『ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い』ジョセフ・チョウプロデューサーインタビュー|同じ映画を3回作る──前代未聞の制作方法は「とにかく時間がない」から生まれた!?
『ロード・オブ・ザ・リング』がまさかの日本でアニメ化ーー。2024年12月27日(金)公開の『ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い』。その知らせを聞いた『指輪物語』のファンは大層驚いたことでしょう。1978年にアメリカで制作されたアニメ作品はありましたが、そこから考えても50年近くの年月が経っています。
そんな前代未聞のプロジェクトに立ち向かった主人公の一人、Sola Entertainmentのジョセフ・チョウさん。彼はプロデューサーとしてどのように作品を支え続け、完成までチームを率いたのでしょうか。
アニメの歴史を変えるかもしれない壮絶な冒険の一端を覗いてみましょう。
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画像をクリックすると、関連記事にとびます。「ノーと言えないプロジェクト」がある
──本作を制作する上で、ワーナー・ブラザースからは具体的にどんなオーダーがあったのでしょうか?
チョウ:一番最初に言われたのは「手描きにしてほしい」ということでした。当時はコロナ禍の真っ只中で、それよりも前から薄々と話はあったんです。
でも、全て手描きでやるというのはかなりの挑戦でしたね。その時点ではすでに時間もなく、世界的なアニメブームで人手も足りない状況だったんです。
しかも、ハリウッドのリリースタイムは非常に厳しく、2年半から3年で完成させる必要がありました。その中でも「ノーと言えないプロジェクト」があるんです。『ロード・オブ・ザ・リング』の話が来たら断るなんてしませんよね(笑)。
神山健治監督とは『攻殻機動隊 SAC 2045』と『ブレードランナー ブラックアウト2022』も一緒に作品を手掛けていたことがあったので、今回のオーダーについても彼なら対応できるだろうと思いました。それに、一緒にやっていたからということよりも「このプロジェクトは神山監督しかいない」と直感で感じました。
そこから神山監督に電話して。神山監督も忙しいから一発で電話が繋がることもあまりないんですけど、その時はたまたま一発で繋がって。「神山さん、『ロード・オブ・ザ・リング』の話が来ました。全世界で公開されるんですけど、やります?」と聞いたら、「うん。やるしかないよね」と(笑)。
──(笑)。
チョウ:僕と同じ反応でしたね(笑)。その頃、コロナでレストランなども全て閉まっていたので、神山監督や他のメンバーを自宅に招いて「どうする?」と話し合いを始めたのが約3年前です。
──なんと……。「本作を制作する上で一番大変だったことは何ですか?」と聞こうと思っていたのですが、その時が一番大変だったかも知れませんね。
チョウ:それだけじゃなくて何から何まで大変でした(笑)。特に脚本が完成していない状態での制作だったので、ターゲットが定まっていませんでしたし。当初、尺は90分と決まっていて、「それなら行けるか……?」という感じだったんですが、蓋を開けてみたら2時間40分。ほぼ3時間になっていて「どうするんだこれ?」という感じでした。※上映時間:2時間14分
監督と常に「このままだと落ちるよ!(※作品が放送や公開に間に合わないことを「落ちる」と言う)」と言い続けていましたね。でも、『ロード・オブ・ザ・リング』ですからね。落とせるわけなんですから(笑)。
でも最終的には奇跡的に完成しました。本当に奇跡の連続でここまで来られたというのが正直な感想です。「やった! 完成した!」という感じでもなく、「どうして完成できたんだ……?」という感じですよ(笑)。