今作の魅力を改めてアピールすると、滝沢さんは「大人になって、もう一度友達作りを頑張りたいと思えた」と今作から受けた影響を告白。
続く黒柳さんは、映画に12万枚もの絵が使用されていることに触れつつ、スタッフの並々ならぬ努力に対して「本当に嬉しく思う」と感謝を伝えます。そして、八鍬監督が「ぜひトットちゃんと一緒にトモエ学園に入学するつもりで映画を楽しんでほしい」と呼びかけ、完成披露舞台挨拶は終了となりました。
一人の少女を通じて描かれる、思いやりの心を忘れずに生きた人々の物語。今作が気になっているあなたも、元気いっぱいなトットちゃんの日常を一緒に覗いてみませんか?
[取材・文・撮影/小川いなり]
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