この記事をかいた人
- 福室美綺
- 福岡出身。触れた作品にすぐハマる、ちょろさNo.1ライター。親友であり敵のような複雑な関係性が大好物です。
シリーズ累計1000万部突破の大ヒット作『文豪ストレイドッグス』の舞台化第7弾となる『文豪ストレイドッグス STORM BRINGER』が、2022年6月24日(金)より開幕。
『文豪ストレイドッグス』(原作:朝霧カフカ・漫画:春河35)は、2013年にヤングエースにて連載が開始された架空の都市[ヨコハマ]で繰り広げられる異能力バトルアクション漫画です。
今回上演される舞台では、前作『太宰、中也、十五歳』で描かれた「荒覇吐事件」から一年が経過した頃、ポートマフィアに加入し幹部の座を狙う十六歳の中也のもとに、中也を弟と呼ぶ“暗殺王”ポール・ヴェルレエヌが現れる場面から始まります。
舞台が上演されるたびに新たな魅力が味わえる“文ステ”。今回はどんな舞台を魅せてくれるのか、本公演の公開ゲネプロレポートをお届けします。
※本作品の内容に触れるネタバレがあります。ご注意ください。
今回の見どころは、何といっても“中原中也のアイデンティティ”が描かれるということ。中原中也とは“何”なのか——? さまざまなキャラクターたちを交えながらその真相が明らかになっていきます。
ポートマフィアの一員として完璧に役目をこなしていた中也は、どこかつまらなさそうな表情をしながらも“旧世界”と書かれている煉瓦造りのお店で、“若手会”のメンバーから入団一周年をお祝いされます。
若手会の創始者でありリーダーでもあるピアノマン、お調子者の阿呆鳥(アルバトロス)、最高の医者である外科医(ドク)、表世界との交渉を担当している広報官(リップマン)、殺し屋の冷血(アイスマン)。この5人と一緒にいるときの中也は年相応の姿を見せるので、ほっこりします。
物語を通して、“自分とは何者なのか?”を問いかけ続ける中也。彼は誰よりも仲間想いなんだと、表向きはツンケンしていても優しい心を持っているんだと、いろんな場面から感じられずにはいられません。
また、中也を演じる植田圭輔さんの凄まじいエネルギー量に圧倒されます。アクションシーンはもちろんのこと、ひとつひとつの言葉が魂に響いてくるようでした。
そして、中也と行動を共にすることになる欧州の人造知能捜査官であるアダム・フランケンシュタイン。このアダムと中也のやり取りがコミカルで、物語に違う新鮮さを与えていました。少しずつ2人の間に芽生えてくる絆にも注目です。
個人的に驚いたのは、アダムを演じる磯野 大さんのセリフ量。“人造知能”を宿しているからこそ、次から次へと難しい単語が出てくる言葉の量と流暢さに、もはや畏怖を感じます。スタイリッシュな立ち振る舞い、お茶目な一面も見せるアダムは、今作の注目人物です。
アダムと同じく、今作で欠かせない人物となるのが、中也の前に突然現れる暗殺王のポール・ヴェルレエヌ。中也を弟と呼び、中也の心に関わる人間を全員暗殺する計画を企てます。なぜそこまで中也にこだわるのか、かつて中也がいた研究機関にも関わっている様子……。
歪んだ価値観を持ち、色気とミステリアスさを漂わせるポールを見事に表現するのは佐々木 喜英さん。かつてポールの相棒であったアルチュール・ランボオとの関係性が描かれるシーンもあり、胸が締めつけられるようでした。
そんなポールと中也の出自の秘密を知っているのが、謎の人物・N(演:久保田悠来)。「荒覇吐」とは何なのか、このNから語られる言葉に耳を傾けると異能に対する理解が深まります。終盤にかけて明らかになるポールと中也の過去にも関わっている人物なので、注意深く彼の言葉に耳をそばだててください。
そのほか、かつて中也がリーダーだった組織《羊》の元メンバー・白瀬(演:伊崎龍次郎)、ポートマフィアの首領・森鴎外(演:根元正勝)、先代首領からポートマフィアに仕えている広津柳浪(演:加藤ひろたか)も登場し、物語を彩ります。
もはや中也の物語には必要不可欠な存在になっている太宰 治(演:田淵累生)は、いつものように嫌味を言っては中也をイラつかせるシーンも。この2人のおなじみの軽妙なやり取りに微笑ましさを覚えます。
照明、映像、音など前作『太宰、中也、十五歳』より全体的にパワーアップしており、コミカルとシリアスさがバランスよく融合した物語へと引き込まれる力が本当に凄まじいです。舞台を観た後は、この“暗殺王事件”が中也のアイデンティティを確立させる軸になったんだと実感します。
「中原中也とは何なのか——?」
その答えを中也たちと共にぜひ見つけてください。
脚本・演出を担当した中屋敷法仁さんが「アクション、ミステリー、アドベンチャー、さまざまな要素が荒々しく渦巻き、読む者を熱くさせます」とコメントしたように、嵐のような原作小説が舞台で体験できる貴重な機会です。
舞台『文豪ストレイドッグス STORM BRINGER』は6月24日(金)〜27日(月)まで東京・日本青年館ホールにて、7月2日(土)・3日(日)に東大阪市文化創造館 Dream House 大ホールにて上演されます。
現在、当日引換券が受付中のほか、一部公演のライブ配信も決定。詳細は、公式サイトまたは公式ツイッター(@bungo_stage)をご確認ください。
舞台写真撮影:田中亜紀
福岡出身。触れた作品にすぐハマる、ちょろさNo.1ライター。好きな作品は『Free!』『NO.6』『十二国記』『ギヴン』『新世界より』など。好きな声優さんは保志総一朗さんと坂本真綾さん。ハッピーエンドよりも意義のあるトゥルーエンドや両片想いが大好物な関係性オタクで、主にイベントレポートやインタビューを担当しています。最近はVTuberがマイブーム。
【東京公演】2022年6月24日(金)~27日(月)
会場:日本青年館ホール
主催:舞台「文豪ストレイドッグス STORM BRINGER」製作委員会
お問合せ:インフォメーションデスク https://information-desk.info/
【大阪公演】2022年7月2日(土)~3日(日)
会場:東大阪市文化創造館 Dream House 大ホール
主催:サンライズプロモーション大阪
お問合せ:キョードーインフォメーション
0570-200-888 (11:00~16:00/日祝休業)
【チケット情報】
チケット料金:全席指定10,800円(税込) ※未就学児入場不可
★ライブ配信 実施決定!
※詳細は決まり次第、公式サイトにて発表いたします。
原作:角川ビーンズ文庫「文豪ストレイドッグス STORM BRINGER」
脚本・演出:中屋敷法仁
協力:朝霧カフカ・春河35
出演:
植田圭輔
佐々木喜英 磯野 大 伊崎龍次郎
加藤ひろたか 田淵累生 根本正勝
久保田悠来
岡村 樹/黒須育海/山中啓伍/小林らら/美守 桃/よし乃
音楽:岩崎 琢
振付:スズキ拓朗(チャイロイプリン/コンドルズ)
美術:中西紀恵
照明:吉枝康幸
音響:吉田可奈
映像:荒川ヒロキ
衣裳:前岡直子
ヘアメイク:古橋香奈子
殺陣:六本木康弘
演出助手:溝端理恵子
舞台監督:川除 学/今村智宏
宣伝美術:水野沙弥香(Gene & Fred)
宣伝写真:上村可織(Un.inc)
WEB制作:Gene & Fred
宣伝:ディップス・プラネット
音楽制作:ランティス
企画:舞台「文豪ストレイドッグス STORM BRINGER」製作委員会
制作:バンダイナムコミュージックライブ/ゴーチ・ブラザーズ