劇場版『RE:cycle of the PENGUINDRUM』「トリプルH」高倉陽毬役・荒川美穂さん、歌田光莉役役・三宅麻理恵さん、伊空ヒバリ役・渡部優衣さんインタビュー|「また3人で歌える」がうれしかった劇場版
2011年に放送されたTVアニメ『輪るピングドラム』が劇場版『RE:cycle of the PENGUINDRUM』として待望の映画化! 前編が4月29日(金)より全国の映画館で上映中、後編も7月22日に公開を控えています。
10年という時を経て劇場版が制作されることになった『輪るピングドラム』ですが、幾原邦彦監督による独特な世界観も相まって、多くのファンを生み出し、今なお語り継がれる名作となっています。
なぜ、人々はこれほどまでも『輪るピングドラム』に魅了されてしまうのでしょうか。アニメイトタイムズでは、『輪るピングドラム』に関わるスタッフや声優陣にインタビューを行った長期連載を通して、この答えの一端に迫ってみようと思います。
最終回となる今回は、「トリプルH」としてARBのカバー曲を歌い上げる荒川美穂さん(ヒマリ/高倉陽毬役)、三宅麻理恵さん(ヒカリ/歌田光莉役)、渡部優衣さん(ヒバリ/伊空ヒバリ役)が登場。TVシリーズの思い出から劇場版での新曲までクロストークしてもらいました。
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TVシリーズは「トリプルH」のことを知らない状態から始まった
ーーみなさんがトリプルHとして歌うARBのカバー曲は、『ピングドラム』の中で非常に印象的に使われています。まずはTVシリーズの際の思い出を伺えますでしょうか。荒川さんは高倉陽毬役、三宅さんは荻野目苹果役と兼役でもありました。
荒川美穂さん(以下、荒川):最初は「トリプルH」とはなんのことだかわかっていませんでした(笑)。ダブルHが、シリーズの序盤から出てくる社内広告に登場する2人組のアイドル。陽毬はかつてその2人と友達で、3人でアイドルになることを約束していた。けれどその約束は果たせなくて……ということを、曲のレコーディングと並行しながら知っていきましたね。陽毬の夢がエンディングや挿入歌で叶っているというのがすごくうれしかったです。
三宅麻里恵さん(以下、三宅):本当に初めの頃は性格もわからず、ただ「ダブルHの青い髪の子」だと思いながら始めていました。そもそもヒカリとして歌うことも、苹果の1話アフレコの休憩時間に「三宅さん、歌もいっぱい歌うよ!」と幾原監督に言われて知ったんです(笑)。
一同:ええ!?(笑)
三宅:レコーディングのときのディレクションは「元気に明るく歌ってほしい」ということだけでした。今思うと当時の私は、苹果のことだけで「これもやらなきゃ、あれもやらなきゃ」と頭がパンパンの状態。もしヒカリについていろいろな情報をもらっていたとしても、自分の中で噛み砕いて演じて歌えるはずがなかっただろうなと。そういうのも見抜いた上で監督は1つだけアドバイスしてくれたんだろうなと思います。
渡部優衣さん(以下、渡部):私も最初のレコーディングはヒバリというキャラクターを何も知らない状態でした。監督からは「渡部さんらしく楽しく歌ってもらえれば大丈夫です!」というくらいでしたね。
ーーみなさん、ARBを以前からご存知でしたか? 1980年代に活躍しているアーティストなので、世代ではないですよね。
一同:(首を縦に振る)
荒川:ボーカルの石橋凌さんのことは、歌手ではなく俳優さんとして認識していましたね。当時のことを思い出してみると……幾原監督って、謎に包まれているんですよ。収録時、三宅さんがよく監督に質問をしていたんですけど、基本的にはぐらかされるのを見ているから、私はあまり聞かなくなって(笑)。トリプルHについては、レコーディングの感想を監督に聞いたこともなかったような気がします。
三宅:TVシリーズのタイミングでアルバム(輪るピングドラム キャラクターソングアルバム「HHH」)を出させてもらったじゃないですか。発売されたときに、幾原監督とプロデューサーさんが「いい感じに3人の歌声がハマったよね」とポロっと言ってくれたのを聞きました(笑)。
あとは……音響監督の山田(陽)さんに、レコーディングに入る前に「渡部さんの歌、すごいうまいから頑張りなよ」と言われたのをすごく覚えてる……!
渡部:えーーー!(笑)
三宅:荒川さんとは(苹果と陽毬の)アフレコでずっと一緒だったけど、優衣ちゃんとはトリプルHのレコーディングが初めてで。山田さんのその話を聞いて震え上がってました(笑)。
渡部:そんなふうに言ってもらっていたの、10年経って初めて知りました! うれしい……。レコーディングの時は緊張しまくりで。当時はレコーディングする機会も、キャラクターソングを歌う経験もほとんどない中、でも楽しく歌いましたね。
ーー歌について伺ってきましたが、渡部さんはヒバリ役のアフレコではいかがでしたか?
渡部:私は当時新人で、レギュラーの役をもらって現場にいくことはほとんどなかったころでした。ダブルHが登場しないときもアフレコ現場を見学していたのですが、荒川さんも三宅さんも私と同じく新人だとお聞きしていたけどお芝居がすごくて! みなさん本当にすごいなと思っていました。
ダブルHのヒバリは途中途中の登場になるので、「今の陽毬ちゃんのことをダブルHはどう思っているんだろう、陽毬ちゃんは寂しそうにダブルHを応援しているけれど……」と心配していました。終盤彼女たちのつながりが描かれたので安心しましたね。
ーー視聴者としての感想もお伺いしたいです。
渡部:みんな愛が歪んでますよね(笑)。でもそれも作品の魅力だなって。それぞれの愛情深さが起こした出来事についての物語なんだなと私は思っています。でも本当にいろんな視点からいろんな考え方や受け取り方ができて、いろんな楽しみ方や感情を芽生えさせてくれる作品だと感じます。