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- 塚越淳一
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毎日1曲ずつ名曲おすすめアニソンを紹介する連載企画「塚越淳一のアニソントラベラー」。毎週金曜日は懐メロ特集! 連載第19回は、アニメ『シティーハンター』より、TM NETWORKの「Get Wild」です。
この曲もアニメ史に残る名曲ですよね。『シティーハンター』は見たことがないけど、「Get Wild」は聴いたことがあるという方も多いかもしれません。
懐メロ回は塚越さんが饒舌になるので今回もお見逃しなく!
世の中に数多くの名イントロ曲があるけど、自分の中でいつも上位にあるのは「Get Wild」だ。
さて、アニソンは、タイトルを叫ぶような、アニメのために作られた主題歌の時代から、さまざまな広がりを見せていくことになった。1981年の『うる星やつら』には、キティという会社を創った多賀英典さんが関わっているのだが、この方がもともと敏腕音楽プロデューサーなので、アニメでかける音楽もこれまでと少し違う印象があった。たとえば「心細いな」(82年)や「殿方ごめん遊ばせ」(85年)などは、そんなにアニソンという感じがしないと思う。それに、これまで紹介してきた『超時空要塞マクロス』や『魔法の天使クリィミーマミ』といった作品ではアイドルソングを起用していた。
日本にも様々な音楽が溢れてきた時代の流れがある中、いわゆる『週刊少年ジャンプ』原作のアニメの音楽も変わってきた印象があって、83年の『CAT'S EYE』は作品タイトルを連呼しているものの、曲はいわゆるシティポップ調だった。当時、アニメは子供向けという認識が強くあったのだが、あの頃の少年漫画はすごく売れていたし、大人も読んでいたので当然といえば当然なのかもしれない。この年代のジャンプアニメの主題歌はなかなかの名曲揃いなのだが、基本的にはアイドルソングやロックンロールが主流といった感じだった。
そんな中に登場したのが『シティーハンター』(87年)だ。そのエンディングで流れた「Get Wild」は、これまで聴いていた音楽と全然違った。いわゆるデジタルサウンドで、あのシンセの音はとにかく衝撃的だった(洋楽とかも聴いていなかったので)。
この当時TM NETWORKというのは、時代を先取りしすぎていたのかそれほど売れてはなく、ただ、渡辺美里に提供した「My Revolution」が大ヒットをし、自身も「Self Control(方舟に曳かれて)」(87年)でスタイルを確立。勝負の一手となったのが、このアニメタイアップだった。
ちなみに『シティーハンター』のストーリーは、冴羽遼(CV.神谷明)というめちゃめちゃ強いスイーパー(掃除屋)が、もっこりとか言いながら女性に襲いかかったりしながらも、決めるところは決めて女性を助けるというお決まりの展開があるアクションもので、最後は必ずカッコよく締めるのだけど、まだアニメが終わっていない中で、あのシンセの名イントロが流れてくるのだ。この手法はこの作品からだと言われているが、アニメサイドからのオーダーだったそうで、それがなければあのイントロは生まれていないということになる。で、今にして思えば、あれはアニソンに革命が起きた瞬間だったんじゃないかと勝手に思っている。いや、確実に起きていた。
もちろん、その後、J-POPがものすごく売れる時代が到来し、アニメと全然関係がないような主題歌が生まれてきたりするのだけど、個人的にはそれも受け入れてしまうのがアニソンの懐の深さだとも思っているので、いつか紹介したいと思っている。実際に、アニソンで流れて初めて知ったアーティストはかなり多いし、それが人生を豊かにしてくれたのは確かなので。
「Get Wild」の話に戻ると、ボーカルが入ってくるところで、エンディングアニメーションに切り替わるのだが、車のヘッドライトの表現がめちゃくちゃクールでカッコ良くて、冴羽獠もハードボイルドに描かれていて、ものすごくハイセンスな映像だった。
ちなみに『シティーハンター2』のエンディングの「STILL LOVE HER(失われた風景)」も名曲なので、ぜひ一緒に聴いてほしい。この曲はイントロからできていった曲で、『CAROL』という名盤の最後に収録されているのだが、ロンドンレコーディングをしていたのと、小室哲哉が当時ロンドンに住んでいたので、歌詞がロンドンの景色によく合う感じになっている。
ただ、アニメのエンディングでは新宿の公園とかの写真にアニメのキャラを合わせるような形になっていたので、僕はこの歌詞は新宿のことを歌っているんだとずっと誤解していたのだが、新宿に行くようになってみたら全然違うじゃんとなった(笑)。確かに考えてみれば《二階建てのバスが追い越してゆく》とか、日本の日常にはない景色よね…天晴!
『ご注文はうさぎですか?』のシリーズ楽曲毎日紹介の執筆やイベントパンフレットの制作、内田真礼さん、三森すずこさんのライブパンフレット、『まちカドまぞく』『ちはやふる』のブックレットほか、雑誌やWebなどで執筆をしているフリーライター。
アニメBlu-rayブックレットの執筆(「五等分の花嫁∬」「まちカドまぞく」「まちカドまぞく2丁目」「「ちはやふる」「リコリス・リコイル」etc.)、内田真礼、三森すずこなどのライブパンフレット、22/7写真集、久保田未夢UP_DATE執筆ほか、いろいろ