奏なりに久美子を守ろうとしているのだと思う――『響け!ユーフォニアム3』雨宮天さんインタビュー|自分の感情を隠さずに真由に向き合う奏の姿を見て、彼女のことがより好きになった【連載第5回】
4月7日(日)からNHK Eテレにて放送中の『響け!ユーフォニアム3』。
5月26日(日)に放送された第8話では、北宇治高校吹奏楽部にとって毎年恒例の合宿がスタート。吹奏楽コンクール関西大会の出場メンバーを決めるオーディションの結果も発表されました。
アニメイトタイムズではキャスト・スタッフへのインタビュー連載を実施中!
第5回は、久美子と同じユーフォニアム奏者の2年生部員・久石奏を演じる雨宮天さんにインタビュー。奏にとってはショックな展開となった8話の振り返りや、初登場した劇場版『響け!ユーフォニアム~誓いのフィナーレ~』(以下、『誓いのフィナーレ』)からの変化などを語っていただきました。
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今後、ユーフォの中で何かあると思っていたけれど……
――第8話で、奏は吹奏楽コンクールの関西大会出場メンバーから外れてしまいました。今の心境を教えてください。
雨宮天さん(以下、雨宮):最後の方のシーンでメンバーが発表されて、奏もまだ現実を受け止められていないような「え?」という表情で終わったので、奏を演じる身としては、すごく辛かったです。
3期が始まり(黒江)真由という新しいキャラクターが出てきてから、不穏な雰囲気がずっと続いていて。奏も真由に一番噛み付いていたし、今後、ユーフォ(担当メンバー)の中で何かあるのだろうとも思っていたんですが……それが現実のものになったというか、「ああ、奏がメンバーから外れちゃうんだ」って。そういうタイミングなので、やっぱり辛い展開ではあります。
――奏は1年生のときから(当時の)3年生・中川夏紀よりもユーフォニアムの演奏が上手く、大会メンバーにも入っていたので、驚きの展開でした。
雨宮:奏は、『誓いのフィナーレ』から登場しているのですが、『アンコン編』(『特別編 響け!ユーフォニアム~アンサンブルコンテスト~』)も経て、今の2年生と3年生の関係はけっこう安定した状態になっていたと思うんです。でも今回のシリーズでは、それをすべて覆してくるような問題が立て続けに起きていて、常にドキドキハラハラという感じです。
――奏が初登場した『誓いのフィナーレ』のときと、本作とでは、奏に対する印象はどのように変わりましたか? また、演じる際に意識していることにも変化はありましたか?
雨宮:『誓いのフィナーレ』のときは、「警戒心の強い野良猫をお家に連れて来た」みたいな感じで(笑)。誰かに対して、すごく攻撃的だったりするわけではないけれど、常に周りを警戒して、誰にも心を開いていないという印象が強かったです。でも、『誓いのフィナーレ』のラストの方で、結果的に本音をすべて久美子にぶつけて、それを受け止めてもらえた。その後の『アンコン編』も挟んで、奏のやり方で、ではあるんですが、ちゃんと環境にも慣れてきたというか。3期では、すごく素直になった印象です。
――奏は自分のことを「可愛い」と言いますが、今期の奏は本当に可愛いと思います。
雨宮:そうですよね。あと、これは私の意識していることでもあるんですが、『誓いのフィナーレ』のときは、全員に対して警戒していたから、人との距離感も全員同じ感じだったんです。でも今回のシリーズでは、人によって距離感がちゃんと違う。本来彼女は、けっこう好き嫌いがはっきりしているみたいなのですが、それをしっかり出すようになったなと、すごく感じます。特に真由の登場によって、それが露骨になったと思うんですけど(笑)。
――真由が入部したときから、明らかに警戒しています。
雨宮:奏は「腹黒」と言われがちなんですが、表現方法がちょっと独特というか、ふわっとしながらチクッと刺すみたいな感じだから腹黒に見えるだけで。今はもう感情を隠していないので、けっこう素直な子だと私は思っています。
――では逆に、『誓いのフィナーレ』のときから変わらないところは、どのようなところだと思いますか?
雨宮:3期でも多いのですが、何かを言うとき、そのまままっすぐ伝えるのではなく、ニヤニヤして、相手を少しからかいながら言うのが奏の個性というか表現方法だと思っていて。そのテンション感は、すごく大事にしています。
――奏に関して、特に印象的なディレクションがあれば教えてください。
雨宮:(ディレクションは)あまり無かったんですよね。『誓いのフィナーレ』は、かなり前なので、私がはっきり覚えていないこともあるかもしれませんが、『アンコン編』と今回のシリーズに関しては、本当に全然ありませんでした。
――例えば、第1話の収録前に「2年生になった奏は、こういう方向で」といった指示もなかったのですか?
雨宮:はい。どちらかというと、やっぱり真由や久美子たちに関するお話が多かったと思います。でも例えば、表現方法でどっちかで迷ったら、可愛い方にする。奏の自他共に認める可愛さは、しっかり残していこうというお話はありました。
――やはり「可愛さ」は、今期の奏を演じる上でのポイントだったのですか?
雨宮:普段から可愛さを特別に意識しているわけではないんですが、奏には、彼女が自分で分かっている可愛さも、分かっていない可愛さもあると私は思っていて。その両方の可愛さがあるからこそ、「ちょっと毒っ気も多いけど、愛されるキャラ」という絶妙のバランス感になっているのかなと。可愛い“だけ”の子では全然ないんですが、要所要所で出てくる可愛さはやっぱり奏の魅力だと思うので、そこは見て欲しいところでもあります。
(C)武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会