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WOWOWオリジナルアニメ『火狩りの王』綺羅役 早見沙織インタビュー【連載2回】

WOWOWオリジナルアニメ『火狩りの王』綺羅役 早見沙織さんインタビュー|作品の持つ“リアルさ”に鳥肌が立つ瞬間があった【連載2回】

いろんな表情を持つキャラクターだからこその難しさと奥深さ

ーー綺羅について「聡明で心優しく、それでいて、かすかに影を感じる女の子」とキャストコメントに書かれていたのが印象的でした。

早見:一面的ではないというのは、とてもリアルですよね。いいところのお嬢様で、気品があって、朗らかで、ワンちゃんと戯れるような可愛らしさがあって、だけどどこか影がある。文章で書くと分かりやすい特徴として感じるけれど、その陰りが生まれた背景を考えるととても複雑さを持ちます。

例えば綺羅は、人によって表情が変わるんですよ。煌四と話す時と母親の火華(CV:名塚佳織)さんと話す時とで表情が大きく異なります。「家族である火華さんと話す時、なぜこんなに硬くなるのだろうか。ぎこちなくなるのだろうか」と考えると、それは生い立ちや環境から人の複雑な内面がつくられているからなのではないかと。それが人間として自然であると同時に、お芝居をする上では難しくもあります(笑)。いろんな表情がある分、演じていて奥深さを感じました。

ーー多面的なキャラクターを演じる上で、早見さんなりに意識していることはありますか?

早見:何か事前に準備をするというよりも、当日現場に行ってみて、その場の空気を感じることを意識しました。『火狩りの王』のアフレコ現場は会話をする人と同じタイミングで収録させていただけたので、それはとても大きな道しるべになっていて。火華さんの声を聞くと無意識に背筋がグッと硬くなるような瞬間が生まれることもありました。

アフレコで流れている空気が『火狩りの王』とかなりリンクしているところがあって。綺羅を演じる上では、一つひとつのシーンのトーンを意識するのではなく、現場の空気を察することに毎回意識を向けていました。

煌四の内側は賢く、たくましく、そして強い

ーー綺羅は煌四と会話をするシーンが多いかと思います。早見さんから見て、煌四の印象はいかがですか?

早見:素直で真っすぐなところがあり、それでいてすごく頭の良い人だと思います。煌四は年齢的には少年であるものの、この物語においては、時に大人たちを動かすような、道を切り開くような言葉を述べるんですよね。

綺羅について「一面的ではない」とお話しましたが、それこそ煌四も多面的な人であると思っています。彼の生きてきた世界はかなり残酷なものであったと思います。生きていくためにどう日々を送っていくか、妹(緋名子、CV:山口愛)という守らなくてはいけない存在をどう守るべきか、そんなことを若くして考えていく中でいろんな知恵を身につけてきたはず。全体的な雰囲気としては柔らかいのですが、内側にはそんな賢さやたくましさ、そして強さを感じます。

ーーそれは煌四を演じる石毛さんのお芝居から感じる印象でもあるのでしょうか?

早見:そう感じています。『火狩りの王』では大きな抑揚をつけるお芝居が少ないのですが、そんな中でも落ち着いた静かな喋り口で朴訥(ぼくとつ)としているんですね。そんな訥々(とつとつ)としたセリフの中に、「今、駆け引きをしているのかな?」「今は素直な気持ちで自分の思いを述べているのだな」と複雑な表情が石毛さんの声から垣間見えます。石毛さんのお芝居に接していると、綺羅を演じる上でもいろいろと引き出していただいているなと思います。

ファンタジーだけど現実に引き寄せてくれる

ーー本格的なファンタジー作品に敷居の高さを感じる視聴者も多いかと思います。そんな方たちに向けて、早見さんが感じる『火狩りの王』の魅力や見どころをぜひ教えてください。

早見:私が『火狩りの王』に触れていて「わあ……」と思ったのが、自分がイメージしていたファンタジー像以上にグサグサ来るところです。原作や台本を読んでいると、時にページを読み進めていくのに勇気が必要な場面もあります。それほど、しっかりと重く半端ではないんですよね。

そして『火狩りの王』は、終末を迎えた後の世界を舞台に物語が描かれていますが、今の時代にもリンクする“リアルさ”があります。様々な出来事によって時代や世界が変わってしまうと思うのですが、そこには「個人が動かせる範囲以外のもっと大きな部分が背景にあるんだ」と思わされます。さらに、「未来を切り開くために個人が考える範囲も、隣にいる人が必ずしも同じとは限らない」とも気づかされるんですよね。同じ志を持って新たな未来を開拓していくこともあれば、志が相反したことにより生まれる未来もある、と。

そんなあるかもしれない未来の内の一つを見せてもらっている気持ちになって、本当に鳥肌が立つ瞬間があります。ファンタジーだけど現実に引き寄せてくれる、肌に近い感覚を持っている、それが私の感じる『火狩りの王』の魅力です。

[インタビュー/阿部裕華 写真/MoA]
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アニメ・音楽・映画・漫画・商業BLを愛するインタビューライター。Webメディアのディレクター・編集を経て、フリーライターとしてエンタメ・ビジネス領域で活動。共著「BL塾 ボーイズラブのこと、もっと知ってみませんか?」発売中。

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阿部裕華
アニメ・音楽・映画・漫画・商業BLを愛するインタビューライター

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WOWOWオリジナルアニメ『火狩りの王』作品情報

放送・配信日:2023年1月14日(土)午後10時30分より放送・配信スタート(第1話無料放送)

 

あらすじ

人類最終戦争後の世界。

大地は炎魔が闊歩する黒い森におおわれ、人々は結界に守られた土地で細々と暮らしていた。

最終戦争前に開発・使用された人体発火病原体によって、この時代の人間は、傍で天然の火が燃焼すると、内側から発火して燃え上がってしまう。

この世界で人が安全に使用できる唯一の<火>は、森に棲む炎魔から採れる。

火を狩ることを生業とする火狩りたちの間で、あるうわさがささやかれていた。

「最終戦争前に打ち上げられ、永らく虚空を彷徨っていた人工の星、<揺るる火>が、帰ってくるー」と。

“千年彗星<揺るる火>を狩った火狩りは、<火狩りの王>と呼ばれるだろう”

紙漉きの村に生まれ、禁じられた森に入って炎魔に襲われたところを、火狩りに助けられた灯子。

首都に生まれ、母を工場毒で失い、幼い妹を抱えた煌四は“燠火の家”に身を寄せることを決意する。

灯子と煌四、二人の生き様が交差するとき、あらたな運命が動きだすー

 

スタッフ

原作:日向理恵子(「火狩りの王」ほるぷ出版 刊)
キャラクター原案:山田章博
監督:西村純二
構成/脚本:押井守
キャラクターデザイン:齋藤卓也
総作画監督:齋藤卓也・黄瀬和哉・海谷敏久
エフェクト作画監督:小澤和則
イメージイラスト/プロップデザイン:岩畑剛一
美術設定:中島美佳
メカニックデザイン:神菊薫
クリーチャーデザイン:松原朋広
美術監督:小倉宏昌
色彩設計:渡辺陽子
筆文字:勝又まゆみ
劇中画:水野歌
CG監督:西牟田祐禎
CG制作:レイルズ
タイトルデザイン/2Dワークス:山崎真紀子
特殊効果:櫻井英朗
撮影監督:荒井栄児
編集:植松淳一
監督助手:菅野幸子
音楽:川井憲次
音楽制作:フライングドッグ
音響監督:若林和弘
音響制作:プロダクション I.G
アニメーション制作:シグナル・エムディ

 

キャスト

灯子:久野美咲
煌四:石毛翔弥
明楽:坂本真綾
炉六:細谷佳正
綺羅:早見沙織
緋名子:山口愛
クン:國立幸
照三:小林千晃
火穂:小市眞琴
油百七:三宅健太
火華:名塚佳織
焚三:宮野真守
灰十:三木眞一郎
紅緒:原優子
ほたる:宮本侑芽
炸六:真木駿一
炎千:上田燿司
火十:綿貫竜之介
ヤナギ:大原さやか
キリ:嶋村侑
ひばり:石田彰
ナレーション:榊原良子

 
公式サイト:http://hikarinoou-anime.com/
公式Twitter(@HikarinoOuAnime):@HikarinoOuAnime

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