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映画
『ロード・オブ・ザ・リング／ローハンの戦い』ジョセフ・チョウプロデューサーインタビュー｜同じ映画を3回作る──前代未聞の制作方法は「とにかく時間がない」から生まれた!?
やはり神山監督は天才ですよ
──本作は画期的な方法で作成されているので（※詳細は神山監督のインタビュー）、神山監督にもそれについてお伺いしたのですが、反応が薄くて（笑）。
チョウ：そうなんですよ！ 別に我々が奇抜なことをやったというわけではなくて、それしか方法がなかったんです。「手元にあるもので作るとしたらどうする？」という問いの答えですね。
Sola Entertainmentという会社は、プロデュースとしては作画の作品もやっていますが、会社として直接制作しているのは3DCGなんです。だから当初は作画をできる人を集めようとしましたが、先程も言ったように人がいない。「5年先まで埋まってますよ！」という人たちばっかりなんです。
実は最初のプレスコの段階でもどうするか決まっていなかったんです。特に作画監督がいない。普通は40〜50名は必要でしたが、社内で2名しかいなかったんです（笑）。
──え!?
チョウ：もちろん外部の方にも発注していましたが、外部発注だと内部で動いてくれる方とはやはり勝手が違うので、クオリティを担保するのが難しいんです。
その一貫性を保つためにどうしようかとなって、神山監督とも相談して、「じゃあ3DCGとモーションキャプチャーを使おう」となりました。
通常ならカメラ（画角）を修正しながら作業を行ったりするんですけど、そんな時間もない。先にカメラを決めてしまって、作画を進めてもらうしかなかったんです。
今思うのは、やはり神山監督は天才ですよ。自分では言わないと思いますけどね（笑）。こんなことを思いついて、実際にやってしまうのは本当にすごいです。作家性も素晴らしく、テクニカル面にも詳しい上に、作り方まで考えてしまう。しかも今回に限らず、ずっと作品の作り方を考えているんですよ。
──今回の制作方法は、今後の作品にも応用可能でしょうか？
チョウ：応用可能だと思います。特に、Unreal Engineを活用してカメラワークを効率的に決める手法は、今後も多くの制作現場で取り入れられると思いますよ。先ほども話しましたが、やはり人がいないんです。特に演出ができる方ですね。若い方もいないことはないんですが、大半が50代以上の方たちばかりだと思います。
それを補うためのテクノロジーです。3DCGでレイアウトを作るのは、他でも使われていると思いますが、これほど踏み込んで使用したのは我々が初かもしれません。
徐々にそちらにシフトしていくとは思いますが、問題はコストですね。本作のように3回も本編を作る方法は通常ではできません。なので、シリーズ作品で使うにはどうしたらいいのかを実は今考えている最中です。
それは我々だけだと作れないと思うので、様々な方やスタジオさんと協力して作っていく必要があると思います。
でもこれだけが正解だとは思ってはいなくて。画が伸びたり縮んだりするようなものにはこの手法が使えるかわからないんです。トリガーさんなどはやっていますけど、あれはかなりの労力がかかっていると思いますし、アニメ業界で標準化ができないと思います。
標準化ができないと何が起こるかというと、今の日本のアニメ業界はみんなの協力関係で動いているので、それぞれの会社が独立した作り方を進めすぎてしまうと、特定の作品が1社でしか作れなくなったり、協力している会社どうしでしか作れなくなったりするんです。そこは悩ましいところですね。
──現場での人材との関わり方について、どのような課題がありましたか？
チョウ：人それぞれの受け取り方や作業スタイルが異なるため、コミュニケーションが非常に大変でした。難しいのは、3DCGの画をそのままなぞってしまうとロトスコープになってしまうので、作画アニメじゃなくなってしまうんです。でも使わないと構図が合わない。
その中で、神山監督が特にみんなにずっと言っていたのは「解釈して」です。ただトレースするのではなく、作画チームが3DCGを参考にしながら独自の解釈を加えることで、作画アニメ特有の表現を維持するようにお願いしました。
そこは当初から神山監督も懸念していたところで、「このまま出すと嫌がるだろうし、そのまま作ろうとも思っていない。作画作品でないとダメ。トレースはダメ」とコミュニケーションを続けていった結果、あのクオリティの映像になったんです。
本当に間に合うか心配でしたけど、「やるしかない！」と決めてなんとか完成しましたね。
──みなさんの情熱があればなんとかなると。
チョウ：情熱しかないです。日本のアニメ業界なんて情熱しかないですからね（笑）。
[インタビュー/石橋悠 写真/小川遼]
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｜連載：01
神山健治監督
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｜連載：03
フィリッパ・ボウエン
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ジョセフ・チョウプロデューサー
作品概要
あらすじ
映画史に名を刻む傑作『ロード・オブ・ザ・リング』3部作につながる、まだ誰も知らない伝説の戦いが、長編アニメーションとして映画化！強大な力を持つ侵略者から、命を懸けて城と民を守るローハンのヘルム王の一人娘ヘラの成長物語。未熟な王女であり戦士でもあるヘラは、偉大な父を亡くし、幼馴染が宿敵として現れ、いかにして城と民を守るのかー？
キャスト
LOTR TM MEE lic NLC. (C)2024 WBEI
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