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『ATRI』日笠陽子が語るキャサリンが涙したシーンとは【連載第7回】

『ATRI -My Dear Moments-』連載第7回:日笠陽子さん(キャサリン役)|キャサリンが島の子供たちと触れあい涙を流したシーンは少しだけ少女に戻る感じで表現してみたかった

 

キャサリンだけでなく、この世界の人たちみんなが今を生きるのに必死

――放送済みのタイミングですので、キャサリンの活躍が見られた第4話や第5話についても改めて伺えればと。

日笠:彼女も含めたこの世界の人たちみんながそうだと思うのですが、キャサリンはそれに輪をかけて生きることに必死というか。本当ならやってはいけないことだとわかっていて、本心ではやりたくないのだけれど、みんなおそらく自分の生活に必死だからやらざるを得ない。その究極がある意味キャサリンなのかなって思いました。だから島の子供たちと触れあって涙を流したシーンは、昔の自分を取り戻せたとても良いシーンだったと思います。

 

 

――他にも収録で印象に残るディレクションはありましたか?

日笠:ゲームで元々演じていたこともあるので、基本的には大きな変更や指示はありませんでした。ただアフレコをするにあたって、出来上がってきた絵を見るとアドリブを結構入れていくスタイルで、試されているのではないか?と少し思うところもありましたね。

だから結果カットされているかもしれないのですが、アドリブはかなり細かめに拾ってトライしています。加藤監督や音響監督の明田川仁さんからは「ありがとうございます」と言っていただいていたので、使っていただけていたら嬉しいです。

――台本に無い台詞を加えることも意識されていたんですね。

日笠:序盤は本当にアドリブがトライできる機会が多かったので、どうしようか悩みました。私はテストと本番を結構変えたいタイプです。何パターンか考えていったのですが、やってみてこれは違うなと思った時に「ここのアドリブ、何かいい案ないかな?」って相談するとみんなも乗ってくれて。だからアニメのキャサリンは、みんなのアドリブ案を盛り込みながら出来上がったキャラクターかもしれません。

 

 
やっぱりアドリブはみんな楽しいんですよ。ギャグだったり何かネタを盛り込みたくなるし、考えるだけでも楽しいみたいです。小野さんからも色々アイディアをもらったのですが、やってみたら却下されましたね。キャラクターの設定的にダメなパターンのものだったので、思い出に残っています(笑)。

一同:(笑)。

――アドリブの相談もできる点もあって、キャスト間の仲が良さそうに思います。他にも印象に残ったエピソードはありますか?

日笠:分散収録の時もあったのですが、出演者がそこまで多くない作品ですし、新型コロナ対策が落ち着いたタイミングでもあったので、かなり久しぶりにせーので収録に臨む機会が多かったんです。

キャスト揃っての収録に初めて臨む、若手の子たちもいっぱいいました。収録ではマイクワークが復活していたこともあり、私たちも久しぶりだったのですが、現場で戸惑っている様子の子も何人かいたんです。その影響もあって「誰々は何番のマイクに入ってください」みたいな指示もあったりと、演技以外のところに時間も使っていて。これはまずいなと思いました。

 

 
私たちは過去ずっと行ってきた動作なので、もちろん知っていますが、若手の子たちはその環境が初めてですし、知らないのは当然です。知らないことは罪ではないですし、なぜできないのかというと知らないからで、おそらくそこまで誰かに教えてもらうこともなかったんじゃないか、と感じました。

そこで、本当に差し出がましい部分はあったのですけれど、若い子たちだけを休憩時間に集めてマイクワークのやり方や台本の持ち方を教える時間をいただきました。

話してみると、「マイクはひとり1本」の感覚があったみたいで、マイクの目の前に座って、マイク前にまっすぐ入っていくことが、コロナ禍で普通のことになっていたようです。私たちが若手の頃は、視界の端で次の人がマイクに入ろうとしていることを把握できるように、360度に目をつけろみたいな指示を頂いていました。

 

 
現場が上手く回ってお芝居に集中できるのは、やっぱりマイクワークという技術があるからだと思いますし。そういうちょっとしたお手伝いができたら……なんてことも思う現場でした。自分で説明しながらも、色々なところを気にしなければならない大変な職業なんだなって思っていましたね。以降みんなのマイクワークがスムーズになってくれていたら嬉しいなと思います。

――作中も収録中も本当に先生みたいですね。そういえば前回の髙橋さんのインタビュー時に、ピクニックのお話も出ていました。

日笠:この作品のキャスト陣はみんな仲が良くて、赤尾さん、小野さん、髙橋さんの3人は結構ご飯に行っていたそうですね。ラーメン屋さんの話も聞きました。髙橋さんのインタビューに掲載されていたピクニックの時は参加できなかったのですが、赤尾さんが「今度は日笠さんの予定が合う時にお花見しましょう!」って言ってくれて、時間を作って敢行できました!

その時は赤尾さんと髙橋さんと私の3人で、散りかけでも花は残っているという絶妙な時期でしたね。2時間くらいいたのですが本当に一瞬に感じるくらい、ちゃんとしたお花見を楽しみました。

 
お花見をした公園では、小学生くらいの男の子が私たちのシートの周りをウロウロしながら、「家に帰してやらねば・・・!」みたいなことを言って蟻と遊んでて。赤尾さんと髙橋さんはその子と優しく会話していたので、私も「最高の場所だよね!ここは!」って話しかけてみたら、なぜか急に真顔になって、逃げるように走っていってしまったんですよ。私、子供に嫌われていたりするんでしょうか……!?

一同:(笑)。

日笠:とにかくその事件も面白くて、爆笑しながらみんなで帰ったりと良い思い出になりました。後は小野さんと細谷さんも加えた5人でタコスを食べたこともあったかな(笑)。

 

――以前のインタビューで第1話のアフレコでは日笠さんが一番楽しそうだったと伺いました。

日笠:やっぱり、演じるキャラクターのポジションが明るくて一歩引いたところがあるかもしれません。アトリや夏生は台詞量も多く、水菜萌は繊細で思っていることを自分の中に閉じ込めるタイプで、髙橋さんも真面目にキャラクターに入り込んでいましたし。その中でもやっぱり、アフレコ現場は楽しさと真剣さが絶妙なバランスであることが一番良いと思っているので、グッと明るい雰囲気を作るのは大事なことかもしれないです。

 

[文・胃の上心臓]
 

作品概要

ATRI -My Dear Moments-

あらすじ

原因不明の海面上昇によって、地表の多くが海に沈んだ近未来。幼い頃の事故によって片足を失った少年・斑鳩夏生は、都市での暮らしに見切りを付け、海辺の田舎町へと移り住んだ。身よりのない彼に遺されたのは、海洋地質学者だった祖母の船と潜水艇、そして借金。夏生は“失った未来”を取り戻すため、祖母の遺産が眠るという海底の倉庫を目指して潜る。そこで見つけたのは、棺のような装置の中で眠る不思議な少女――アトリ。彼女は、人間と見紛うほどに精巧で感情豊かなロボットだった。海底からサルベージされたアトリは言う。「マスターが残した最後の命令を果たしたいんです。それまで、わたしが夏生さんの足になります!」

キャスト

斑鳩夏生:小野賢章
アトリ:赤尾ひかる
神白水菜萌:髙橋ミナミ
野島竜司:細谷佳正
キャサリン:日笠陽子
名波凜々花:春野杏

(C)ATRI ANIME PROJECT

 

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