劇場版『RE:cycle of the PENGUINDRUM』荻野目苹果役・三宅麻理恵さんインタビュー｜初心の自分に振り返るときに『輪るピングドラム』を再び見る【連載第3回】

「お姉ちゃん」が大好きになる劇場版

ーー他のキャストのみなさんとお話しされたことはありますか？

三宅：劇場版の制作決定が発表されたタイミングで、時籠ゆり役の能登麻美子さんと久々にお会いする機会があって。「10年前の能登さんは、どんなことを思いながら演じてらっしゃったんですか？」と初めてお聞きすることができました。

当時から能登さんは私にとって大先輩。何もかもわからなかった私とは違って、台本の先の先まで、あらゆるものが見えているように見えていたんです。

でも能登さんは「幾原監督の作品は特徴的だから、どうなるかわからなくて手探りのところや戸惑うところもあった」とおっしゃっていて。監督からは「戸惑いも含めて演じてほしい」というようなお話もあったと聞いて、大先輩方に親近感が湧きました（笑）。

ーー劇場版の前編では、能登さん演じるゆりはミステリアスなキャラクター。三宅さん演じる苹果が「泥棒猫」と呼ぶようなシーンもありますね。

三宅：苹果とゆりの関係は複雑で、前編にあたる部分では目の敵にしていて、話が進むにつれて関係の変化があります。そういった「苹果として」の目線に加えて、「三宅麻理恵として」歳を重ねるにつれ、ゆりさんのことを見るたびに好きになっていくんですよ……（照）。

ーー今回の劇場版では、新規シーンや新キャラクターの登場があります。ファンの方に楽しみにしてほしいポイントをぜひお伺いしたいです。

三宅：前後編を通して楽しみにしてほしいポイントは、桃果お姉ちゃんですね！　桃果のことをみんな大好きになるんじゃないかな。

TVシリーズの桃果は、いろいろな視点から語られてはいるけれど、ちょっと神様に近い感じがあるというか……すこし前編のネタバレになりますが、苹果にとって桃果は会えたことはないお姉ちゃんで、日記帳を介してしか知らないんですよね。だから桃果のことを神格化していた部分もあったと思うし、私自身そういう印象を持っていました。

でも、桃果は人として生きていたころがあって、そんな桃果のことを大好きだった人たちもいる。今回の劇場版で、「桃果ってこういう人だったのか」と、人柄が見えてきて、お姉ちゃんのことを好きになるし、好きだった人たちの気持ちもわかるようになると思います。

ーーTVシリーズを見た人にとって、新たな発見がありますね。

三宅：そうですね。それから本作について監督が「音楽の使い方をこだわっている」とおっしゃっていて、たしかにTVシリーズで見ていたシーンが、音楽によってガラッと印象が変わっているんです。TVシリーズと同じシーンで、同じセリフだけど、音楽で感じ方がこんなに変わるのって、なかなか出会える経験じゃないと思います。……と同時に、TVシリーズを見ずに劇場を見てくださるのもありがたいです！

ーー劇場版で初めて『輪るピングドラム』に出会う方に向けてメッセージをお願いします。

三宅：今回劇場版のアフレコに向けてTVシリーズを見返して、10年前の作品ではあるけれど、「10年後を行っていた」作品だったんだなと、10年経っても通用する作品なんだなと改めて感じました。

10年前から作品をご存知の方も、本作で初めて『輪るピングドラム』に触れる方も同じ視点で見始められる作品になっているので、ぜひご覧になって、まだ『ピングドラム』という作品を見ていない方に感想を伝え合ってもらいたいです。

台詞も音楽も映像もどれに注目してもらっても魅力的で、全てが気持ちよく合わさっています。自分の世界を広げる作品としてぜひ見ていただけると嬉しいです！

[取材・文/青柳美帆子]

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『劇場版 RE:cycle of the PENGUINDRUM』作品情報

公開日：［前編］君の列車は生存戦略　2022年4月29日（金）／［後編］2022年7月22日（金）予定

STORY

これは、ある兄弟妹と、突然やってきたペンギンと、この世界の過去と未来についての物語であるーーー。

病気の妹・陽毬の命を救うため、謎のペンギン帽の命令により「ピングドラム」を探す高倉家の双子の兄弟・冠葉と晶馬。自身の運命を信じて日記に書かれた出来事を実現しつづける荻野目苹果。新たな運命を導くため萃果の日記を手に入れようとする夏芽真砂子。大切な運命の人を取り戻すために目的を果たそうとする多蕗桂樹と時籠ゆり。

彼らはそれぞれの運命と大切な人の為に「ピングドラム」を追い続けたのだった。

あれから10年ーーかつて運命を変える列車に乗り込んだ冠葉と晶馬が、運命の至る場所からひととき戻ってきた・・・。

『輪るピングドラム』とは？

2011年7月にテレビ放送されたオリジナルアニメ『輪るピングドラム』。星野リリィ原案による個性的なキャラクターたちや、「ピングドラム」とは何なのか？という謎が謎を呼ぶ展開、クリスタルワールドなどの独特のビジュアルを使用した世界観で、放送当時大きな話題を集めた。

やくしまるえつこメトロオーケストラとCoaltar of the deepersによる主題歌をはじめ、劇中キャラクターのTRIPLE HによるARBのカバー曲など、音楽面でも高い評価を得ており、今でも多くのアニメファンの間で語り継がれている。

STAFF

監督：幾原邦彦
副監督：武内宣之
原作：イクニチャウダー
キャラクター原案：星野リリィ
脚本：幾原邦彦・伊神貴世
キャラクターデザイン：西位輝実・川妻智美
色彩設計：辻田邦夫
美術：中村千恵子（スタジオ心）
アイコンデザイン：越阪部ワタル
CGディレクター: 越田祐史(スタジオポメロ)
VFX：田島太雄
撮影監督：荻原猛夫（グラフィニカ）
編集：黒澤雅之
音響監督：幾原邦彦・山田陽
音響効果：三井友和
音楽：橋本由香利
音楽制作：キングレコード
アニメーション制作：ラパントラック
製作：ピングローブユニオン
配給：ムービック