この記事をかいた人
- 阿部裕華
- アニメ・音楽・映画・漫画・商業BLを愛するインタビューライター
ということで今回も本稿の最後に阿部さんからおすすめされたBL作品を石橋が読んで、感想を書いてみます。感想を書く順番は読んだ順番です。
あまり先入観にとらわれないように、攻めのパターンは変えつつ、好みの絵柄の作品を選んでみました。
ちなみに阿部さんにチョイスしたラインナップを報告したところ、「割と性描写多めなので、どんな感想を抱かれるかドキドキ……」と言われたので、とうとうこの扉の前まで来たかと思いました。
すでに作品をご覧になった方はにやにやしながら、まだご覧になっていない方はご参考にお楽しみください!
まずはじめに言っておくと、BLの穴は深いです……!
今回選んだ作品の中で一番えちえちなのを最初に読んでしまいました。数ページめくるごとに繰り広げられる痴態の数々……! 一人暮らしなのに何度か本を閉じで周囲を見渡してしまいました。
実家の母が知ったら失神しそうなので、ナイショにしておこうかと思います。みなさんも読むときはお気をつけを! でも、面白いんです! 見ちゃダメ! でも見ちゃう! でも! いや! となっている自分が不思議でした。
とあるバーを中心にした3カップルの恋愛模様を描いた作品で、それぞれの数奇な運命が語られています。
女装攻めで描かれるのはショータ(攻め)とヒロト(受け)の二人。ショータがめちゃくちゃ美形で、これは女の子なのでは……? と思ったほどで、受けのヒロト(ノンケ)もショータを女の子だと思ってナンパ目的で声をかけます。しかし、ベッドの上で服を脱いだら男と気づいちゃうというシチュエーションです。
そこからはショータの性欲に負けて、もうここには書けないくらいにヒロトがむちゃくちゃにされてしまいます……! 性描写がとんでもなくえちえちで、とろとろになってしまうヒロトを見て「ひゃ〜!」となりました。
ショータは「オカマにオカマを掘られた……!」と後悔するのですが、あの快楽が忘れられません。どんどんとショータのペースにハメられていき、もうショータのことが忘れられなくなります……。
一方、ショータもヒロトのことを気に入るのですが、男としての自分も見てほしいと葛藤し……という展開に! この葛藤が本作の最大の魅力だと思います。
「ヒロトはこの見た目と快楽だけが好きなのではないか?」と思うショータ。対するヒロトは「俺はなんでこんなやつに……?」と悩みます。
そのお互いの葛藤がぶつかりあったとき、本当の結末が訪れるのです。二人の結末はぜひ、本書をお取りください。
もちろん他の2つのカップルのお話もえちえち全開かつ、ぐっとくるストーリーなので後悔はさせません。
ちなみに知り合いのライターに聞いたところ、パステルカラーの表紙のBLコミックはどちゃくそエロいのが多いそうです。それ、早く教えてよ〜!
前回もご紹介した『ワンルームエンジェル』のはらだ先生の作品ということで、今回の中で一番楽しみにしていました。
本作の最大の魅力はコミック1冊に対する構成力の高さだと思います。上下巻の上巻だけしかまだ読めていませんが、この1冊で起承転結がしっかりしているので、読み終わったあとに「すげー」と思いました。
執着攻めとご紹介しているので、ある程度の結末は予想できるとは思うのですが、それでもこの物語にはびっくりしました! まさかこんなオチ!? 天晴! とみなさんも思うことでしょう。そして、少し「怖い」とも……。
スタイリストの笑吉(受け)が働くお店に新しいスタッフとしてやってきた福介(攻め)。技術を優先する笑吉とお客さんとのトークを得意とする福介、というまったく違ったスタイルの二人ですが、福介の押しの強さに負けて、徐々に笑吉がほだされていきます。
笑吉がツンツンしたなかなか懐かない小動物感があって、福介がかまってあげたくなるのもなんとなくわかる気がします。しかし、笑吉とは正反対の外交的で行動力もある福介がなぜそこまで笑吉に執拗にこだわるのかがわかりません。そう、ある事件が起こるまでは……。
それまではほのぼので笑えるシーンもあるのですが、その事件をきっかけに物語は急展開していきます。彼らの日常に潜む真実を知った時の鳥肌の立ち具合は、開いた口が塞がりませんでした。きっと下巻ではとんでもないことが起こるのでしょう……(読み終わった瞬間に下巻の購入ボタンをポチッでした)。ドキドキすぎてこの原稿を書きながら怯えています。
ストーリーがとても重要なので、なかなか具体的なことが言えないのがもどかしいのですが、これは本当におすすめです!
上巻だけしか読んでないのにこうなっちゃった僕は、下巻ではどうなっちゃうの!? お願い死なないで石橋! ライフままだ残ってる!「次回、石橋死す」という次回予告が見えます。俺は、はらだ先生を信じるぜ!
ダンディな絵柄に惹かれて読んでみた『In These Words』。いやぁー鬼畜攻めって怖いですねぇ。
夜な夜な顔の見えない謎の人物に犯され続ける夢を見る精神科医の主人公・浅野克哉。ある日、浅野は、連続殺人犯・篠原の接見を担当することになります。
浅野の篠原は密室で2人きり。浅野は精神科医として篠原から話を聞き出していきますが、話が噛み合っているようで噛み合っていないような不思議な会話を繰り広げていきます。まるでサスペンスドラマを見ているような上質な物語は一種の文学すらも感じさせます。
また、浅野が見る生々しく、そして痛々しい夢は随所に狂気が潜んでおり、目を覆いたくなる瞬間も。拘束されて無理やり犯されたり、ナイフで切りつけられたりと、なかなかにハード。それは行き過ぎた異常な愛。浅野は夢から覚めることができるのでしょうか……?
このように内容がかなり重めなため、万人受けする作品ではありませんが、僕は読んでよかったなと思いました。例えるなら、『羊たちの沈黙』のようなサイコホラー作品を見ているような感覚で、自分が全く関わらないであろう非現実的な瞬間を垣間見れる謎の快感がある、とでも言うのでしょうか。
極限状態におけるBL。それが鬼畜攻め、そして『In These Words』なのです。
あまーーーーーーい!!!!
先程とは打って変わってすみません。でも『初恋、カタルシス』は、超あまあまなんです。
ジェンダーレスで悩む月島一騎(受け)と月島のことが大好きでなんでもわかっている唐木田透真(攻め)の出会い、別れ、元サヤ、ラブラブ期までが丁寧に描かれています。なんというか、安心して読める作品でした。
恋に落ちたときの世界が変わって見える瞬間が丁寧に描かれていたり、お互いに違う人間ということで悩んだり、二人が幸せを掴むまでの日常で繰り広げられるある種の“普通の恋物語”がとても素敵でした。
ただ、「健気攻めってどういうことやねん?」と思っていた僕にとってはわりと衝撃でした! 阿部さんの講義中に「ヤンデレみたいな?」と言いましたが、たしかにヤンデレっぽさがありつつも、優しさの割合が多いような(70〜80%くらいが優しさ)気がしました。
あそこまで相手のことを想う、想われるとはどういう気持ちになるんでしょう……。そこまでの経験をしていない自分は違う意味で甘ちゃんだなと少しさみしくなりましたが、そんな悲しさすらも吹き飛ばしてくれる爽やかさとハッピーが『初恋、カタルシス』にはあります。
人はどこまで人を愛せるのでしょうか。唐木田と月島の関係は、僕の心にそんな問いかけをくれたような気がします。
[文/阿部裕華]
アニメ・音楽・映画・漫画・商業BLを愛するインタビューライター。Webメディアのディレクター・編集を経て、フリーライターとしてエンタメ・ビジネス領域で活動。共著「BL塾 ボーイズラブのこと、もっと知ってみませんか?」発売中。