点と点が「どこで線になるのか」を探る面白さがある作品――夏アニメ『多数欠』成田実篤役・上村祐翔さん&一之瀬龍太役・浦和希さんインタビュー|デスゲーム+特殊能力が生み出す、予測できない展開を楽しんでほしい
お互いのお芝居の印象や、演じるキャラクターとの共通点は?
――お互いの役柄とお芝居の印象をお聞かせください。
上村:龍太は、見た目も含めて、何となくチャラそうで、「まじめではないのかな?」というのが第一印象でした。でも実篤として龍太と掛け合いをしてみたら、ざっくばらんでカジュアルな雰囲気が多いけれど、その先の奥深いところにちゃんとまじめな部分も持っていそうな感じで、「おそらくコイツはいいヤツなんだろうな」という空気感をまとっているキャラクターだなと思っています。
そのつかみどころのなさや、ひょうひょうとしている部分を、浦くんが程よい塩梅でやっているので、実篤として掛け合いをするときはいつも「やりやすいな」と思いながらやっています。
浦:実篤は、真面目でいながら不真面目なところもあったりして、(演じるのが)実は難しいキャラクターだなと思っていました。そこを祐翔さんがちゃんとメリハリをつけて演じられていらっしゃるからこそ、シリアスな推理パートはきちんと真面目なのに、クラスメイトの一彦たちとバカなことを言い合うシーンでは、“男子高校生がクラスに集まっている感じ”になっていて。それは祐翔さんと一緒だからやれることだなと、すごく引っ張ってもらっているなと思いました。また、実篤の愚直さも「祐翔さんにしか出せないな」と思わされたお芝居でした。
――実篤の文武両道なところは上村さんとリンクしているかなと思いました。
浦:なるほど! 確かに。
上村:僕は武道もやっていたし、一つのことに打ち込むところは昔から変わらないですね。一度やると決めたらやり続ける習性があるみたいで。仕事もそうで、芝居は3歳で子役からやっていて、気が付いたら今に至る、という感じなので。
浦:すごいですよね。何年くらい続けているんですか?
上村:25年。
浦:うわ~! とんでもない! ヤバすぎる! ほぼ僕の年齢と同じですよ。
文武両道って難しいですよね。どちらも両立させないといけないので。頭がよくて、運動もできるという雰囲気をまとうのはなかなかできることじゃないというか。祐翔さんの声もそうですし、お芝居の仕方で実篤の雰囲気がちゃんと伝わるように、キャラクターが魅力的になるように演じられているなと思います。
上村:ありがとう。キャスティングの妙というか、こういう激しい感情をぶつけ合うような作品では、自分自身を思い返したり、過去を振り返ってみたりする中で芝居が生まれてくるもので、気付いたら役と自分の合致する部分が出てきたりするものだと思っていて。
そういう意味では、実篤という役をやりながら、自分のことを思い返しながら演じられているなと思います。実篤の中に通ずるものが上村祐翔の中にあって、話数を重ねるごとにそれをひしひしと感じています。そういう感覚って、龍太にはある?
――演じられた代表作の印象から、浦さんも運動が得意そうですよね。
浦:いや~、体を動かすのは得意というか、できないほうではないとは思いますが、特別うまいという意識はなくて。そこが龍太と似ているんじゃないかなと勝手に思っています。龍太は冷静なところがあるけれど、ある程度自分の限界を知っているからこそ、「これができて、これはできない」という判断が彼の中にはあって。僕もどちらかといえば、そういうタイプなんです。
例えば50メートル走だったら、何人かは抜けるけど、最後まで抜けない人がいたり。ずっとやっていた空手も「自分はこれくらいしかできなかったけど、裏を返せば、これくらいならできる」という積み重ねが人生の中でずっとあった気がします。現状を見て、「どうするのか、自分がどんな立ち位置にいられるのか」というのは今も常に考えています。
あと僕は4人兄弟の真ん中で、兄が二人、弟が一人いるので、弟からすれば大人で、兄から見れば子供なんですよね。そういったチグハグな部分があったのが、龍太の置かれている状況と似ているなと思っています。龍太の周りには大人たちもいるし、自分より賢い人もいる一方、自分が面倒を見てあげないといけない人もいて。その中で「自分がどう動けるのか」といつも考えている龍太にシンパシーをすごく感じます。
上村:バランス感覚みたいなところだよね。
浦:そうですね。
お二人とも「少数派」を選ぶことが多かった!?
――本作では頭脳バトルと体力バトルがありますが、お二人はどちらが得意ですか?
上村:僕はミステリーが好きなんですが、種明かしされると「ああ、そうだったのか!?」と驚くことがよくあるし、『人狼ゲーム』とか『Among Us』のようなウソをつく系のゲームができないんですよね。もし「犯人はオマエだろ?」と言われたら「ち、違うもん」みたいに動揺しちゃうので。
浦:ヘタクソだ! 役者なのに(笑)。
上村:人を偽るのがヘタクソなので、どちらかというと体力バトルのほうがいいかもしれません。体力には自信があって、毎日2万歩、歩いているので。
浦:すごいですね! 僕はどちらも苦手なんですが、最近、マーダーミステリーにハマっていて。ちょっとずつコツをつかめてきた気がしているので、「頭脳戦が得意なんだ」と思わせたいです(笑)。祐翔さんと一緒にやりたいですね。
上村:やりたいね。
浦:一度、誕生日のときに4人くらいでやれるマーダーミステリーをやりましたよね。またやりましょう!
上村:ずっとやろうと思っていたんだよ。
浦:僕も忘れてて、今思い出しました(笑)。
上村:運動といえば、フリスビーしたよね。
浦:しました!
上村:僕、フリスビーがすごく大好きで。浦くんを誘ってやりました。そういう意味でもやっぱり体力系かも。
浦:フリスビーが楽しかったので、僕も体力系で(笑)。
――お二人はこれまで「少数派」「多数派」どちらを選ぶことが多かったですか?
浦:僕はいつも大切な二択を間違えるタイプで、「みんな絶対にこっちに行くだろう」というほうをなぜか選べないんですよね。
上村:例えば、どんなことで?
浦:励ましの言葉で「よく頑張ったよ」なのか「もうちょっと頑張れるよ」なのか、「どっちが好き?」の「魚」か「肉」とか。こういうのって質問する人の中ではだいたい答えが決まっているんですよね。「魚であれ!」みたいな(笑)。そんなときに「肉」と答えてしまって、「今から行くお店は魚介系です」ということがあったり。
上村:ああ!
浦:僕はよくそういうことをしがちで、訊いてくれた人を失望させてしまうことが多くて。そういう意味では「少数派」になりがちです。
上村:僕もどちらかといえば「少数派」かな。小学生のとき、ホームルームの読書の時間で、みんなは児童書を読んでいるのに、僕は推理小説を読んでいました。分厚い東野圭吾さんの本とか。
浦:それは「少数派」かもしれない。
上村:一人っ子だったので、マイペースに自分がやりたいことをやっていましたね。
浦:二人共、「少数派」だった(笑)。
それぞれの思惑が絡み合う群像劇と、「特権利」による高度な思考戦に注目
――アニメ全体の見どころと、ご自身のキャラ的な見どころのご紹介をお願いします。
上村:テンポ感があり、話数を重ねるごとに、たくさん登場するキャラクターそれぞれの思惑や行動原理、何が彼・彼女にそうさせるのか、どうしてそう動くのか、みたいなものが紐解かれていく群像劇だと思います。
主人公は実篤ですが、サポートする紗綾や親友の龍太、しっかりものの生徒会長の藤十郎など、一筋縄ではいかないメンツがそろっているので、物語が「多数欠」によってどう進んでいくのかに注目していただきたいです。
また、キャラクターの掘り下げもしっかり見ていただくとより楽しめると思います。各キャラクターがイキイキするようにみんなで楽しく演じているので、そういう部分も感じていただけたら嬉しいです。
浦:ほとんど祐翔さんにおっしゃっていただいた通りですが(笑)、あとは「特権利」の存在がこの作品の大きなキーになっていると思います。「特権利」があることで、飛躍的に思考戦の幅が広がって。原作の読み物としてのおもしろさをアニメでも感じていただけると思うし、毎回、実篤と一緒に推理や思考を巡らせてもらえたらより楽しめると思います。
――現代社会では「多数派=マジョリティ」優先みたいなところがありますが、それに対してのアンチテーゼみたいなものもあるのかなと。
浦:そうですね。質問を自分たちで作れるからこそ、それをどう投書するかとか。今は多数派のほうが正しいみたいな風潮がありますが、そこに一石を投じているようで、何が正しくて、何が悪いのかを見つめ直す、いい機会になるんじゃないのかなと思います。
上村:多数派が世の中では重要視されている中で、少数派の意見も存在していて。更にこの作品の中では、多数派のほうが死んでしまい、少数派が生き残って、生き残った人がまた「多数欠」で淘汰されていくという。二項対立みたいな構造が果たして世界のすべてなのかと。本来ならばいろいろなものが認められて、グラデーションであるべきだと思いますが、そういう部分にも警鐘を鳴らすようなところもおもしろいですよね。
でもまずは、純粋にエンターテインメントとして楽しんでいただければ僕らは幸せですので、ぜひご覧になってください。
作品概要