スーツアクターを続けてきたからこそ気付けた「お芝居の楽しさ」――五味涼子さん×坂梨由芽さんインタビュー|“女性キャラクターらしさ”は特に意識せずとも、自然に可愛さやカッコよさは生まれる【スーツアクターという仕事:連載 第2回】
“女性キャラクターらしさ”は特に意識せずとも、自然に可愛さやカッコよさは生まれる
──近年では女性のスーツアクトレスの活躍も注目されています。現場での肌感覚的にはどうでしょうか?
坂梨:多くなっていますよね。女性。
五味:うん。由芽が入ってきたときは蜂須賀さん(蜂須賀祐一さん)以外、全部女性だったもんね。
坂梨:そうですね。
五味:私がレギュラーの役をやる前ですが、女性キャラクターのスーツアクターをやっていても、変身前の女優の吹替スタントは男性がやることは時々あったんです。それは悔しいなと思って、全部自分でやれるようになりたいなと思っていました。
ヒーローショーをやっているときに、握手会で大学生くらいの男の子に「こういうのって男が入っているんだぜ! 身体見ればわかるよ!」と言われたりしましたね……それはちょっと笑っちゃいました(笑)。
坂梨:それは信じられないくらい動いてる量が多いからだと思いますよ!! 女性がそこまでできるなんてって思われたんですよ!
──ヒーローショーの話が出ましたが、ヒーローショー中に客席からの「がんばれ〜!」の声援はどのくらい聞こえているんですか?
坂梨:声援はほぼほぼ聞こえていますよ!
五味:握手会のときも面が曇ったりはありますが、結構見えています! 客席にいくときは、知り合いがわかったりするくらい見えています。ショーも回数を重ねると慣れてくるので、余裕が出てくると周りは見えるようになりますね。
──想像以上にはっきり聞こえているんですね! であればなおさら、客席からは「がんばれ!」はたくさん言ったほうがいいですね!
坂梨:(私たちは)あの声援のためにやっていますからね!
──TVシリーズなど映像の撮影とヒーローショーでは、アクションはどのような違いがありますか?
坂梨:違いますね、全然。
五味:アクション的にも、同じ技をやるにしても見せ方が違っていて。簡単に言えば、大きく動くか緻密に動くかかもしれないんですけど。カメラだと特に敵にパンチや技が当たっていないとダメじゃないですか。
──シアターGロッソのようなヒーローショー専用施設だと、また見せ方が特殊なのかなと思ったりしますが、いかがでしょう?
五味:私が一番思うのは、舞台だとずっと同じことをやるので、失敗出来ないんですよね。自分が常に出来ることのチョイスになるんですよ。自信をもって怪我なくやれることをやっていくのが基本になりますね。
対して撮影の場合は、ちょっとチャレンジが出来るんです。本当に大事なときやどうしてもここを見せたいというときは、挑戦が出来ることですね。撮影は時間が限られるので、挑戦して何回も失敗したら、自分がやれることに切り替えています。
坂梨:全ておっしゃってくださったので(笑)。私はGロッソでトータル3年間ぐらいやらせてもらったのですが、補助で撮影に携わっていたとはいえ、実際にカメラで撮られたときの見え方の違いが、自分の中で読めなかったりして。ヒーローショーでは「全体からこう見える」とかがわかりますね。
五味:ショーだと見え方はわかりやすいよね!
坂梨:3年間で「わかってきたかな、行けたかな」と思っていたら、撮影に入ってカメラに対してだと、角度やギリギリを狙わないと技が当たっているように見えないとか、絶妙な細かい差は感じています。撮影だとやっと10のうちの1がわかってきた感覚です。
五味:私がTVシリーズのレギュラーに入ったときに、カメラのレンズの種類も色々あってわからなくて。アクション監督の福沢さん(福沢博文さん)に聞いたら「次のカットでカメラマンが構えたら、自分のどこを撮ろうとしてるのか、どういう広さなのか、どういう画を撮ろうとしているか、そのうちわかるようになるから」って言われて「えーっ!? バストアップか全身かくらいしかわからないや」って。
最初「わかるわけないじゃん」って思っていたんですが、4年目ぐらいからなんとなくわかるようになってきて。カメラマンさんのタイプによって癖もわかってきて、なんとなく画が想像出来るようになってきましたね。
坂梨:私はちょっとずつですね。まだまだわからないことだらけで。
五味:私も最初はぜんぜんわからなかったよ(笑)。
坂梨:オンエアを見て、「もうちょっと動けばよかった!」とかあったりしますね。TVで放送を見て反省して。「あ、思い通りだ! 良し!」みたいなのもたまにはありますね。
──男性キャラクターとは違う、女性キャラクターの可愛さや格好よさがあると思うのですが、演じる上で意識していることはありますか?
五味:お芝居する上でそれぞれ違う役なので、同じ動きをして同じ台詞を喋っても、気持ちが違えば違う、という当たり前のことだけですね。
ちょっと狙うときはありますけどね!(笑) ここはポイントになるな、みたいなときは仕草は考えます。でもあんまりあざとくしたくはないですね。唯一あざとくしていいなと思ったのは、人間じゃなくてアンドロイドを演じたときです。(人間の)お芝居では自然にやりたいですね。
坂梨:去年は女王様の役で、世界観も独特だったので、優雅な手つきとかは意識しました。今演じている役は、普通の女の子だと思っているので、何か考え方というか、性格も(自分に)近い気がしていて、深く考え込まずに台本を読んで思った通りにやっていますね。それが自然と誰かにとって可愛いやカッコいいになっているのかなと思います。
戦隊シリーズのヒロインのセオリーとして、女性がガニ股開きとかしないようにという意識のベースはあるんですが、それ以外は役としてのお芝居ですね。
五味:そのセオリーが意識にあるので、狙わない限りは不細工にならないかなと思います。それが女性がスーツアクターをやる強いところですね。
──女性ならではの強みもあるんですよね!
坂梨:女性がそのまんまでいられるっていうのは強みですよね!
──スーパー戦隊だとアクションだけでなくOPやEDでダンスもありますが、どのくらい練習されるんでしょうか?
坂梨:五味さんのときはどうでした?
五味:全然練習しないよ!……嘘です。ぜんぜん得意じゃないですね(笑)。
坂梨:私は小さい頃、ダンスをやっていたので一応得意です!
五味:そんなに難しいダンスではなく、体操みたいなダンスが多いので真似しやすいですね。
坂梨:レギュラーみんなが呼ばれて集まって、ダンスレッスンを2、3時間やって覚える感じですね。
五味:毎年集まってのダンスレッスンで覚えていますね。