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- 逆井マリ
- 神奈川県横浜市出身。音楽フリーペーパー編集部を経て、フリーのライターとしてインタビュー等の執筆を手掛ける。
──ゾーヤは3話のクライマックスでとんとことんに入りましたけど、なごみよりも馴染むのが早いような(笑)。
黒沢:そうそう(笑)。
ジェーニャ:きっと店長の考えもあったと思うんですよね。店長の中で、最初から「この子絶対に入れたい!」という思いがあったからこそ馴染むのも早かった気もします。だって不思議じゃないですか。なんで戦った相手なのに、とんとことんにいるのか(笑)。
田中:確かに(笑)。
ジェーニャ:しぃぽんは「助っ人外国人登場!?」って言ってたし(笑)。
黒沢:来る者拒まず。ギャルらしい潔さ(笑)。
ジェーニャ:そんなゾーヤを嵐子さんも受け止めてくれて、それで安心してるっていう。私としてはドキドキしながら演じてましたけどね(笑)。でも本当に大好きなキャラクター。すごく久しぶりのアニメで、初めて大きな役をいただいて。ゾーヤを演じられるなら20年掛かっても良かったし、これまで頑張ってきて良かったって思いました。
黒沢:いいお話……。
ジェーニャ:私は『アキバ冥途戦争』の現場を自分のご褒美だと思っているんです。この場所にいられることに、ありがたみを感じています。ゾーヤに出会えて良かったと思いますし、演じることができて嬉しいです。
『アキバ冥途戦争』という作品も、本当に大好き。日本のアニメでしかできない表現だと思う。発想が斜めを向いているというか……。見る側を毎回飽きさせないというのが、日本のアニメの良さだと思ってる。
黒沢:興味深いです! 日本のアニメでしかできない、というのは、海外のアニメの場合は、もっと規制が多いとか?
ジェーニャ:いや、規制というよりか、文化の違いかな。例えば、日本人って普段はシャイじゃない? 遠慮しがちというか。でも作品となると、ぶわっと(自分の)思っている気持ちを全面に出すというか。ロシアの場合は、内包してる気持ちは文学や音楽にぶつけるんだけど、日本はアニメにぶつけてるイメージがある。普段はできないこともあるけど、作品内なら自由。私はそういう発想が好き。
黒沢:なるほど〜!! ロシア内にも国産アニメーションはあるんですよね?
ジェーニャ:ん〜……あるけど、子供向けのアニメが中心で数は多くない。多分それは他の国にも言えることなんじゃないかな? 日本のアニメ、漫画はたくさんの種類があるから、子供からおじいちゃん・おばあちゃんまで、どの層にも対応していて。例えば『アンパンマン』を見ていた子どもが、次に『プリキュア』シリーズを見て……と、それぞれの年代に合わせた作品がある。
もっというと、ファミリー向けから少しアダルトなものまであれば、バトルものもある。日本人はそれが当たり前に感じるかもしれないけど、自分のその時々の“好き”に合わせて「選べる」「追える」コンテンツがあることは海外の人からするとすごく新鮮だし、羨ましい。
実写だけでは描けない表情、独特の角度にものすごく惹かれて。だからこそ、海外の人から日本のアニメ作品は愛されているんじゃないかなって勝手に思っている。それは漫画の伝統から来てるものなんだろうけど。
黒沢&田中:なるほど〜!!!
黒沢:楽しい〜! 私たちだけだと気づかない観点!
田中:当たり前にアニメと一緒に育ってきたから、そうやって考えたことがなかった。日本の文化がそう思われているんだなと思うと嬉しい。
ジェーニャ:でも私も(日本に住み始めてからは)その感覚が薄れてきているけどね(笑)。
ちょっと話が変わってしまったけど、そういった日本のアニメ文化の感覚を『アキバ冥途戦争』は象徴してると思う。「アキバでオタ芸を打ちながら銃を撃つなんてシチュエーションは絶対にありえないけど、アニメだったら描けるでしょ」っていう(笑)。ありえないから面白い。アニメだからできること。それがすごくいい。
特に今の世界、みんな現実逃避を求めてると思う。この作品を見てると「私たちの世界はまだ大丈夫」ってみんな思える気がする……。
黒沢&田中:なるほど……!
──黒沢さん、田中さんは、作品に対してどのような印象がありますか? アフレコを重ねていく中で気づいた魅力というのもあると思うのですが。
田中:オーディションの時の想像を越えてきたというか。アフレコを重ねて「こんなに任侠モノだったんだな」って(笑)。
黒沢:アウトローな感じっていうか……。表現が難しいけど、それで言うと、私はずっと覚えている言葉があります。アフレコがはじまる時に「皆さん忘れないでください。この作品は、お仕事アニメです」と。
ジェーニャ:(真顔で)お仕事してますから。間違ってはいない。
黒沢:(笑)。だから私は、ずっとお仕事アニメだと思って収録しています。
ジェーニャ:ちょっとビックリしたのが、この2人(しぃぽん、ゆめち)が2話でナチュラルに銃を取り出したこと(笑)。1話の段階だと、嵐子さんが来たことで戦いが始まっていったのかなと思った。
田中:「よしゃ、やるかあ」って感じでナチュラルに取り出しましたからね(笑)。結局みんなやばかった。なごみが、しぃぽんとゆめちに対して「このひとたちもヤバい人たちだったんだ……!」って感じになっていて(笑)。
黒沢:オーディションの段階では、そこまでは知らなかったんですよね。オーディションを受けさせていただくにあたり、もらった資料に「メイド」「血で血を洗う抗争」とは書いてありましたが、ここまで振り切った作品だとは思っていなかったんです。
──黒沢さんは監督のご指名だったと伺っています。「彼女は真剣に作品を捉えてくれる方なので、ある意味、これだけふざけた作品に出演するのは迷ったと思います」とおっしゃっていました。
黒沢:話の構成や会話感が面白く、楽しんで携わらせていただいていますが、人がめちゃくちゃ死んでいくことに対しては、「その理由に納得しないと出ちゃいけない気がする」って思いました。
「ここで人が死ぬ必要はあるのか」などと考えながら、台本を拝読しています。制作の方たちがワクワクしながら作っていることも伝わってきますし、キャストの皆さんも楽しんでいるからこそ……。自分の出るシーンに関しては、こっそりとそういったことを考えていますね。
──それだけの覚悟を持って演じられていることが伝わってきます。
黒沢:しかも、そういった暴力的なシーンもありながらも、メイドものでもあるわけじゃないですか。まさに“萌えと暴力について”がアニメでは描かれています。
メイドさんってそれこそ日本独自のカルチャーで、ヒーラー的な役割を担っているわけじゃないですか。暴力は一見正反対に見えるんですけど、作品としては“反対側”にあるものをドッキングする面白さがあると感じます。それは昔の文学作品や音楽にも言えることだと思っているのですが、『アキバ冥途戦争』に関しては、極端に背中合わせにあるものをドッキングさせている。
それが「無条件に私たちが滾ってしまうポイント」なんじゃないかなって思っています。「メイドだけどバチバチに戦うぜ!」って聞くだけでなぜかワクワクしてしまう。なぜか背徳感を感じる。
──確かに……! おふたりも黒沢さんのお話を真剣に聞き入ってましたね。
ジェーニャ:すごい読解力、分析力だと思って。
田中:「確かに!」って思ってしまって(笑)。さきほどのジェーニャさんのお話を伺ったあとだったので、余計に納得するところがありました。日本ならではの魅力も、たくさん詰まっているんだなと。
黒沢:私としては、クラシカルな作品だなとも思うんですよ。(取材時に)自分が谷崎潤一郎の作品の舞台をやってることもあって、昔の文学に触れていて(『黒沢ともよ一人芝居「偽伝春琴抄」』)。耽美主義と呼ばれる方たちの小説を読んでいくと、エロスもあるし、時には暴力的な描写もあるんですけど、文体が美しいんですよね。それと似たような印象を受けました。「日本人が昔から好きなやつ!」って。
ジェーニャ:うんうん。そして、「どんなことでも、描くからには美しく」という、日本人ならではの気合いを感じる。実際に美しいしね。
黒沢:ああ、そうかも。
田中:……こうやってみんなの考えを聞けるのが楽しい。インタビューが公開されたら全部読みたい(笑)。
──最後に、4話以降の見どころを教えていただけますか? 聞くところによると、4話は増井監督が絵コンテを切られているとか……。
ジェーニャ:増井監督が!? 録る前に知りたかった(笑)。
黒沢:見どころとしては……。今まで合いの手ばかり入れていたしぃぽんが覚醒します。
田中:4話は面白いですよ〜! 大好き! その後、詳しくは話せないのですが、とんとことんメンバーの絆が深まる回があるので……そこは楽しみにしておいて欲しいです。
ジェーニャ:今後の見どころでいうと、真面目な話と、面白い話がバランスよく詰め込まれている印象です。どちらも入り混じった回もあるので、制作の方はカロリー消費がめちゃくちゃ高いだろうなと。キャラクターたちもすごくかわいいです。見てくれる方たちが楽しめるようにと、視聴者目線でも作られている作品だと思っています。すごく贅沢。「あなたたちのために、こんなに作りましたよ!」って感じがする。
でもかわいいだけではない、キャラクターたちの魅力も今後描かれていきます。そこもぜひ楽しみにしていてほしいです!
インタビュー・逆井マリ
神奈川県横浜市出身。既婚、一児の母。音楽フリーペーパー編集部を経て、フリーのライターとしてインタビュー等の執筆を手掛ける。パンクからアニソン、2.5次元舞台、ゲーム、グルメ、教育まで、ジャンル問わず、自分の“好き”を必死に追いかけ中。はじめてのめり込んだアニメは『楽しいムーミン一家』。インタビューでリアルな心情や生き方を聞くことが好き。
2022年10月6日(木)~TOKYO MXほかにて放送
TOKYO MX・サンテレビ・KBS京都・BS11
10月6日より 毎週木曜 24:00~ 放送開始
AT-X
10月7日より 毎週金曜 21:30~ 放送開始
リピート放送:毎週火曜9:30~ 毎週木曜15:30~
ABEMA:10月6日より 毎週木曜 24:00~
dアニメストア:10月9日より 毎週日曜 24:00~
ほか 各配信プラットフォームにて 10月12日(水) 24:00以降、 順次配信予定!
バンダイチャンネル
Hulu
U-NEXT
ツイキャス
auスマートパスプレミアム
J:COMオンデマンド メガパック
みるプラス
TELASA
ビデオマーケット
Google Play
ひかりTV
Rakuten TV
HAPPY!動画
クランクイン!ビデオ
原作:ケダモノランド経営戦略室
監督:増井 壮一
シリーズ構成:比企 能博
キャラクターデザイン・総作画監督:仁井 学
美術監督:本田 こうへい
美術設定:伊良波 理沙
色彩設計:中野 尚美
プロップ設定:入江 健司、 鍋田 香代子
撮影監督:石黒 瑠美
3D監督:小川 耕平
特殊効果:村上 正博
編集:高橋 歩
音楽:池 頼広
音楽制作:Cygames
音響監督:飯田 里樹
音響効果:中野 勝博
音響制作:dugout
アニメーション制作:P.A.WORKS
和平なごみ:近藤玲奈
万年嵐子:佐藤利奈
ゆめち:田中美海
しぃぽん:黒沢ともよ
店長:高垣彩陽