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- わたなべみきこ
- 出産を機にライターになる。『シャーマンキング』『鋼の錬金術師』『アイドリッシュセブン』と好きなジャンルは様々。
西側諸国と東国の戦争を望む大学生たちが大臣暗殺テロを企て、<黄昏>の属するWISEはその実行犯の一部を捕えます。捕まってなお横柄な態度で戦争を求める彼らに、WISEの管理官であるシルヴィアは「おまえら人を殺したことはあるか?」と問い、続けて「砲撃で手足がちぎれたことは?骨が砕かれる音を聞いたことは?爛れる肉の臭いを嗅いだことは?目の前で親兄弟が崩れた家に潰されていくのをみたことは?恋人の肉片が壁にへばりついているのを見たことは?」と問いかけます。言わずもがな、それらは全て彼女が経験した「戦争」であり、本当の意味で戦争を知る言葉にテロリストたちは沈黙。ホームコメディながら反戦のメッセージも強く描かれる本作において重要な意味を持つ台詞です。
大臣暗殺テロが未遂で終わり、テロに使われた犬たちを心配するアーニャに、犬たちを丁重に扱うことを約束したシルヴィア。犬を新しく家族として迎え入れられることを喜ぶアーニャを見て「私もあれくらいの娘がいた」とロイドに話し、こちらの言葉を続けました。「いた」と過去形であるため、おそらく先の戦争で娘を亡くしたと推測されるハンドラー。そんな彼女の一言にとてつもない重みを感じます。
東国の人気オペラ歌手が西国を訪問することとなり、東西関係改善の足がかりとなることが期待されていました。そんなとき彼の不倫疑惑やマフィアとの繋がり、パワハラといったスキャンダルが掲載された週刊誌が出回り、その評判は急降下。ところがしばらくすると、その記事が嘘であるという反証記事の載った週刊誌が発売されます。それらの記事を鵜呑みにする新米職員に対して放った一言がこちらです。楽して正解を得ようとせず何が正しいのか自分の頭で考え続けるよう苦言を呈しました。インターネット上で様々な情報が溢れる昨今、心に留めておきたい言葉ですね。
フォージャー家がイーデン校の面接試験を受けた際、面接官を務めたヘンダーソン。しかし、いっしょに面接官を務めた先代校長の息子・スワンが、私欲を満たすためだけに悪意ある質問を投げかけ、アーニャを泣かせてしまいます。子どもの気持ちを軽んじるイーデン校に失望した、と自主的に面接を切り上げたロイドたちの姿を見たヘンダーソンは、「我が校を侮辱したのはどっちだ…」とスワンの顔面をグーパンチ。誇りあるイーデンの教師らしいエレガントな行いですね!
こちらはヘンダーソンが19歳、イーデン校高等部3年生だった頃の言葉です。その頃東西の国際関係は既に冷え切っており、世界各地でも紛争が起きていました。彼は身近で起こるケンカも国同士の戦争も、教育で止められると信じ、教職を志します。その気高い精神は今でも変わらず、アーニャをはじめとした生徒たちに教えを説いています。
イーデン校で教師となったヘンダーソン。イーデンの後輩であり教え子でもあるマーサが「国防婦人軍」として戦争へ行き、その後新聞で彼女が前線兵となったことを知ります。彼女が戦地へ赴いてからも文通をしていたヘンダーソンは、彼女の弱音が綴られた手紙に涙し、どうか無事に生きて帰ってほしいと切実な願いを込めた手紙をしたためます。悲痛な想いに胸が苦しくなった読者も多いことでしょう。
ベッキーが幼い頃からお世話役として彼女を見守ってきた女執事・マーサ。幼稚園の頃、気位が高く気も強いベッキーは周囲の子たちと衝突することが多く、イーデン校への入学も「程度の低い連中と群れてもいいことない」と消極的でした。そんな彼女をマーサはこの言葉で優しく諭します。嫌々入学した学校でアーニャと出会い、楽しく学校生活を過ごしているベッキーを、マーサは嬉しく思っているようです。
若い頃に兵士として2度の東西戦争に参加したマーサは、戦場が悲惨だという真実以外、戦争が起こる原因も複雑に絡み合った世の中の事情もわからなかったと言います。その話にモヤモヤするというベッキーに対し、彼女はこの言葉を伝えました。「わからない」ことは不安であるため物事を決めつけて「わかったつもり」になって不安を解消しようとすること、そしてそれが人間の弱さであり危険なことであると諭します。
アーニャが入学式の日に仲良くなったベッキー。初日からダミアンと派手にケンカをしてしまったせいで他のクラスメイトから距離を置かれて陰口を言われるアーニャは、心の声が聞こえてしまう事もあって大きな不安に駆られていました。しかし、ケンカの経緯を知るベッキーのこの一言でアーニャの不安は払拭されます。アーニャと仲良くなりたいと言うベッキーの笑顔がとってもキュートで癒されますよね。
姉・ヨルを愛してやまないユーリ。表向きは外務省職員として勤務する彼は、東国の国家保安局(秘密警察)としての裏の顔を持っています。姉には心配をかけたくない、汚れ仕事をしていると知られたくないという理由から素性を隠していますが、彼が危険な仕事を頑張るのは全てヨルのため。シスコンの面白キャラとして描かれがちなユーリですが、この一言からは大好きな姉を守りたいという強い気持ちが伝わってきます。
人命救助によって星獲得者新入生第一号となったアーニャは一躍校内の有名人になります。しかし、そのことを僻む同級生たちがアーニャが不正して星を取ったと陰口を叩き、ダミアンにも同意を求めました。その時にダミアンはきっぱりとこの言葉を返します。他人の功績を僻むのではなく、正しく評価して悔しがるダミアン、家柄だけではなくその精神も超一流です!
こちらは、護衛任務を完遂したヨルが護衛対象のオルカから送られた感謝の言葉です。幼い息子とともに命を狙われていたオルカは、ボロボロになりながら自分たちを守ってくれたヨルにハグしながら感謝を伝え、最後に息子を抱っこしてくれるよう勧めます。手がベトベトだから、と遠慮するヨルに対し、オルカはこの言葉を送りました。赤ちゃんを抱くヨルの横顔がとても穏やかで心にジンときます。
こちらはアーニャたちが乗ったスクールバスをジャックしたテロリスト・ビリーの娘の言葉です。学生運動に参加する娘を心配したビリーは反政府団体に出入りすることをやめるよう言った際、彼女は「信念のために死ぬのは怖くない!」と言い切り、この言葉を続けました。しかし、彼女は政府のデモ鎮圧に巻き込まれて亡くなってしまい、ビリーはその怒りと悲しみからバスジャックを起こしたのでした。
こちらはユーリの保安局の同僚・クロエがユーリに対して言った言葉です。大好きな姉を守りたい一心で無茶ばかりするユーリ。先の任務で<黄昏>を取り逃がしたことでもっと強くなりたいと焦るあまり普段以上に冷静さを欠く彼にクロエはビンタを食らわせます。弟を大切に思う姉のためにも、まずは自分を大事にするよう言い聞かせるのでした。
こちらは市役所の部長であり、ヨルの所属する闇組織ガーデンの一員マシュー・マクマホンの言葉です。父親を戦争で亡くした市役所職員ミリーが、戦時中に首相だったデズモンドの妻メリンダに対し「極悪人」と言い放ちます。その際、マクマホンは開戦したのはデズモンドのひとつ前の首相であると認識の間違いを訂正し、この言葉で彼女を諫めました。現代人も心に留めておくべき金言と言える一言ですね。
こちらはフォージャー家の隣に引っ越してきた老夫婦の夫ジークムント・オーセンがアーニャに言った言葉です。昔大学教授をしていたジークムントに古語の勉強を教わるアーニャは、皇帝の学徒(インペリアル・スカラー)になって何をしたいか問われ、「せかいへいわ!」と答えます。そんなアーニャをジークムントは優しく抱きしめ、この言葉を送りました。優しくアーニャを抱きしめる姿にジーンとしてしまいます。
アーニャの可愛さや喜劇的に描かれるフォージャー家の日常に癒される『SPY×FAMILY』。それゆえに多くの人の心をとらえ、アニメ化によって一大ブームとなったのはもちろんなのですが、キャラクターたちの言葉に注目すると本作ではシビアに戦争が描写されていることに気が付きます。まもなくアニメSeason3も放送されるので、台詞に注目しながらアニメを見返したり原作を読んでみてはいかがでしょうか。