夏アニメ『ハズレ枠の【状態異常スキル】で最強になった俺がすべてを蹂躙するまで』OPテーマ「Hazure」超学生インタビュー｜超学生らしさが詰まった「Hazure」、この曲をきっかけにインターネットの音楽との架け橋になれたら

歌詞には灯河らしさと辻村さんらしさが融合。魑魅魍魎としてカオスな曲なのにすぐに覚えられる不思議さ

――歌詞も「廃棄するならご勝手にはいどうぞ」とか「目的は女神の首をはぎ取って」など灯河らしさが詰まっています。

超学生：辻村さんに「好きに作ってください」と言った時の特徴なんですけど、いろいろなところから幻聴みたいなセリフが聞こえてくるのをレコーディングするのが毎回楽しいので、今回も「嬉しいな」と思ったのが最初の感想でした。灯河とは境遇も性格も違うのに、空気感が辻村さん本人と似ている瞬間があって。

今回のレコーディングは自宅で行なったので、辻村さんには立ち合ってはいませんが前回ご一緒した時、辻村さんにはワイルドなところがあったり、少年の頃の気持ちを忘れないピュアさや純粋さも持ち合わせているのが灯河と重なるなと思いました。だから歌詞で使われている口調からも灯河らしさを感じられました。

言葉選びもそうですけど、昨今のJ-POPでは使われていない表現がふんだんに使われています。特に「降参です」から始まるサビは、辻村さんらしさと灯河らしさがきれいに融合した瞬間じゃないかなと思います。

――「ごまかすハズレ人生クソ喰らえ」や「ハラワタ煮えくりがえってどうにかなっちゃう なっちまえ」などの、超学生さんの特長でもある、がなる歌い方も灯河らしかったです。

超学生：そうでしたか？（笑）　僕は歌詞を覚えるのが苦手で、ライブをやる時も歌詞を覚えるのに苦戦して、本番まで覚えきれない曲もたくさんあるのですが、この曲は不思議と数回聞いただけで覚えてしまって。

――本当ですか!?　超学生さんの曲は複雑で、アップダウン、右左と暴れる歌詞やサウンドが多いのに。

超学生：そうですね。でもこの曲は、今ライブで歌ってくださいと言われてもすぐにカンペなしで歌えるくらい、しっかり頭に入っています。魑魅魍魎としていて、音が混ざり合ったカオスなのに何ですぐ覚えられるのか考えてみたら、ストーリー性を大事にした歌詞だから、自分の中にすっと落とし込めたのかなと思いました。

また着飾らず、人間らしさをそのまま出しているので、そういう素直さが聞く人に浸透しやすくなっている理由の一つなのかなと。

――確かに絶望やあきらめ、怒り、闘志などいろいろな感情が歌詞の中にありますね。いただいた歌詞の分量は3ページもあって驚きましたが、テンポやスピード感も超速くて、息つぎする間もないくらいハードな曲なので歌うのも大変そうです。

超学生：でも耳触りがよくて、聞いていて心地いいことが優先された言葉選びでありながら、ここまで物語にマッチしているのは見事だなと思います。

2番の入りの「戦闘力はWeakest」など言いたくなる小気味いい感じで、リズム感を重視した歌詞で。リズム感やテンポを重視すると内容は二の次になりがちですけど、辻村さんは『ハズレ枠』以外ではありえない構成で、灯河にしか当てはまらない歌詞になっているのでさすがだなと思います。

「タラリルラッタ」から始まるブロックは灯河の狂気性があり、「step1」からは実験的なアプローチ!?

――ハードでワイルドな歌詞が続いた後に来る「タラリルラッタ」からカタカナ擬音が続くのも不思議ですし、違和感なく自然と聞けてしまうんですよね。

超学生：灯河がアニメ序盤のように、ヤケクソになって、すべてを投げ出してしまおうという気持ちと、このアニメの持つ狂気性が表現されているような。洋画で例えるなら『ジョーカー』のような畏怖的なものが「タラリルラッタ」には込められている気がします。今回は自宅でレコーディングしたので、「辻村さんがいたらどうディレクションするのかな」と楽曲からいろいろ読み取りながら歌いました。

「Fake Parade」のレコーディングに立ち合ってもらった時は細かいところまでこだわれていて、僕が家で「歌ってみた」を録る時と同じだなと思えることが多々あって。ラ行がたくさん続くところとか。今回ならまさに「タラリルラッタ」から始まるブロックがそうで、辻村さんなら「何回めで巻き舌してください」というところまでこだわられて。「わかるな」と思いながら、自分から出たセンスではなかったので、一生懸命その場で対応しました。

まだ辻村さんとはお会いしていないので、辻村さんの考えていた正解を今度聞いてみたいですし、この経験を経て、まだ一緒に辻村さんと曲作りをしたいです。

――その後に「step1」からstep8まで入るブロックは復しゅうへのプロセスを表しているようでもあり、ゲーム的な感じもあります。

超学生：ここは実験的な要素だと思っていて。普通は楽曲の中でこんなことしないじゃないですか？（笑）　そこは灯河とマッチしているなと。灯河がEランクと言い渡された後に絶対、脱出不可能な場所に放り出されて。

でも灯河も本来はあり得ない方法で、復しゅうに挑んで道を切り開いていくストーリーなので、そこも辻村さんなりのメッセージなのかなと思ったし、アニメにも合っている気がします。

　
偶然、辻村さんと組めるタイミングだったとお話ししましたが、この作品も辻村さんにピッタリだったと思っています。そして僕も普段レコーディングする時は「こんなことしちゃってもいいんじゃないかな」と冒険的に録ることも多いので、今回僕たちが担当させていただけたことは運命的なのかもしれないと思いました。

――そして改めて言わせていただくと、超学生さんの荒っぽいガナリ声や何か達観しているような歌い方も灯河らしいし、今の時代性にも合っている気がします。

超学生：ありがとうございます。僕に注目していただけるようになったのはコロナ禍の時期で、その時によく言っていただいていたのは「日々たまっているうっぷんや抑圧された感覚を、超学生が代わりに叫んでくれているような感じが見ていて、気持ちいいです」と。そんなコメントをたくさんいただきましたが、今回は灯河の気持ちを代弁するような歌い方ができて、今まで歌わせていただいたアニメのタイアップ曲の中でも、かなりトップクラスで超学生らしさが出ている曲だと思います。

――この曲のお気に入りポイントを教えてください。

超学生：聞き手側としては、オチサビの手前の「妄想現実から」から始まるラップパートがありますが、その前に「ああああ」とボイスサンプルを切り刻んだみたいな音が入る間奏です。ボカロPがやりそうな感じが好きで、辻村さんからデモをいただいた時も「あそこは僕も含めてみんな好きだと思うので、ぜひ残して、なんなら強調してください」とお願いしました。だから聞き手側としたらその部分がすごく好きです。