『夜のクラゲは泳げない』連載12回(最終回):伊藤美来×高橋李依×富田美憂×島袋美由利|「つまりはまだまだ『ヨルクラ』は終わらないということです!」
オリジナルTVアニメ『夜のクラゲは泳げない』。監督:竹下良平 × 脚本:屋久ユウキ × アニメーション制作:動画工房が贈る青春群像劇もいよいよ最終回!
大きなプロジェクトに参加し、その試練を乗り越えたまひる。そして雪音の心を動かし実現したJELEEとサンフラワードールズの共演。そこで見せた、渋谷を大きな水族館にしたライブパフォーマンス。すべてが感動的だった最終話。
連載第12回(最終回)は、前回に引き続き、光月まひる役の伊藤美来さん、山ノ内花音役の高橋李依さん、渡瀬キウイ役の富田美憂さん、高梨・キム・アヌーク・めい役の島袋美由利さんの4人が登場。作品に対する思いを語ってもらいました。
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JELEEの歌唱シーンでの、隠れたこだわりとは?
――最終話の放送が終わりましたが、いかがでしたか?
伊藤美来さん(以下、伊藤):(寂しそうに)終わっちゃった…。
高橋李依さん(以下、高橋):終わりたくなかった……。
富田美憂さん(以下、富田):それこそ、アフレコの第9話あたりで、これって伏線を全部回収できるのかな? 第12話で終われるのかな?って話した記憶があるんです。でも、それを全部回収してくださってありがとうございます!という気持ちです(笑)。
――伏線は多い作品でしたよね。渋谷に大きい水族館を作りたいという願いとか、同時視聴5万人で母の夢を叶えたりとか、きれいに回収されていて。
伊藤:私の夢を叶えてくれてましたね。
――あとはライブで歌った「深海遊泳」の歌詞ですよね。〈この夜に 暗い夜に 消えない光を 見つけてきたから〉とか〈もう、雪の音が聴こえなくても〉って、ヨルと雪音のことじゃないですか。すごく物語に添った巣立ちの曲になっていて。
高橋:しっかり母に歌ってますよね。
伊藤:ちょうどその歌詞に合わせて、まひると雪音が映って、その表情も相まって、すごく感動しました。
高橋:AメロやBメロは〈散らかった部屋とピカピカのマイク〉とか、今自分を構成している、すぐそこにあるほんの小さな幸せを羅列していくんです。そこから、もう大丈夫って歌うサビに鳥肌が立っちゃって! ものすごい曲でした!
――曲を作っている40mPさんも含め、すべてのセクションで、この作品をより良いものにしようとしているのが伝わってくるシーンでした。「ちゃんと前見ろ! バカ!」のメロ(CV.岡咲美保)の叫びで、彼女のことも好きになりましたし。
高橋:そうですよね! メロ〜!!
伊藤:メロもちょっとずるくない? 最後の最後にさ(笑)。
高橋:でもまひるはさ、第11話のタクシーでメロと一緒だったよね?
伊藤:そこで思いは何となく聞いてはいたけど、最後、普通にカフェに一緒に行くくらい仲良くなってて、(仲直り)早くない? って、まひるもめいちゃんもビックリですよ(ヤキモチ)。
高橋:あのエピローグは、もっとちょうだい!って余白がたくさんあったので、まだ終わらないでほしいなぁ(笑)。
――あとは壁画を見ていた人も誰?っていう。花音のお父さんだとは思うんですけど。まだこの先を見てみたくなりました。
富田:劇場版とかやってほしいなぁ。
高橋:父親についての描写はだいぶ少なかったですよね。改めて照らし合わせていくと、彼もまたエピソードを持ってそうだなと。
富田:それと作品全体を通して言えることですけど、どの職業でも、どの立場にいても感じるようなことが描かれていたなと思います。
自分に置き換えたときに、例えば私なら「声優になりたい!」と声優を目指したときって、いろんなものがキラキラして見えたし、目指しているときは純粋なんですよね。初めてオーディションに受かって、キャラクターをいただけたときも、「あー、嬉しい!」っていうキラキラした気持ちだけだったんです。
でも、だんだん大人になっていくと、自分がかつて持っていたキラキラした気持ち、前向きな気持よりも、他人と比べてしまったりして、キラキラした気持ちに埃が被ってしまうようになるなとも思っていて。もちろん、そういう貪欲さも必要ではあるんですけど、いちばん大事なのって、この作品でも描いているように、楽しいとか、好きという気持ちなんですよね。その気持ちはいつまでも持っていないとダメだなって、気付かされました。
――好きなものを、ちゃんと好きと言えるのは本当に大事だし、初心って忘れちゃいけないんですよね。
富田:こうしなきゃ、ああしなきゃとかの焦りとか見栄って、最初は考えてなかったはずなのにって思いますよね。
――この作品では、自分は何のために歌っているのか、なぜ絵を描いているのか、その最初の気持ちみたいなところをこだわって描いているような感じがしました。
富田:だからこそ、全方位の人に刺さる作品なんだろうなと思いました。
――島袋さんは第12話、いかがでしたか?
島袋美由利さん(以下、島袋):すごく部分的なんですけど、花音ちゃんが歌う前、アフレコではマイクを変えていましたよね? 確か、ハンドマイクにしていたんです。
富田:してた!
島袋:だからこそ臨場感がすごくて。声が出したくても出せない、不意に出てくる「あ…」っていう音がすごすぎて! 本当にピンポイントなので、そこは聞き直してほしいです。
高橋:そういえば。今思い出してきた!
島袋:そこまで作り込む価値のある作品だったし、ここまで作り込んでこそ届くものが絶対にあったと思うんです。それも、この作品が好きだからこそ、最後の最後まで制作陣の方々もこだわったと思うんですよね。
作品世界と、それを作っている外側の作り手の世界がシンクロしているなと思いながら拝見していました。あと、ずっとすれ違っていたまひると花音がようやく会えたときに、どんなリアクションになるのかな?と思っていたので、それがあのエスカレーターの「ああ~~~」になっていて(笑)。あれを見て、2人は最初からそんな感じだった気がする!と思って、すごく愛おしかったです。
伊藤:どんくさいです(笑)。
島袋:逸る気持ちみたいなのはすごくわかるので、まだまだ高校生なんだなって思いました(笑)。
――思わず、あのエスカレーターに写真を撮りに行きましたから(笑)。
高橋:MIYASHITA PARKは、もう我々にとっては聖地ですから! 『ヨルクラ』好きな人が、これからも行ってくれるんだろうな。
島袋:不思議なところで写真を撮っていたら、『ヨルクラ』ファンですね。
――トンネル横の壁画とか、実際はないんですけど、あるつもりで撮りますから。