この記事をかいた人
- 阿部裕華
- アニメ・音楽・映画・漫画・商業BLを愛するインタビューライター
ーースパイダーマンの吹き替えをする上で意識していることはありますか?
榎木:起こっていることはシリアスですけど、物事を重く捉えないように感情を乗せ過ぎない意識をしています。ピーターは感情に流されて行動をしているわけではなく、あくまでも「ヒーローとして人々を救うこと」という目的を果たすために行動をしていると思っていて。感情を意識せず、できる限り飄々としているように努めていますね。また、感情を意識しない代わりに表情は見ています。
ーー表情、ですか?
榎木:声を比べて見る人はほとんどいないので、トムさんの芝居の声を意識して演じることはないんですよ。ただ、トムさんの表情と僕の声のトーンや大きさが合っていないと違和感を持たれてしまうので、そこは合うように意識しています。例えば、口を大きく開いている時には声も大きく出すとかですね。
ーー『シビル・ウォー』から『ノー・ウェイ・ホーム』でピーターは成長しているわけですが、キャラクターの成長に伴って吹き替えも変化させているのでしょうか。
榎木:僕は基本的にスパイダーマンを演じているトムさんの演技プランに沿った形で声を入れないといけないので、意識して変化させようとは考えていないです。とはいえ、『シビル・ウォー』の時のピーターはスパイダーマンになりたてで、終始ちょっと自信なさげでしたけど、話が進むにつれてヒーローとしての自覚を持つようになる。だんだんと自信がつき、普段の声は軽やかになったり、凄むシーンでは低くなったりと幅が広がってきたので、そういった変化に合わせていることはありますね。
ーー5年以上スパイダーマンを演じられてきて、、榎木さんご自身は様々な作品の主演や話題作の出演など活躍されてきました。ご自身の中で成長を感じたことがありましたらお聞かせください。
榎木:成長は感じていません。というのも僕自身、芝居の上手下手に基準なんてなくて好みだと思っているから、声優としての成長の定義がよく分かっていないというか……。いただいた仕事は自分なりに精一杯頑張りますけどね。だからあまり成長は感じていないです。
ただただ年々腰が痛くなって、歳を取ったなと思ってはいます。なので、この5年間で老化は進みましたね(笑)。
ーー声優としての目標みたいなものはありますか?
榎木:僕の思う面白い作品に出て、面白いと感じるキャストに囲まれて、役を演じてみたいですね。面白い作品は演じていてやりがいを感じるので。
ーー具体的にどんな作品を面白いと感じるのでしょう。
榎木:僕、割と日常系の作品が好きなんですよ。もちろん『スパイダーマン』のようにアクションシーンを演じる楽しさもありますけど。洋画だと『グッド・ウィル・ハンティング』みたいな作品が好きだから、静かなやり取りのお芝居はやってみたいですね。
あと、自分の予想を裏切るような芝居ができた瞬間にお芝居の楽しさを感じていて。予想外の芝居ができた時、自分こんな芝居ができたんだ!って思うんです。だから、そういう瞬間をつくっていきたいと思います。そして、生活できる程度のお金を稼ぎ続けることが目標です(笑)。
ーーありがとうございます! 最後に、『ノー・ウェイ・ホーム』はMCU版「スパイダーマン」3部作の最後のお話となりますが、今後の展開について榎木さんが期待することをお聞かせください。
榎木:シリーズ最終章ではありますが、MCU版「スパイダーマン」が続く限りは演じ続けたいと思っています。
そしてもし続きのお話が描かれるのなら、ピーターとMJとの恋愛が見たいです。一周回ってラブコメも面白いかもしれませんね。
[取材・文/阿部裕華 写真/MoA]
アニメ・音楽・映画・漫画・商業BLを愛するインタビューライター。Webメディアのディレクター・編集を経て、フリーライターとしてエンタメ・ビジネス領域で活動。共著「BL塾 ボーイズラブのこと、もっと知ってみませんか?」発売中。
原題:Spider-Man: No Way Home
日本公開表記:2022年1月7日(金)全国の映画館にて公開
監督:ジョン・ワッツ
出演:トム・ホランド、ゼンデイヤ、ベネディクト・カンバーバッチ、ジョン・ファヴロー、ジェイコブ・バタロン、マリサ・トメイ、アルフレッド・モリーナ